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今ここにかへりみすればわがなさけ闇(やみ)をおそれぬめしひに似たり
うつくしき命を惜しと神のいひぬ願ひのそれは果してし今
秋の柳
夜(よ)更(ふ)けた辻(つじ)の薄墨の
痩(や)せた柳よ、糸やなぎ。
七(なぬ)日(か)の月が細(ほそ)細(ほそ)と
高い屋根から覗(のぞ)けども、
なんぼ柳は寂(さび)しかろ。
物思ふ身も独りぼち。
冬のたそがれ
落(おち)葉(ば)した木はＹ︽ワイ︾の字を
墨くろぐろと空に書き、
思ひ切つたる明(みや)星(うじやう)は
黄(き)金(ん)の句点を一つ打つ。
薄く削つた白(プラ)金(チナ)の
神経質の粉雪よ、
瘧(おこり)を慄(ふる)ふ電線に
ちくちく触(さは)る粉雪よ。