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ハイネ詩集
生田春月 訳
キテイ
昨日わたしが接(き)吻(す)した幸福は
今日ははや破れて消えてしまつた
そしてわたしはまことの夢を
長いこと得てゐたためしがない
ほんの好竒心からいろんな女を
わたしはこの胸に引き寄せた
けれども彼等はわたしの心を見ると
直ぐまたそこから飛んで行つた
その行つてしまふまへに一人は笑つた
一人は色を失つた
たゞキテイだけは悲しさうに泣いた
わたしを棄てて行くまへに
底本‥﹁ハイネ詩集﹂︵新潮文庫、第三十五編︶
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年)
﹁ハイネ詩集﹂(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力‥osawa
編集‥明かりの本
2017年7月7日作成
物語倶楽部作成ファイル‥
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