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ハイネ詩集
生田春月 訳
カタリナ
その一
美しい星がわたしの夜の上にのぼつて来る
その星は甘い慰めの微笑を見せて
新生活をわたしに約束する——
おゝ、本当だよ!
ちやうど月にむかつて海の湧き立つやうに
わたしの荒い心は嬉しく飛びあがる
おまへのやさしい光へと——
おゝ、本当だよ!
その二
若い薔薇の花が咲いて
夜(うぐ)鶯(ひす)がうたつた時
おまへはわたしを引きよせて
やさしい手つきで接(き)吻(す)をした
秋が来て薔薇の花を散らし
夜(うぐ)鶯(ひす)をも追ひやつてしまふと
おまへも飛んで行つてしまつた
そしてわたしはひとり取残された
夜はもう長く冷たくなつた——
ねえ、おまへはいつまでわたしをぢらすのだ?
わたしはこれから昔の幸福をいつまでも
夢に描いて満足してゐなけりやならないのか?
底本‥﹁ハイネ詩集﹂︵新潮文庫、第三十五編︶
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年)
﹁ハイネ詩集﹂(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力‥osawa
編集‥明かりの本
2017年7月7日作成
物語倶楽部作成ファイル‥
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