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「ヌーリスターン語群」の版間の差分

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'''ヌーリスターン語派'''（''Nuristan'', ヌーリスタン語派）、または'''カーフィル語派'''（''Kafir''）とは、[[パキスタン]]から[[アフガニスタン]]にかけて分布する言語のグループで、[[インド・ヨーロッパ語族]]の[[インド・イラン語派]]に属する。

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}}'''ヌーリスターン語群'''（''Nuristan''）、または'''カーフィル語群'''（''Kafir''）とは、[[パキスタン]]から[[アフガニスタン]]にかけて分布する言語のグループで、[[インド・ヨーロッパ語族]]の[[インド・イラン語派]]に属する。


==概説==

==概説==

ヌーリスターン語派の話者は、パキスタン北西部からアフガニスタン東部の[[ヒンドゥークシュ山脈]]奥部に孤立して散在する村々に分布している。これら村落は近代国家の中央政府からの統制をいまだ受けておらず、欧米の言語学者の調査が及んでいなかった。従って文献に初めて現れたのは19世紀と比較的遅い。推定によれば話者人口は非常に少なく、[[危機言語]]として扱われる。

ヌーリスターン語群の話者は、パキスタン北西部からアフガニスタン東部の[[ヒンドゥークシュ山脈]]奥部に孤立して散在する村々に分布している。これら村落は近代国家の中央政府からの統制をいまだ受けておらず、欧米の言語学者の調査が及んでいなかった。従って文献に初めて現れたのは19世紀と比較的遅い。推定によれば話者人口は非常に少なく、[[危機言語]]として扱われる。



[[比較言語学]]的な位置づけについては、近年ではインド・イラン語派内の独立した一グループとする見解が主流であるが、一方で支持は少ないながらも、[[インド語派]]に含める説や、[[イラン語派]]に属するがインド語派に属する[[ダルド語派]]から多大な影響を受けて変容したとする説もある。いずれにせよ、ヌーリスターン語派の諸民族が現住地に落ち着いたのは相当の過去のことであり、またインド語派とは異なり[[パンジャーブ]]地方へは入らなかったという点に争いはない。ちなみにインド・イラン語派には以前からインド語派とイラン語派の2語派が想定されてきたが、その名称は既に定着しており、ヌーリスターン語派を第三の語派として認知するにしても名称の変更は難しいだろう。

[[比較言語学]]的な位置づけについては、近年ではインド・イラン語派内の独立した一グループとする見解が主流であるが、一方で支持は少ないながらも、[[インド語群]]に含める説や、[[イラン語群]]に属するがインド語群に属する[[ダルド語群]]から多大な影響を受けて変容したとする説もある。いずれにせよ、ヌーリスターン語群の諸民族が現住地に落ち着いたのは相当の過去のことであり、またインド語派とは異なり[[パンジャーブ]]地方へは入らなかったという点に争いはない。<!--ちなみにインド・イラン語派には以前からインド語群とイラン語群の2語群が想定されてきたが、その名称は既に定着しており、ヌーリスターン語群を第三の語群として認知するにしても名称の変更は難しいだろう。-->


== 名称 ==

[[ヌーリスターン]]はかつて﹁不信仰者の地﹂を意味するカフィリスタンと呼ばれていた。これは当地の住民が独自の[[多神教]]を信仰していたためで、言語もこれに倣ってカーフィル語派とされていた。しかし住民の一部が[[イスラーム]]を受容すると、異教の民がイスラームの光に照らされたとしてヌーリスターン︵光の地︶と呼ばれるようになり、カーフィル語派の名も差別的だとしてヌーリスターン語派に改められた。

[[ヌーリスターン州|ヌーリスターン]]は1890年代までペルシア語で﹁不信仰者の地﹂を意味する{{仮リンク|カーフィリスターン|en|Kafiristan|label=カーフィリスタン}}と呼ばれていた。これは当地の住民が独自の[[多神教]]︵[[アニミズム]]︶を信仰していたためで、言語もこれに倣ってカーフィル語群とされていた。しかし[[アブドゥッラフマーン・ハーン]]に征服されて強制的に改宗させられ、住民の一部が[[イスラーム]]を受容すると、異教の民がイスラームの光に照らされたとしてヌーリスターン︵光の地︶と呼ばれるようになり、カーフィル語群の名も差別的だとしてヌーリスターン語群に改められた。


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== ヌーリスターン語群に属する言語 ==

ストランドは、ヌーリスタン語派には大別して5言語が存在し、それぞれ数種類の[[方言]]をもつとしている。主な方言にはカタヴァリ語、カンヴィリ語、ヴァイアラ語などがあり、パキスタン側のヌーリスタンではカンヴィリ語話者が大多数である。これら方言とは[[ダルド語派]]との関連が指摘されているが、言語学的というよりは地理的な関連であろう。

ストランドは、ヌーリスタン語群には大別して5言語が存在し、それぞれ数種類の[[方言]]をもつとしている。主な方言には{{仮リンク|カタヴァリ方言|en|Kata-vari dialect|label=カタヴァリ語}}、{{仮リンク|カンヴィリ方言|en|Kamviri dialect|label=カンヴィリ語}}、[[ヴァイアラ語]]（{{lang-en-short|Vai-ala}}）などがあり、パキスタン側のヌーリスタンではカンヴィリ語話者が大多数である。これら方言とは[[ダルド語派]]との関連が指摘されているが、言語学的というよりは地理的な関連であろう。


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*{{仮リンク|アシュク語|en|Askunu language}}　話者数2000人
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ノルウェー人言語学者のモルゲンスチェルネによれば、[[チトラル]]は言語の多様性という意味で世界一豊かな地域である。主要言語はコワール語であるが、その他に[[カラーシャ語]]、[[パルーラ語]]、[[ダメーリー語]]、[[ガワール・バティ語]]、ヌーリスターン語派、[[イドガ語]]、[[ブルシャスキー語]]、[[グジャーリー語]]、[[ワヒー語]]、[[キルギス語]]、[[ペルシア語]]、[[パシュトー語]]などが話されている。上にあげた言語は表記法が確立していないため、手紙などには[[ウルドゥー語]]やペルシア語が用いられる。

*{{仮リンク|カム・カタヴァリ語|en|Kamkata-viri language}}　話者数24200人（{{仮リンク|カタヴァリ方言|en|Kata-vari dialect|label=カタヴァリ語}}、{{仮リンク|カンヴィリ方言|en|Kamviri dialect|label=カンヴィリ語}}、{{仮リンク|ムンヴィリ方言|en|Mumviri dialect|label=ムンヴィリ語}}を含む）

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*[[ワシ・ワリ語]]　話者数2000人。プラスニ語とも
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==この語派に属する言語==
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*[[アシュク語]]　話者数2000人

*[[カティ語]]　　話者数24200人（[[カタヴァリ語]]、[[カンヴィリ語]]、[[ムンヴィリ語]]を含む）
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*[[プラスニ語]]　話者数2000人

*[[トレガミ語]]　話者数1000人

*[[トレガミ語]]　話者数1000人

*[[ワイガル語]]　話者数2000人

*[[ワイガリ語]]　話者数2000人

== 言語の多様性の地、チトラル ==
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ノルウェー人言語学者の[[ゲオルク・モルゲンスティールネ]]によれば、[[チトラル]]は言語の多様性という意味で世界一豊かな地域である。主要言語は[[コワール語]]であるが、その他にカラーシャ語（チトラルの[[カラシュ人|カラシュ族]]：[[カラシュ語]]、ヌーリスタンのカラシュ族：[[ワイガリ語]]）、[[パルーラ語]]、[[ダメーリー語]]、{{仮リンク|ガワール・バティ語|en|Gawar-Bati language}}、ヌーリスターン語群、[[イドガ語]]、[[ブルシャスキー語]]、[[グジャール語]]、[[ワヒ語]]、[[キルギス語]]、[[ペルシア語]]、[[パシュトー語]]などが話されている。上にあげた言語は表記法が確立していないため、手紙などには[[ウルドゥー語]]やペルシア語が用いられる。


==参考文献==

==参考文献==
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==関連項目==

==関連項目==

*[[ダルド語派]]

*[[ダルド語群]]

*[[ヌーリスターン人]]

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[[Category:インド・イラン語派|ぬーりすたーんこは]]


{{インド・イラン語派}}

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[[eo:Nuristana lingvaro]]

[[fa:زبان نورستانی]]

[[fi:Nuristanilaiset kielet]]

[[fr:Langues nouristanies]]

[[gl:Linguas nuristanias]]

[[hsb:Nuristanske rěče]]

[[ko:누리스탄어군]]

[[ku:Zimanên nûristanî]]

[[nn:Nuristanske språk]]

[[no:Nuristanispråk]]

[[pl:Języki nuristańskie]]

[[ru:Нуристанские языки]]

[[th:กลุ่มภาษานูริสถาน]]

2022年2月17日 (木) 04:59時点における最新版

ヌーリスターン語群
話される地域ヌーリスターン州
言語系統インド・ヨーロッパ語族
下位言語
Glottolognuri1243[1]

ヌーリスターン語群（Nuristan）、またはカーフィル語群（Kafir）とは、パキスタンからアフガニスタンにかけて分布する言語のグループで、インド・ヨーロッパ語族のインド・イラン語派に属する。

概説

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ヌーリスターン語群の話者は、パキスタン北西部からアフガニスタン東部のヒンドゥークシュ山脈奥部に孤立して散在する村々に分布している。これら村落は近代国家の中央政府からの統制をいまだ受けておらず、欧米の言語学者の調査が及んでいなかった。従って文献に初めて現れたのは19世紀と比較的遅い。推定によれば話者人口は非常に少なく、危機言語として扱われる。

比較言語学的な位置づけについては、近年ではインド・イラン語派内の独立した一グループとする見解が主流であるが、一方で支持は少ないながらも、インド語群に含める説や、イラン語群に属するがインド語群に属するダルド語群から多大な影響を受けて変容したとする説もある。いずれにせよ、ヌーリスターン語群の諸民族が現住地に落ち着いたのは相当の過去のことであり、またインド語派とは異なりパンジャーブ地方へは入らなかったという点に争いはない。

名称

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ヌーリスターンは1890年代までペルシア語で﹁不信仰者の地﹂を意味するカーフィリスタン︵英語版︶と呼ばれていた。これは当地の住民が独自の多神教︵アニミズム︶を信仰していたためで、言語もこれに倣ってカーフィル語群とされていた。しかしアブドゥッラフマーン・ハーンに征服されて強制的に改宗させられ、住民の一部がイスラームを受容すると、異教の民がイスラームの光に照らされたとしてヌーリスターン︵光の地︶と呼ばれるようになり、カーフィル語群の名も差別的だとしてヌーリスターン語群に改められた。

ヌーリスターン語群に属する言語

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ストランドは、ヌーリスタン語群には大別して5言語が存在し、それぞれ数種類の方言をもつとしている。主な方言にはカタヴァリ語︵英語版︶、カンヴィリ語︵英語版︶、ヴァイアラ語︵英: Vai-ala︶などがあり、パキスタン側のヌーリスタンではカンヴィリ語話者が大多数である。これら方言とはダルド語派との関連が指摘されているが、言語学的というよりは地理的な関連であろう。

言語の多様性の地、チトラル

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ノルウェー人言語学者のゲオルク・モルゲンスティールネによれば、チトラルは言語の多様性という意味で世界一豊かな地域である。主要言語はコワール語であるが、その他にカラーシャ語︵チトラルのカラシュ族‥カラシュ語、ヌーリスタンのカラシュ族‥ワイガリ語︶、パルーラ語、ダメーリー語、ガワール・バティ語︵英語版︶、ヌーリスターン語群、イドガ語、ブルシャスキー語、グジャール語、ワヒ語、キルギス語、ペルシア語、パシュトー語などが話されている。上にあげた言語は表記法が確立していないため、手紙などにはウルドゥー語やペルシア語が用いられる。

参考文献

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  • Khowar English Dictionary (by Mohammad Ismail Sloan, 1981) (published in Pakistan)
  • Decker, Kendall D. (1992) Languages of Chitral http://www.ethnologue.com/show_work.asp?id=32850
  • Morgenstierne, Georg (1926) Report on a Linguistic Mission to Afghanistan. Instituttet for Sammenlignende Kulturforskning, Serie C I-2. Oslo.
  • Jettmar, Karl (1985) Religions of the Hindu Kush ISBN 0856681636
  • J. P. Mallory, In Search of the Indo-Europeans: Language, Archaeology and Myth, Thames and Hudson, 1989.
  • James P. Mallory & Douglas Q. Adams, "Indo-Iranian Languages", Encyclopedia of Indo-European Culture, Fitzroy Dearborn, 1997.
  • エスノローグ（全て英語）

外部リンク

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関連項目

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祖語

インド語群

古代語

中央語群
（ヒンディー語群（英語版））

東部語群
（マガダ語）

北部語群
（パハール語群）

北西語群

南部語群

ダルド語群

ヌーリスターン語群

イラン語群

東イラン語群

西イラン語群

1: ヴェッダ語はクレオール言語

カテゴリ カテゴリ
  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Nuristani”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/nuri1243 
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