「人魚姫」の版間の差分
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本作は、アンデルセンの失恋︵初出は1837年だが、これ以前に少なくとも2人に失恋している<ref>{{Cite book|和書|author=ヨハネス・ミュレヘーヴェ|translator=大塚絢子|year=2005|title=アンデルセンの塩|publisher=新評論|pages=270-281|isbn=4-7948-0653-1}}</ref>︶が原因で生まれた、人魚はアンデルセン自身の投影というのが定説である<ref>{{Cite book|和書|author=浦山明俊|year=1999|title=絵本とは違いすぎる 原典アンデルセン|publisher=ぶんか社|page=93|isbn=4-8211-0676-0}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=安奈泉|year=1999|title=アンデルセン童話の呪い|publisher=大和出版|page=28|isbn=4-8047-6065-2}}</ref>。また、人魚は下半身が魚の形で、足を開けない。これは少女(=[[処女]])の暗喩とされることがある。人の姿になった人魚が歩くたびに足に痛みを感じるのは[[初体験 (性行為)|処女喪失]]を表す可能性がある<ref>{{Cite book|和書|author=須田諭一|year=2014|title=おとなになって読むアンデルセン|publisher=メトロポリタンプレス|page=14|isbn=978-4-904759-84-4}}</ref>。その他、この物語の最大の悲劇は、言葉を失った人魚姫が自らの存在の痕跡を語ることなく消えなければならない点にある、とする研究もある{{Sfn|福嶋|2009|p=92}}。
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本作は、アンデルセンの失恋︵初出は1837年だが、これ以前に少なくとも2人に失恋している<ref>{{Cite book|和書|author=ヨハネス・ミュレヘーヴェ|translator=大塚絢子|year=2005|title=アンデルセンの塩|publisher=新評論|pages=270-281|isbn=4-7948-0653-1}}</ref>︶が原因で生まれた、人魚はアンデルセン自身の投影というのが定説である<ref>{{Cite book|和書|author=浦山明俊|year=1999|title=絵本とは違いすぎる 原典アンデルセン|publisher=ぶんか社|page=93|isbn=4-8211-0676-0}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=安奈泉|year=1999|title=アンデルセン童話の呪い|publisher=大和出版|page=28|isbn=4-8047-6065-2}}</ref>。また、人魚は下半身が魚の形で、足を開けない。これは少女(=[[処女]])の暗喩とされることがある。人の姿になった人魚が歩くたびに足に痛みを感じるのは[[初体験 (性行為)|処女喪失]]を表す可能性がある<ref>{{Cite book|和書|author=須田諭一|year=2014|title=おとなになって読むアンデルセン|publisher=メトロポリタンプレス|page=14|isbn=978-4-904759-84-4}}</ref>。その他、この物語の最大の悲劇は、言葉を失った人魚姫が自らの存在の痕跡を語ることなく消えなければならない点にある、とする研究もある{{Sfn|福嶋|2009|p=92}}。
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=== 受けた影響 === |
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本作は、他の人魚文学と関連付けて考察されてきた︵中丸禎子は、下半身の形状問わず、水と関連する異類が登場する作品を﹁人魚文学﹂と呼んでいる︶。たとえばMonika Schmitz-Emans﹃Seetiefen und Seelentiefen.Literarische Spiegelungen innerer und äußerer Fremde.﹄、︵Würzburg:Königshausen & Neumann,2003︶、 小黒康正﹃水の女﹄(九州大学出版会, 2012)Andreas Kraß﹃Meerjungfrauen. Geschichten einer unmöglichen Liebe﹄︵Frankfurt am Main:Fischer, 2010︶などでは、本作を人魚文学の代表的作品として論じている{{Sfn|中丸|2017|p=39}}。
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本作は、他の人魚文学と関連付けて考察されてきた︵中丸禎子は、下半身の形状問わず、水と関連する異類が登場する作品を﹁人魚文学﹂と呼んでいる︶。たとえばMonika Schmitz-Emans﹃Seetiefen und Seelentiefen.Literarische Spiegelungen innerer und äußerer Fremde.﹄、︵Würzburg:Königshausen & Neumann,2003︶、 小黒康正﹃水の女﹄(九州大学出版会, 2012)Andreas Kraß﹃Meerjungfrauen. Geschichten einer unmöglichen Liebe﹄︵Frankfurt am Main:Fischer, 2010︶などでは、本作を人魚文学の代表的作品として論じている{{Sfn|中丸|2017|p=39}}。
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ただし、本作に先行し、また影響を与えたデンマークやドイツの人魚文学には、人魚姫が空気の精霊その他に転生するという内容は存在しない{{Sfn|中丸|2017|p=40}}。
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ただし、本作に先行し、また影響を与えたデンマークやドイツの人魚文学には、人魚姫が空気の精霊その他に転生するという内容は存在しない{{Sfn|中丸|2017|p=40}}。
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=== 与えた影響 === |
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ジナイーダ・ギッピウス︵1869 - 1945︶の﹃聖なる血﹄︵1901︶は、幼い[[ルサールカ]]が人間のみに与えられた﹁不死の魂﹂を獲得するために受洗を希求する、という内容を持つ<ref>{{Cite book|author=Catherine Schler|year=1995|chapter=Zinaida Gippius: An Unwitting and Unwilling Feminist|title=Theater and Feminist Aesthetics|editor=Karen Laughlin & Catherine Schler|location=London|publisher=Associated University Presses|language=英語|page=131-147}}</ref>。ギッピウスが本作を読んだという記録は残っていないが、19世紀末の時点でアンデルセンはロシアでもよく知られ、翻訳も存在した{{Sfn|草野|2015|p=90}}。﹃聖なる血﹄は、ギッピウスによる本作の引用と再構成であるという考察がなされている{{Sfn|草野|2015|87-88}}。
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ジナイーダ・ギッピウス︵1869 - 1945︶の﹃聖なる血﹄︵1901︶は、幼い[[ルサールカ]]が人間のみに与えられた﹁不死の魂﹂を獲得するために受洗を希求する、という内容を持つ<ref>{{Cite book|author=Catherine Schler|year=1995|chapter=Zinaida Gippius: An Unwitting and Unwilling Feminist|title=Theater and Feminist Aesthetics|editor=Karen Laughlin & Catherine Schler|location=London|publisher=Associated University Presses|language=英語|page=131-147}}</ref>。ギッピウスが本作を読んだという記録は残っていないが、19世紀末の時点でアンデルセンはロシアでもよく知られ、翻訳も存在した{{Sfn|草野|2015|p=90}}。﹃聖なる血﹄は、ギッピウスによる本作の引用と再構成であるという考察がなされている{{Sfn|草野|2015|87-88}}。
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== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
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*{{Cite journal|和書|author=中丸禎子|ref={{SfnRef|中丸|2017}}|title=バレエを踊る人魚姫―「爪先立ち」があらわす異界―|date=2017-03-16|publisher=お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター|journal=比較日本学教育研究センター研究年報|issue=13|pages=39-49}} |
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|year=2017|publisher=山口大学人文学部国語国文学会|journal=山口国文|issue=40|pages=29-41}} |
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==関連項目== |
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* [[ルサルカ (ドヴォルザーク)]] - [[アントニン・ドヴォルザーク]]のオペラ歌劇音楽作品。ロシアにいる水の[[精霊]]・[[ルサルカ]]が人間の王子に恋し、魔法で人間になる点などストーリーに類似点あり。 |
* [[ルサルカ (ドヴォルザーク)]] - [[アントニン・ドヴォルザーク]]のオペラ歌劇音楽作品。ロシアにいる水の[[精霊]]・[[ルサルカ]]が人間の王子に恋し、魔法で人間になる点などストーリーに類似点あり。 |
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2023年5月7日 (日) 00:43時点における版
人魚姫 Den lille Havfrue | ||
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Vilhelm Pedersen 画「人魚姫」 | ||
著者 | ハンス・クリスチャン・アンデルセン | |
発行日 | 1837年 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | デンマーク | |
ウィキポータル 文学 | ||
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人魚姫(にんぎょひめ、Den lille Havfrue)は、デンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセン作の童話である。1837年に発表された。
あらすじ
備考
受けた影響
与えた影響
人魚姫の像
派生作品
音楽
- 交響詩『人魚姫』(アレクサンダー・ツェムリンスキー作曲)
- 音楽物語『人魚』(1966年作曲、1968年改訂、鈴木静一作曲、ナレーション入りマンドリンオーケストラ)
- 『Mermaid Girl』(2010年、コナミ、beatmaniaIIDX 18 Resort Anthemの楽曲、Ryu☆作曲、ボーカルはCream puff)
- 『MerMaiD』(2010年、that作曲、作詞・ボーカルはみーちゃん)
- 『深海のリトルクライ』(2012年、sasakure.UK作曲、ボーカルは土岐麻子)
- 愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ - 章タイトル「人魚姫」として、モチーフが使われている。
- 『マーメイドラプソディー』 (SEKAI NO OWARI 2015年、作詞:Saori、作曲:Nakajin、編曲:SEKAI NO OWARI、CHRYSANTHEMUM BRIDGE)
- 『リトル・マーメイド~the First Love~』(2016年、GLAM GRAMM@R)
- 『人魚姫』(Flower「THIS IS Flower THIS IS BEST」2016年 作詞:小竹正人,作曲:FAST LANE・ERIK LIDBOM)
絵本
アニメ
- 『魔法のマコちゃん』(1971年、東映動画、テレビアニメ)
- 『アンデルセン物語』第31話~第33話(1971年、東映動画、テレビアニメ)
- 『東映まんがまつり アンデルセン童話 にんぎょ姫』(1975年、東映動画、アニメーション映画)
- 『リトル・マーメイド』(1989年、ディズニー、アニメーション映画)
- 『人魚姫 マリーナの冒険』(1991年、テレビアニメ)
- 『世界名作童話シリーズ ワ〜ォ!メルヘン王国』第24話「人魚姫」(1995年、東映動画、テレビアニメ)
- 『雪の女王 〜THE SNOW QUEEN〜』第24話「月夜の人魚姫」(2005年、出崎統、テレビアニメ)
- 『バブル』(2022年、WIT STUDIO、アニメーション映画)
舞台
実写映画
- 『アンデルセン物語』 - 1952年のアメリカ映画。劇中で人魚姫のバレエ・シーンがある。
- 『人魚姫』(Malá mořská víla) - 1976年のチェコスロバキア映画。カレル・カヒーニャ監督。
- 『スプラッシュ』(1984年、人魚姫の物語を現代風にアレンジしたブエナビスタ製作のアメリカ映画)
- 『リトル・マーメイド』(2023年公開予定、『リトル・マーメイド』を実写映画化した2023年公開予定のアメリカ合衆国の映画。)
テレビドラマ
- 『フェアリーテール・シアター』 (1987年、同タイトルで同ドラマの1エピソードとしてアメリカ合衆国で映像化・テレビ放送された。)
- 『青い海の伝説』(Legend of the Blue Sea)-ジュン・ジヒョンとイ・ミンホ主演の2016-2017年の韓国のテレビシリーズ
小説
施設
脚注
参考文献
関連項目
- ルサルカ (ドヴォルザーク) - アントニン・ドヴォルザークのオペラ歌劇音楽作品。ロシアにいる水の精霊・ルサルカが人間の王子に恋し、魔法で人間になる点などストーリーに類似点あり。
外部リンク
- 『人魚のひいさま』:新字新仮名 - 青空文庫(楠山正雄訳)
- 『人魚の姫』:新字新仮名 - 青空文庫(矢崎源九郎訳)