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紫(むらさき)の理(りさ)想(う)の雲はちぎれ〳〵仰ぐわが空それはた消えぬ
乳ぶさおさへ神(しん)秘(ぴ)のとばりそとけりぬここなる花の紅(くれなゐ)ぞ濃き
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人は黒(くろ)黒(ぐろ)ぬり消せど
すかして見える底の金(きん)。
時の言葉は隔(へだ)つれど
冴(さ)ゆるは歌の金(きん)の韻。
ままよ、暫(しばら)く隅(すみ)に居ん。
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いつか大きくなるままに
子らは寝に来(こ)ず、母の側(そば)。
母はまだまだ云(い)ひたきに、
金(きん)のお日様、唖(おし)の驢(ろ)馬(ば)、
おとぎ噺(ばなし)が云(い)ひたきに。
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ふくろふがなく、宵になく、
山の法師がつれてなく。
わたしは泣かない気でゐれど、
からりと晴れた今(け)朝(さ)の窓
あまりに青い空に泣く。