無効(むこう)とは、法律行為意思表示があったものの、その有効要件を満たさないため最初から効果を生じない状態をいう。

概説

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無効な法律行為とは、法律行為の外形はあるものの、そこから法律的な効果が生じないものをいう[1]

取消しとの差異

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[2]



[1]



[1]



119122

[3][3]

[3]


無効の人的範囲の制限

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無効を第三者に対しても対抗できるかどうかは無効行為の態様ごとに異なり、取引の安全を害することがあっても無効の趣旨を貫徹すべきか、第三者の取引の安全の保護を優先して第三者に対しては無効を対抗できないとするかによる[4]

無効の主張権者の制限

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[5][5][5]2017[5]#

一部無効

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無効の効果に関する理論の一つ。法律行為の内容の一部に無効原因がある時に法律行為全体が無効になるか、無効原因がある部分のみ無効になるかが問題になる。

日本法における無効

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無効行為の態様

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法律行為の無効

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法律行為の一般的有効要件を満たさない場合、すなわち確定可能性の欠如(内容の不確定)、実現可能性の欠如(原始的不能)、適法性の欠如(強行法規違反)、社会的妥当性の欠如(公序良俗違反、90条)である[6]

意思表示の無効

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[6]2017[7]20204

無権代理無効

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無権代理無効については本来の無効とは異なり効果不帰属として処理される[6]#確定的無効・不確定的無効の不確定的無効(未確定無効)を参照。

無効の種類

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不成立無効・成立無効

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法律行為が形式を欠いて成立していない場合を不成立無効(要物契約において目的物の交付がなされていない場合など)、形式を満たしてはいるが実質的要件を欠く場合を成立無効(公序良俗違反の契約)という[8]

絶対的無効・相対的無効・取消的無効

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942[8]



[9]

201795453262431512017[7]20204

一般的無効・特殊的無効

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民法総則における無効を一般的無効、民法の親族法相続法において特別に認められる無効を特殊的無効という[8]

当然無効・裁判上無効

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裁判上の手続によらなくとも当然に無効とされる場合を当然無効、訴えによらなければならない場合(訴えの当事者や期間に制約がある場合を含む)を裁判上無効という[10]

確定的無効・不確定的無効

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無効行為の基本的効果

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以下に述べるのは無効行為の基本的効果である。本人と相手方との間の効力である当事者間効力と当事者と第三者との間の効力である第三者への効力(第三者効)に分けて考えられる。

当事者間効力

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[11]

2017202041212703[12] 

1

2

3



62[12]708[11]

第三者への効力

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一部無効理論

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一部無効につき明文で規定されている場合(133条278条360条410条580条563条568条604条など)にはそれに従うことになるので問題はないが、一部無効理論はこのような明文規定が無い場合にも、一部のみ無効にする事が著しく当事者の意思に反する時に限って法律行為の全体を無効にすべきであり、それ以外は原則として無効原因がある部分のみを無効とすべきであるという考えをいう。

無効行為の転換

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無効行為の転換の意義

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本来意図した法律行為についての効果が無効でも、その法律行為が他の類型の法律行為の要件を充たしているときに、後者の法律行為として有効と認めることを無効行為の転換という。

無効行為の転換の具体例

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971

53224321110

62[13]11114151946

無効行為の追認

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無効行為の追認の効果

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119

[14][14]119[15]

不確定的無効の場合

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無権代理他人物売買など不確定的無効とされた行為を追認する場合には遡及効が認められており、この場合には当該法律行為がなされた時点に遡って効力を生じる(無権代理につき116条、他人物売買につき最判昭37・8・10民集16巻8号1700頁参照)[15]

脚注

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(一)^ abcI 1993231 

(二)^  1 4 20083271

(三)^ abcI 1993232 

(四)^ 2017186-187 

(五)^ abcd2017187 

(六)^ abc  4  20084289

(七)^ ab2017223 

(八)^ abc 1 4 20083272

(九)^   4  20084292

(十)^  1 4 20083272-273

(11)^ ab 1 4 20083273

(12)^ ab62使. . 2020311

(13)^  1 4 20083275

(14)^ ab  4  20084293

(15)^ ab  4  20084294

参考文献

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  • コンサイス 判例六法 2006年度版 三省堂
  • 図解による法律用語辞典 自由国民社 

関連項目

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