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おとに立ちて小川をのぞく乳母が小(こま)窓(ど)小(こさ)雨(め)のなかに山吹のちる
恋か血か牡丹に尽きし春のおもひとのゐの宵のひとり歌なき
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人わが門(かど)を乗りて行(ゆ)く、
やがて消え去る、森の奥。
今(け)日(ふ)も南の風が吹く。
馬に乗る身は厭(いと)はぬか、
野を白くする砂の中。
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鳥の心を君知るや、
巣は雨ふりて冷ゆるとも
雛(ひな)を素直に育てばや、
育てし雛(ひな)を吹く風も
塵(ちり)も無き日に放たばや。
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牡(ぼた)丹(ん)のうへに牡(ぼた)丹(ん)ちり、
真(まつ)赤(か)に燃えて重なれば、
いよいよ青し、庭の芝。
ああ散ることも光なり、
かくの如(ごと)くに派手なれば。
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閨(ねや)にて聞けば朝の雨
半(なかば)は現(うつ)実(ゝ)、なかば夢。
やはらかに降る、花に降る、
わが髪に降る、草に降る、
うす桃色の糸の雨。
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赤い椿(つばき)の散る軒(のき)に
埃(ほこり)のつもる臼(うす)と杵(きね)、
莚(むしろ)に干すは何(なん)の種。
少し離れて垣(かき)越(こ)しに
帆柱ばかり見える船。
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三(み)たび曲つて上(のぼ)る路(みち)、
曲り目ごとに木(こだ)立(ち)より
青い入(いり)江(え)の見える路(みち)、
椿(つばき)に歌ふ山の鳥
花踏みちらす苔(こけ)の路(みち)。