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暗視装置︵あんしそうち、英: night-vision device、NVD; 英: night-vision goggle、NVG; 暗視鏡、暗視眼鏡とも︶は、夜間や暗所でも視界を確保するための装置。航空機用のものについてはANVIS︵英: Aviator's Night Vision Imaging System︶と略称される。
イラクで使用されたアメリカ陸軍の暗視装置画像
FBI HRTが使用する白管増幅管のGPNVG暗視装置映像
元々は軍事技術として開発・発展したものだが、1980年代後半から天文用としても注目された。自動車や監視カメラなど民生用にも応用され、玩具や双眼鏡のような日用品としても販売されている。
赤外線を処理して可視化する、わずかな可視光を増幅するなどして、暗所での視覚を補助するための装置である。赤外線を利用する場合は可視光線と異なり、肉眼で直接認識できる﹁色﹂がない。暗視装置で可視化する際、赤外線を波長ごとに分けて色を付けて表示することは困難ではないが、その結果は可視光線と肉眼によった色彩感覚とは大きく異なるために、視覚を補助する装置の機能としては意味がなく、状況によっては却って邪魔にもなりうる。そのため画面は明暗のみの表現となる。可視光線の波長の中間の色が緑色で、最も知覚しやすい色であるとされることから、たいていは緑系統の単色で表示される。
民生用に市販されているものに関しては、軍事目的に転用可能なため生産国の輸出制限など様々な制限がある。
原理的には、超音波や赤外線以外の電磁波を使って暗視装置を作ることも可能だが、後者に関してはレーダー画像衛星などは原理としては同じであるものの、いずれも実用性の面では困難である。
性能指数(FOM) は、ナイトビジョンデバイスの有効性と明瞭さを定量的に示す数値。これは、デバイスの使用中にユーザーが検出できるミリメートルあたりのラインペアの数にイメージインテンシファイアの信号対雑音比を掛けて計算される。
1990年代後半、光電陰極技術の革新により信号対雑音比が大幅に向上し、新たに開発された増幅管が標準の第3世代増幅管の性能を上回り始めた。
2001年までに、米国連邦政府は、増幅管の「世代」は増幅管の全体的な性能を決定する要因ではないと結論付け、イメージインテンシファイア管の性能を決定する際に「世代」という用語を無関係にした。これが輸出規制の根拠となっている。
メーカーによって採用されている画像増強技術はさまざまだが、戦術的な観点から見ると、暗視システムは暗い場所での視覚を可能にする光学装置である。米国政府自体は、運用者が夜間にはっきりと見える限り、技術自体にはほとんど違いがないという事実を認識している。その結果、米国は世代ではなく性能指数に基づいて輸出規制を行っている。
ITAR規制では、FOMが1400(2022年段階で米軍制式装備品のPVS-31DはFOM2376+程度)を超える米国製の増幅管は米国外に輸出できないと規定している。ただし、国防技術安全保障局(DTSA) は、ケースバイケースでそのポリシーを放棄することができる。
暗視装置はイメージ・インテンシファイア(Image Intensifier、I.I.)、ノクトビジョン(Nocto Vision)と表記/呼称されることもある。
現代では「暗視装置」と呼称/表記されることが一般的であるが、時代の古い資料や書籍などでは「ノクトビジョン」「ナクトビジョン」の表記も多く見られる。
一般撮影用カメラのレンズとして、コンタックスRTS用にN-ミロター210mmが販売されていたことがある。
対象が暗いことから、1980年代後半に天文用としても注目された。肉眼では光害の少ない場所でも6等星までしか見えないが、50mm F1.4のレンズの後ろにイメージ・インテンシファイアを取り付け出力側蛍光面を50mmのアイピースで見ると、9-10等星まで見ることができる。また、光電管の分光感度が赤外線部にまで伸びているためHα線などほとんど目に見えない光での観測ができる利点もあった。
ただし、バックの光も増幅されるため、光害の少ない場所でないと利点を生かすことができない。また、解像力やSN比は低い。
レクサスの暗視装置HUD
自動車の暗視装置・システムは、赤外線カメラでとらえた映像をディスプレイに表示し、夜間の視界を拡大鮮明化することで安全走行に寄与する夜間運転支援システムである。遠赤外線カメラを用いて熱源を検知するものと、近赤外線を照射し赤外線カメラで検知する2つのタイプがある。コスト的には近赤外線タイプが優れるが、検知距離では遠赤外線タイプに劣るなど一長一短がある。各自動車会社が考案し実用化しているが、コストなどの問題から全車に装備するまでは至っておらず、採用されているのは一部の高級車もしくは用途が限定された専用車に限られている。
GM暗視装置
GMがレイセオンのライセンス︵名称および独占使用権も含む︶を元に開発したシステムで、レイセオンが開発した民間向け低コストの遠赤外線カメラが用いられている。カメラはフロントグリルに埋め込まれ、映像はHUDに表示される。全面改良された2000年モデルのキャデラック・ドゥビル︵現キャデラック・DTS︶に自動車用安全装備としては初めてオプション設定され、それ以降はシボレー・タホなどにもオプション設定された。2000年モデルでは7,000台以上に装着され好調だったが、世界初のシステムということもあり、オプション金額が高額だったために年々装着数は落ち込み、2003年に廃止されたと同時に暗視装置のライセンスも返上した。
THERMAL-EYE
L-3 コミュニケーションズインフラレッドプロダクツ︵元レイセオンコマーシャルインフラレッド︶により発売されている遠赤外線カメラで、外付けの自動車用もラインナップされている。
インテリジェント・暗視装置システム
本田技研工業が開発したシステム。2基の遠赤外線カメラにより歩行者や対向車の位置や動きを検知し、HUD上の表示とブザー音により運転者の注意を促すなど、唯一インテリジェント化がされている。2004年に全面改良されたホンダ・レジェンドに日本でのみオプション設定されている。
BMW暗視装置
BMWが採用している遠赤外線タイプのシステムで、オートリブの暗視装置システムを元に開発された。人間工学を重視した設計で、映像はセンターコンソールのディスプレイに表示され、走行速度、走行状態によりパン、ズームを自動で行う機能を持つ。2005年にBMW・7シリーズにオプション設定、その後5シリーズ、6シリーズの一部にも設定されている。
ナイトビュー
トヨタ自動車が開発したシステムで、近赤外線を利用している。最大およそ250 mほどの距離を照射し、認知可能範囲はおよそ150 m。映像はHUDに表示される。2002年に初めてランドクルーザーシグナス︵100系︶にオプション設定された。クラウンマジェスタではヘッドライトのハイビーム側に、可視光カットフィルターを用いることにより赤外線投光器の役割を付加している。ヘッドアップディスプレイタイプなので、投影窓の上の埃や動く虫も拡大表示される。
ナイトビュー・アシスト
ダイムラー・クライスラー︵現 ダイムラー︶がボッシュと共同開発したシステム。近赤外線タイプでハイビームモジュールに可視光カットフィルタが取り付けられ、フロントウィンドウ内のカメラで撮影する。映像はインストルメントパネルのLCDに表示される。2005年に全面改良されたメルセデス・ベンツ・Sクラスが初搭載。一方でクライスラーでは採用された例がない。
暗視装置システム
アウディが採用しているシステムで、2009年に全面改良されたA8︵D4型︶に﹁アウディプレゼンスパッケージ﹂の中に組み込まれる形でオプション設定された。
プジョー暗視装置
グループPSA傘下のプジョーが採用されているシステム。2019年に全面改良された508︵2代目︶に﹁フルパッケージ﹂の中に組み込まれるオプションとして設定された。