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かごめ・かごめ
遊戯の童(わら)言(わこ)葉(とば)とは、本来は歌と舞(まい)とのように、表裏不可分のものであったらしい。新しい小学校の遊びにも、なるべくは唱歌を添えて与えようとしているが、文句がやや混(まじ)入(い)っているためだろうか、言葉に力を入れすぎて所(しょ)作(さ)の方が軽く取扱われ、もっとも熱中する遊戯にはかえって黙(もく)演(えん)が多い。自分はこの二つのもののしっくりと結び合っているか否かによって、子ども遊びの新旧が窺(うかが)われるように思うが、どんなものであろうか。
二つの例を拾ってみるならば、このごろはもうあまり耳にしない遊(ゆう)戯(ぎう)唄(た)、
めぐれど端(はし)無し たまきのごとくに……
という変った節(ふし)の文句は、調べたら作者のきっとわかるほど新しいものだが、これをうたうべき遊戯は前からあった。東京などで古くから、蓮(れん)華(げ)の花が開いたというのが同じもので、つぼんだ、開いたという別の動作があるが、歌の半分はやはり小さな手を繋(つな)いで、くるくる廻っている間に歌うもので、しかもこれにはなお今一つ前の形があるのである。どうしてあのようにいつまでも、面白がって続けているかと思うほど、意味の解しにくい文言の羅(られ)列(つ)だが、﹁かごめ・かごめ﹂というのがやはりまた同じ遊びであった。
かごめ かごめ 籠(かご)の中の鳥は いつ〳〵出やる
夜あけのばんに つるつるつーべった
或いは、
鶴(つる)と亀(かめ)とつーべった
ともいっている。そういうと一しょに全員が土の上にしゃがんでしまい、そのあとで、
うしろの正面だァれ
というのもあり、また全くそれをいわないのもあるが、動いている人の輪がはたと静止したときに、真(まう)後(しろ)にいるものを誰かときくのだから、これは明らかに﹁あてもの遊び﹂の一つであった。子どもはもう知らずに歌っていることであろうが、気をつけてみると、この﹁かごめ﹂は身を屈(かが)めよ、すなわちしゃがめしゃがめということであった。誰が改作したか、それを鳥の鴎(かもめ)のように解して籠の中の鳥といい、籠だからいつ出るかと問いの形をとり、夜明けの晩などというありうべからざるはぐらかしの語を使って、一ぺんに坐(すわ)ってしまうのである。鹿・鹿・角・何本に比べるとたしかにこの方が試験はむつかしい。そうして数多くの子どもが加わることができて、楽しみは大きかったかと思われる。それが少しずつ形をかえて、ひろく全国の﹁昔の子ども﹂に、今もなお記憶せられているのである。
︹つづく︺
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