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「アンドロメダ病原体」の版間の差分

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『'''アンドロメダ病原体'''』(アンドロメダびょうげんたい、原題;''The Andromeda Strain''、直訳では、''strain''は「[[病原体]]」ではなく「[[菌株]]」)は、[[1969年]]に出版された[[マイケル・クライトン]]による[[SF小説]]。この小説が[[テクノロジー小説]]の嚆矢とされている。

『'''アンドロメダ病原体'''』(アンドロメダびょうげんたい、原題;''The Andromeda Strain''、直訳では、''strain''は「[[病原体]]」ではなく「[[菌株]]」)は、[[1969年]]に出版された[[マイケル・クライトン]]による[[SF小説]]。この小説が[[テクノロジー小説]]の嚆矢とされている。

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マイケル・クライトン名義で初めて発表された[[長編小説]]であり、同時に出世作とされている。

マイケル・クライトン名義で初めて発表された[[長編小説]]であり、同時に出世作とされている。



1971年に[[ロバート・ワイズ]]の監督により映画化された(原題は原作と同じ。邦題は『[[アンドロメダ…]]』)。2008年には、[[リドリー・スコット]]/[[トニー・スコット]]製作によるテレビミニシリーズ(邦題『[[アンドロメダ・ストレイン]]』)が放送された。

1971年に[[ロバート・ワイズ]]の監督により映画化された(原題は原作と同じ。邦題は『[[アンドロメダ…]]』)。2008年には、[[リドリー・スコット]]/[[トニー・スコット]]製作によるテレビミニシリーズ(邦題『[[アンドロメダ・ストレイン]]』)が放送された。1971年版で監督自身が「主役はセットである」と隔離施設の出来に賞賛を送っている



「アンドロメダ菌株(ストレイン)」という架空の「[[病原体]]」をめぐる5日間の出来事を書いた小説。

「アンドロメダ菌株(ストレイン)」という架空の「[[病原体]]」をめぐる5日間の出来事を書いた小説。



小説全体が「科学的な危機を正確かつ客観的に記録した報告書」という体裁で成り立っており、学術的あるいは理論的な世界観、国家的[[危機]]の際に発動される[[政治]]・[[軍事]][[プログラム]]の厳格性を前面に出し、架空の科学理論([[宇宙線]]の影響下での[[成層圏]]での、驚異的な[[進化|生命進化]]など)/写真/図([[電算機]]出力の[[ダイアグラム]]や軍事[[通信]][[フォーマット]])などの具体的資料を用いている。


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「SFファンは(クライトンに)希望を持ってよい(『[[ニューズウィーク]]』誌)」や「サイエンス・フィクションにおけるひとつの完成された形(『[[ライフ (雑誌)|ライフ]]』誌)」という賞賛がある一方、科学技術上のリアリティーに較べて人間的興味が薄い、テーマが古臭い、結果がおざなりである、という批判も存在する。ただし[[ニューヨーク・タイムズ]]紙は、そのような点も包括した上でこの作品を評価している。また、ワイルドファイア研究施設への入構時の、何重にも渡る厳格な「[[防疫]]・[[滅菌]]手続き」は、『サタデイ・レビュー』誌でジョン・リアが、当時進行中だったアポロ計画の隔離検疫手順の不備を引き合いに出して論評を行っている<ref >本作早川書房版・訳者あとがきより。</ref>。

「SFファンは(クライトンに)希望を持ってよい(『[[ニューズウィーク]]』誌)」や「サイエンス・フィクションにおけるひとつの完成された形(『[[ライフ (雑誌)|ライフ]]』誌)」という賞賛がある一方、科学技術上のリアリティーに較べて人間的興味が薄い、テーマが古臭い、結果がおざなりである、という批判も存在する。ただし[[ニューヨーク・タイムズ]]紙は、そのような点も包括した上でこの作品を評価している。また、ワイルドファイア研究施設への入構時の、何重にも渡る厳格な「[[防疫]]・[[滅菌]]手続き」は、『サタデイ・レビュー』誌でジョン・リアが、当時進行中だったアポロ計画の隔離検疫手順の不備を引き合いに出して論評を行っている<ref >本作早川書房版・訳者あとがきより。</ref>。


なお、これに先駆け1964年に[[小松左京]]が発表した[[パンデミック]]を描いたSF小説『[[復活の日]]』は、1965年に映画化企画があがっていたが合作でないと日本では無理との[[東宝]]の判断で英訳され、[[20世紀フォックス]]へ渡されている。その後、当時フォックスに出入りしていたマイケル・クライトンが4年後の1969年に類似テーマの『アンドロメダ病原体』を出版してベストセラーとなり映画化され、小松左京は本作を絶賛した。『復活の日』もまた1980年に映画化されているが、原作としては『復活の日』のほうが先である。



== ストーリー ==

== ストーリー ==

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ワイルドファイアとは「地球外生物がもたらされた場合、その生物を調査・分析して地球上での伝播を防ぐ」ということを目的とした計画及びその実行機関の名称であり、研究施設は[[ネバダ州|ネヴァダ州]]フラットロックにある農業試験場の地下に建造されていた。地上とは完全に隔離されている上、万が一その生物が流出するような事態が起こった場合に備えて自爆用の[[核爆発]]装置まで設置されていた。

ワイルドファイアとは「地球外生物がもたらされた場合、その生物を調査・分析して地球上での伝播を防ぐ」ということを目的とした計画及びその実行機関の名称であり、研究施設は[[ネバダ州|ネヴァダ州]]フラットロックにある農業試験場の地下に建造されていた。地上とは完全に隔離されている上、万が一その生物が流出するような事態が起こった場合に備えて自爆用の[[核爆発]]装置まで設置されていた。



翌日、このワイルドファイア計画の発案者であり責任者でもある細菌学者のジェレミー・ストーン博士が、チャールズ・バートン博士を伴って気密服を着てピードモントを調査した。ピードモントの住人は全身の血液が凝固するという謎の症状によって死亡しているか、または奇怪な自殺をしていた。そうした異常事態の中、2人は町を探索してスクープ衛星が町の医師の元に運び込まれていることを突き止めた。衛星はその医師によって強引に蓋が開けられており、それがこの異常事態を引き起こしたらしいと2人は推察した。中にまだ「何か」が残っていることを願いつつ2人は衛星を回収したが、その過程で生存者が2人見つかった。1人は偵察機の画像に写っていた[[胃潰瘍]]を患った飲酒家の老人で、もう1人は健康的に何ら問題が認められない生後2カ月の乳児だった。健康状態が全く異なる2人が生き残ったことで、原因追求は困難を極めることとなる。最終的に、アンドロメダ菌株は狭い[[水素イオン指数|pH]]領域内でのみ生存/増殖する事が判明した。これに対して乳児は過呼吸によるアルカリ血症、老人はアルコールの過摂取による酸血症を持っており、この条件からは逸脱していたために生存していた。但し、この2名の症状が正反対のものであった為、なかなか生存条件が判明しなかった。

翌日、このワイルドファイア計画の発案者であり責任者でもある細菌学者のジェレミー・ストーン博士が、チャールズ・バートン博士を伴って気密服を着てピードモントを調査した。ピードモントの住人は全身の血液が凝固するという謎の症状によって死亡しているか、または奇怪な自殺をしていた。そうした異常事態の中、2人は町を探索してスクープ衛星が町の医師の元に運び込まれていることを突き止めた。衛星はその医師によって強引に蓋が開けられており、それがこの異常事態を引き起こしたらしいと2人は推察した。中にまだ「何か」が残っていることを願いつつ2人は衛星を回収したが、その過程で生存者が2人見つかった。1人は偵察機の画像に写っていた[[胃潰瘍]]を患った飲酒家の老人で、もう1人は健康的に何ら問題が認められない生後2カ月の乳児だった。健康状態が全く異なる2人が生き残ったことで、原因究明は困難を極めることとなる。最終的に、アンドロメダ菌株は狭い[[水素イオン指数|pH]]領域内でのみ生存/増殖する事が判明した。これに対して乳児は過呼吸によるアルカリ血症、老人はアルコールの過摂取による酸血症を持っており、この条件からは逸脱していたために生存していた。但し、この2名の症状が正反対のものであった為、なかなか生存条件が判明しなかった。



ストーンとバートンは2人を収容してワイルドファイア研究所に向かいつつ、[[核爆発]]によるピードモントの「核による焼却」を要請した。だが、政府は核を使用することの重大性を考慮してその要請を一旦留め、代わりに[[州兵]]を展開して当該地域の封鎖を行った。しかし、その連絡は通信機の機能不全により、ワイルドファイア研究チームに届くのが遅れてしまった。

ストーンとバートンは2人を収容してワイルドファイア研究所に向かいつつ、[[核爆発]]によるピードモントの「核による焼却」を要請した。だが、政府は核を使用することの重大性を考慮してその要請を一旦留め、代わりに[[州兵]]を展開して当該地域の封鎖を行った。しかし、その連絡は通信機の機能不全により、ワイルドファイア研究チームに届くのが遅れてしまった。



様々な思惑が絡み合いつつも入院中のカーク博士を除く4人の研究員がワイルドファイア研究所に集結した。彼らは、後に「アンドロメダ菌株」と名付けられることになる未知の微生物を衛星内部で発見して調査研究を開始、同時に2名の「患者」のみが生存できた理由を探し始めた。だが、彼らの努力にもわらず成果はなかなか上がらない。そして、状況を打破する決断の末に病原体の特性が判明した時、彼らは予想もしなかった危機を自ら招いていることに気づく。

様々な思惑が絡み合いつつも入院中のカーク博士を除く4人の研究員がワイルドファイア研究所に集結した。彼らは、後に「アンドロメダ菌株」と名付けられることになる未知の微生物を衛星内部で発見して調査研究を開始、同時に2名の「患者」のみが生存できた理由を探し始めた。だが、彼らの努力にもかかわらず成果はなかなか上がらない。そして、状況を打破する決断の末に病原体の特性が判明した時、彼らは予想もしなかった危機を自ら招いていることに気づく。



== 主な登場人物 ==

== 主な登場人物 ==

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: 作品内で登場した理論。任意の研究・作業等を行うグループを編成する時に、専門外の人間を1人加えることによって、より効果的な結果が得られるというもの。その専門外の人間をオッドマン(半端者)と呼称している。本作では、この仮説のひとつである「男性の独身者が核制御の意思決定に向いている」という調査結果を支持した政府の上層部が、施設の核自爆装置の制御を民間人に託す代わりにそのメンバーを男性の独身者とするよう条件に挙げたことになっている。当初、ワイルドファイア側は細菌の研究に必要な内科医からメンバーを選ぶことを希望していたが、条件を満たす独身男性の内科医がいなかったことから、やむなく外科医のホールを選んだ。

: 作品内で登場した理論。任意の研究・作業等を行うグループを編成する時に、専門外の人間を1人加えることによって、より効果的な結果が得られるというもの。その専門外の人間をオッドマン(半端者)と呼称している。本作では、この仮説のひとつである「男性の独身者が核制御の意思決定に向いている」という調査結果を支持した政府の上層部が、施設の核自爆装置の制御を民間人に託す代わりにそのメンバーを男性の独身者とするよう条件に挙げたことになっている。当初、ワイルドファイア側は細菌の研究に必要な内科医からメンバーを選ぶことを希望していたが、条件を満たす独身男性の内科医がいなかったことから、やむなく外科医のホールを選んだ。

; カロシン

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== 続編 ==


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== 参考文献 ==

== 参考文献 ==

* [[マイケル・クライトン]]『アンドロメダ病原体』 [[浅倉久志]]訳、[[ハヤカワ文庫SF]]、1976年 ISBN 4150102082

* [[マイケル・クライトン]]『アンドロメダ病原体』 [[浅倉久志]]訳、[[ハヤカワ文庫SF]]、1976年 ISBN 4150102082

* 映画『アンドロメダ…』 [[レーザーディスク]]版 PILF-1658

* 映画『アンドロメダ…』 [[レーザーディスク]]版 PILF-1658


== 関連項目 ==

* [[フィクションにおける病気]]



== 脚注 ==

== 脚注 ==

=== 注釈 ===

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=== 出典 ===

<div class="references-small"><references /></div>

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== 外部リンク ==

== 外部リンク ==

* [http://www.imdb.com/title/tt0424600/ 2008ミニTVシリーズ版のIMDb]

* [[imdbtitle:0066769|1971映画版のIMDb]]

* [[imdbtitle:0424600|2008年ミニTVシリーズ版のIMDb]]



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[[Category:テクノスリラー小説]]

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[[Category:アリゾナ州を舞台とした作品]]

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[[Category:微生物を題材した作品]]

[[Category:微生物を題材した小説]]

[[Category:地球外生命体を題材とした小説]]

[[Category:地球外生命体を題材とした小説]]

[[Category:星雲賞受賞作品]]


2024年3月10日 (日) 19:01時点における最新版

アンドロメダ病原体
The Andromeda Strain
著者 マイケル・クライトン
発行日 1969年
ジャンル SF小説
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
形態 文学作品
次作 アンドロメダ病原体-変異-英語版
公式サイト http://www.michaelcrichton.com/the-andromeda-strain
コード ISBN 0-394-41525-6, 84-406-2955-9, OCLC 12231, 30832901
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

The Andromeda Strainstrain1969SF

概要

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19712008/1971

5

[]使

SF[1]

1964SF196520419691980

ストーリー

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7使11

調

調22221122pH2

2使

4調2

主な登場人物

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作中の架空の術語

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NBCABC196319661967166231466



1967257



調NASAAMC1963196419651



5



西19651966

5

7-12

︿使



1調



1965UJ44759WK-91966240[ 1]

続編

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ダニエル・H・ウィルソン英語版により『アンドロメダ病原体-変異-英語版』が執筆され、原著は2019年11月12日に出版された。和訳本は酒井昭伸訳で2020年5月26日早川書房より出版。

参考文献

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関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ 後天性免疫不全症候群(AIDS)の症状に類似する設定だが、AIDSの症例は『アンドロメダ病原体』刊行から約12年後の1981年6月[2]に初めて報告されている。

出典

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  1. ^ 本作早川書房版・訳者あとがきより。
  2. ^ HIV・エイズの疫学-米国、1981~2005年”. IMICライブラリ. 一般財団法人 国際医学情報センター (2006年6月2日). 2024年3月10日閲覧。

外部リンク

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