ウェブを「バカと暇人のもの」と看破し、ネットの敗北を宣言した中川淳一郎さんには、はてなブログやはてなブックマークはどのように映っているのだろう? はてなブログのコンテンツを専門に掲載する当ブログとしては、ときに外部からの厳しい指摘を受けたほうがよいのではないか。そう覚悟しつつインタビューを実施。意外と好印象の評価と、決定的なダメ出しというジェットコースターのごとき中川さんのトークを、ほぼノンストップで構成しました。どうぞ一気にお読みください。
取材:加野瀬未友(
id:kanose) 構成・執筆:編集部
アンチだと思われてるかもしれませんが、インターネットのすごさはオレも早くからわかってたんですよ。2001年ごろは知的レベルの高い人たちが議論を交わしたりしていて、インターネットの良さがあったと思うんです。
オレが2006年にニュースサイトの仕事を始めたころは、まだネットユーザーも少なかったし、はてなはマジョリティだったと思います。オレらもすごく意識してましたし、果たしてその人たちを読者として取れるかというと、無理だと思った。だからこそ、ごく普通の、テレビ好きな人を取ろうという方針だったんです。
![中川淳一郎さん 中川淳一郎さん](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hatenablog/20131122/20131122230742.jpg)
リンクの多さが誠実さであり、ブランディングだ
ほとんどのネットユーザーって、感想を言いたいだけなんですよね。﹁わ、辻ちゃんの新しい髪形素敵﹂とかね。だけど、はてなのユーザーは﹁これはかつて80年代に流行った髪形に似てる﹂とか頑張るわけですよ。それこそ﹁はてブとれるぞ!﹂と。
はてなのブログを見てると、やたらリンクが多いんです。情報量がすごい。Googleで何か検索したときに、はてなの白っぽい無機質なデザインが出たら、その瞬間に安心感がある。ここは絶対にチャラくない。すごくいいリンクがいっぱい貼ってあるんじゃないかって。
あのリンクの多さって、誠実さのようなものですね。ブログって基本的に自分が儲けるためにしかやらないものだけど、はてなのブログにはちゃんと他者に還元しようという意識がある。
あるテーマについて書いてるブログが見つかりました。それがライブドアとかgooとかアメブロとかじゃなくて、はてなのデザインだとわかった瞬間に、これは期待できるエントリーだと思う。それがブランディングですよ。
わかりやすい帰属意識を抱かせるキャラクターがない
ブログはアメブロとgooにもありますが、基本はgooです。昔﹁オーマイニュース*2﹂と喧嘩してたときに向こうの関係者が皆gooブログだった、っていうのが使ってる理由です。月に1回くらいしか更新してないですね。
僕と花子のルンルン生活だヨ!
Twitterも4年くらいやってますが、まだ4,000ツイートくらいでそんなに熱心ではないです。ネトウヨに﹁在日認定﹂されてからは﹁これは戦うか﹂って少し増えてますが。
中川淳一郎 (@unkotaberuno) | Twitter
そういえば、アメーバピグのアバターをTwitterのアイコンに使ってる人を見ると、ちょっと親近感が湧くんです。﹁こいつはアメーバやってんだ﹂と思いながらフォローするとか。そういう帰属意識を抱かせるキャラクターが、はてなにはないですね。
「村」とは言われるけど良いコミュニティではある
コミュニティとしては﹁はてな村﹂とかいろいろ言われたけど、なんていうか﹁健全な喧嘩﹂がある場所ですよね。
2ちゃんねるだと﹁お前在日だろ﹂で終わっちゃうんです。アメーバだと﹁あんた嫌い﹂とか。そういうのがあまりなくて、健全な理論で皆が戦ってる感じがする。オレは﹁あんた嫌い﹂とか﹁ウザいこいつ﹂で議論が終わる場にずっと居るから、知的でいいなと思うんです。
梅田望夫さんがインタビューで﹁日本のWebは残念﹂って発言したじゃないですか。これって彼の失望を非常によく表した言葉だと思います。
日本のWebは﹁残念﹂ 梅田望夫さんに聞く︵前編︶ (1/3) - ITmedia ニュース![](https://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/01/news045.html)
︵2009年6月︶
しかし、その後のはてなユーザーの反応が真面目だったんですよ。﹁梅田さんそんなこと言わないでくれ、俺達そんな残念じゃない﹂とか、﹁バカなことを書くやつは決してマジョリティじゃない﹂とか、きちんと主張しまくった。
その反応の真剣さが良かった。あれでオレは﹁ここでコミュニケーションができてる﹂って、そういう風に感じたんです。この道を切り開いてきたのがはてなだし、やっぱりこれは良いコミュニティだと思うんですよ。
一般人が成り上がるツールになるべき
オレは結果的に﹁ウェブはバカと暇人のもの﹂って言い切ったんだけど、それに抵抗し得る勢力だったはてなが、ページビューやTwitterの拡散力で負けちゃったのが残念でしょうがないんです。
本来は、はてなが一般人を成り上がらせるツールになると思ってたんです。ところが結果的には、有名人がTwitterとアメブロで富を根こそぎ取ってってる。インターネットはもう成熟してるのに﹁誰それが離婚しそう﹂みたいな話題ばかりが盛り上がってて、きちんとした話が広まらない。
震災の後に﹁頑張れって今言うことじゃない﹂っていう記事があって、匿名だけどけっこう感動的なんですよ。
頑張れとか復興とかって、多分、今言うことじゃない。![](https://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://anond.hatelabo.jp/20110407001402)
︵2011年4月︶
こういう記事が、テレビや芸能界が好きな人にもちゃんと広がってほしい。知的な人の間だけで知られてる状態が歯がゆいんです。
﹁お前らは節水だとかエコだとか言ってるけど、実は違うんだバカ﹂ということを突きつけた、トイレの記事もよかった。
とてもヤバイ、ウンコの話![](https://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://anond.hatelabo.jp/20110214230635)
︵2011年2月︶
はてな匿名ダイアリーって、こういう話がたまに出てくるんですよね。知的な話や、内部情報を匿名の人が出してくるのがいい。すごく好きです。
もっとバカになれ
やっぱり、はてなは敷居が高いんですよ。バカなことを書いたらバカにされるんじゃないかって思ってる人どれだけいるか知らないですけど、いかにも頭が良さそうなサービスばかりで、知的すぎるんじゃないかと思います。
もっとバカっぽいコンテンツも用意した方がいい。﹁バカ﹂ブロガーというカテゴリーを作って、﹁我こそはバカ﹂ってランキングを登録させるとか。﹁バカ﹂ってカテゴリー、ほかにないと思うので作ったほうがいいです。
―― 中川さんのブログありました!
ほんとですか!?良かった~。
nikumakiasuparaの日記![](https://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/nikumakiasupara/)
2011-11-26
肉巻きアスパラはおいしいですね
いやぁ、肉巻きアスパラはおいしいですね。
︵2013年7月19日、談︶
![中川淳一郎さん 中川淳一郎さん](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hatenablog/20131125/20131125111448.jpg)
さっそく「はてなバカ」を用意しました
中川さんのご提案をもとに、さっそく「バカ」を作ってみました。
トピック「はてなバカ」はこちら
「我こそはバカ」または「肉巻きアスパラ」、さらにこの記事の感想もお寄せいただきたいので「中川淳一郎」さんのお名前。いずれかのキーワードを含むブログを投稿するとトピックの「新着」に掲載され、はてなブックマークやはてなスターがつくと「注目」に掲載されます。どうぞ、ご利用ください。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京生まれ。博報堂、「TV Bros.」編集者などを経て、2006年からネットメディア編集者。著書『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書、2009年)などネット批評も手がける。
協力:なほるる(
id:naho-rin117)