「地獄 (キリスト教)」の版間の差分
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'''地獄'''(じごく、{{lang-en|hell}})では[[キリスト教]]における[[地獄]]について詳述する。 |
'''地獄'''(じごく、{{lang-en|hell}})では[[キリスト教]]における[[地獄]]について詳述する。 |
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[[旧約聖書]]や[[新約聖書]]まで、地獄に関する内容が数十箇所に現れる。[[ギリシャ語]][[聖書]]の記事中に、「地獄」と訳されることがある語彙は、「'''[[ゲヘナ|ゲヘンナ]]'''」({{lang|el|γεεννα}}、[[現代ギリシャ語]]ではゲエンナ)と「'''[[ハデス|ハデース]]'''」({{lang|el|ᾍδης}}、現代ギリシャ語ではアディス)の2種類がある。[[欽定訳聖書]]([[英語]])においては"hell"がいずれに対しても訳語として用いられていて訳し分けられていない。[[日本語訳聖書]]においては、この2種類はギリシャ語原文に従って訳し分けられる傾向がある。 |
[[旧約聖書]]や[[新約聖書]]まで、地獄に関する内容が数十箇所に現れる。[[ギリシャ語]][[聖書]]の記事中に、﹁地獄﹂と訳されることがある語彙は、﹁'''[[ゲヘナ|ゲヘンナ]]'''﹂︵{{lang|el|γεεννα}}、[[現代ギリシャ語]]ではゲエンナ︶と﹁'''[[ハデス (キリスト教)|ハデース]]'''﹂︵{{lang|el|ᾍδης}}、現代ギリシャ語ではアディス︶の2種類がある。[[欽定訳聖書]]︵[[英語]]︶においては "{{lang|en|hell}}" がいずれに対しても訳語として用いられていて訳し分けられていない。[[日本語訳聖書]]においては、この2種類はギリシャ語原文に従って訳し分けられる傾向がある。
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最終的な永遠の地獄(ゲヘナ)と、不信仰な死者が最後の審判を待つ黄泉(ハデス)は区別されている。 |
最終的な永遠の地獄(ゲヘナ)と、不信仰な死者が最後の審判を待つ黄泉(ハデス)は区別されている。 |
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== 語義・訳語 == |
== 語義・訳語 == |
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=== ギリシャ語における二つの語彙の概念差 === |
=== ギリシャ語における二つの語彙の概念差 === |
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[[ギリシャ語]]においては、[[英語]]で"hell"と訳される語彙として、{{lang|el|γέεννα}}([[古典ギリシャ語]][[再建]]音:'''ゲヘンナ'''、[[現代ギリシャ語]]転写:'''ゲエンナ''')と、{{lang|el|ᾍδης}}([[古典ギリシャ語]][[再建]]音:'''ハデース'''、[[現代ギリシャ語]]転写:'''アディス''')の二つの語彙があり、両語彙とも[[旧約聖書]]・[[新約聖書]]に使われている<ref name="seishodai">『旧約新約聖書大事典』540頁、1261頁 - 1262頁 [[教文館]] ISBN 9784764240063</ref>。 |
[[ギリシャ語]]においては、[[英語]]で "{{lang|en|hell}}" と訳される語彙として、{{lang|el|γέεννα}}([[古典ギリシャ語]][[再建]]音:'''ゲヘンナ'''、[[現代ギリシャ語]]転写:'''ゲエンナ''')と、{{lang|el|ᾍδης}}([[古典ギリシャ語]][[再建]]音:'''ハデース'''、[[現代ギリシャ語]]転写:'''アディス''')の二つの語彙があり、両語彙とも[[旧約聖書]]・[[新約聖書]]に使われている<ref name="seishodai">『旧約新約聖書大事典』540頁、1261頁 - 1262頁 [[教文館]] ISBN 9784764240063</ref>。 |
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[[File:Valley of Hinom PA180090.JPG|right|thumb|200px|"地獄": [[ゲヘナ]]の語源となった「ヒンノムの谷」(2007年撮影)]] |
[[File:Valley of Hinom PA180090.JPG|right|thumb|200px|"地獄": [[ゲヘナ]]の語源となった「ヒンノムの谷」(2007年撮影)]] |
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[[ゲヘナ|ゲヘンナ]]は原語では「ヒンノムの谷」の意である。この谷では[[アハズ]]王の時代に[[モレク|モロク]]神に捧げる火祭に際して幼児犠牲が行われたこと、[[ヨシヤ]]王の改革で谷が汚されたことがあり、町の汚物の捨て場とされた。このような経緯から、新約聖書ではゲヘンナは「来世の刑罰の場所」として考えられるようになった<ref name="daijiten383">『キリスト教大事典 改訂新版』383頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版</ref>。一方、[[ハデス|ハデース]]はギリシャ語の「姿なく、おそろしい」の意から派生したもので、ヘブライ語の'''[[シェオル]]'''に当たる。古代の神話では死者の影が住む地下の王国とされた<ref name="IA187" />。 |
[[ゲヘナ|ゲヘンナ]]は原語では﹁ヒンノムの谷﹂の意である。この谷では[[アハズ]]王の時代に[[モレク|モロク]]神に捧げる火祭に際して幼児犠牲が行われたこと、[[ヨシヤ]]王の改革で谷が汚されたことがあり、町の汚物の捨て場とされた。このような経緯から、新約聖書ではゲヘンナは﹁来世の刑罰の場所﹂として考えられるようになった<ref name="daijiten383">﹃キリスト教大事典 改訂新版﹄383頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版</ref>。一方、[[ハデス (キリスト教)|ハデース]]はギリシャ語の﹁姿なく、おそろしい﹂の意から派生したもので、ヘブライ語の'''[[シェオル]]'''に当たる。古代の神話では死者の影が住む地下の王国とされた<ref name="IA187" />。
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[[キリスト教]]内でも地獄に対する捉え方が[[キリスト教諸教派の一覧|教派]]・神学傾向などによって異なり、ゲヘンナとハデースの間には厳然とした区別があるとする見解と<ref name="seishodai" />、区別は見出すもののそれほど大きな違いとは捉えない見解<ref name="maka526" />など、両概念について様々な捉え方がある。 |
[[キリスト教]]内でも地獄に対する捉え方が[[キリスト教諸教派の一覧|教派]]・神学傾向などによって異なり、ゲヘンナとハデースの間には厳然とした区別があるとする見解と<ref name="seishodai" />、区別は見出すもののそれほど大きな違いとは捉えない見解<ref name="maka526" />など、両概念について様々な捉え方がある。 |
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ギリシャ語から他言語に翻訳するにあたりこの二つの語彙をどのように処理するかについて、二つの語彙を当てて訳し分けるか、それとも同じ語彙を当てるか、いずれかの方策が各種各言語翻訳によって採られる事となっている。 |
ギリシャ語から他言語に翻訳するにあたりこの二つの語彙をどのように処理するかについて、二つの語彙を当てて訳し分けるか、それとも同じ語彙を当てるか、いずれかの方策が各種各言語翻訳によって採られる事となっている。 |
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[[カトリック教会]]で広く使われた[[ヴルガータ]]版[[ラテン語]]聖書では、{{lang|el|Γέεννα}}に{{lang|la|gĕhenna}}を、{{lang|el|ᾍδης}}に{{lang|la|Infernum}}を当てている<ref>[http://la.wikisource.org/wiki/Biblia_Sacra_Vulgata_(Stuttgartensia)/Matthaeus Biblia Sacra Vulgata (Stuttgartensia)/Matthaeus]</ref>。[[スラヴ]]系の[[正教会]]で広く使われる[[教会スラヴ語]]訳聖書では、{{lang|el|Γέεννα}}に{{lang| |
[[カトリック教会]]で広く使われた[[ヴルガータ]]版[[ラテン語]]聖書では、{{lang|el|Γέεννα}} に {{lang|la|gĕhenna}} を、{{lang|el|ᾍδης}} に {{lang|la|Infernum}} を当てている<ref>[http://la.wikisource.org/wiki/Biblia_Sacra_Vulgata_(Stuttgartensia)/Matthaeus Biblia Sacra Vulgata (Stuttgartensia)/Matthaeus]</ref>。[[スラヴ]]系の[[正教会]]で広く使われる[[教会スラヴ語]]訳聖書では、{{lang|el|Γέεννα}} に {{lang|cu|Геенна}} を、{{lang|el|ᾍδης}} に {{lang|cu|Адъ}} を当てている<ref>[http://www.lib.ru/HRISTIAN/BIBLIYA/new/mat.pdf {{lang|slv|Евангелие от Матфея}}] (PDF)</ref><ref>[http://www.slavdict.narod.ru/_0867.htm {{lang|cu|Полный церковнославянский словарь}}]</ref>。
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しかしながら、[[英語]]訳である[[欽定訳聖書]]ではこのような訳し分けがなされず、いずれも"hell"と訳されている。英語の |
しかしながら、[[英語]]訳である[[欽定訳聖書]]ではこのような訳し分けがなされず、いずれも "{{lang|en|hell}}" と訳されている。英語の "{{lang|en|hell}}" の語はかつてギリシャ語のハデス、ヘブライ語のシェオルに対応していたが、17世紀以降にゲヘナをあらわす意味に変化した<ref>[[J.I.パッカー]]﹃私たちの信仰告白 使徒信条﹄[[いのちのことば社]]p.69</ref>。
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=== 日本語訳聖書における訳し分け === |
=== 日本語訳聖書における訳し分け === |
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| style="width:14%; text-align:center; background-color:#ddf" | <small>'''[[大正改訳聖書]]'''</small> |
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| style="width:14%; text-align:center; background-color:#ddf" | <small>'''[[口語訳聖書]]'''</small> |
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| style="width:14%; text-align:center; background-color:#ddf" | <small>'''[[新改訳聖書]]'''</small> |
| style="width:14%; text-align:center; background-color:#ddf" | <small>'''[[新改訳聖書]]'''</small> |
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| style="width:14%; text-align:center; background-color:#ddf" | <small>'''[[新共同訳聖書]]'''</small> |
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[[旧約聖書]]においても[[新約聖書]]においても、地獄について記された箇所がある。 |
[[旧約聖書]]においても[[新約聖書]]においても、地獄について記された箇所がある。 |
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新約聖書において地獄に言及される箇所として以下が挙げられる。[[口語訳聖書]]からの引用文は斜体としてある。 |
新約聖書において地獄に言及される箇所として以下が挙げられる。[[聖書 口語訳|口語訳聖書]]からの引用文は斜体としてある。 |
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*ゲヘンナ(地獄、ゲエンナ) |
*ゲヘンナ(地獄、ゲエンナ) |
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**[[マタイによる福音書]] 5:22﹁''兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。''﹂
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**[[マタイによる福音書]] 5:22﹁''兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。''﹂
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[[パウロ]]は、イエス・キリストが再臨したとき、神を信じない者、イエスの教えに従わない者が、かぎりなき永遠の刑罰を受けると記している。 |
[[パウロ]]は、イエス・キリストが再臨したとき、神を信じない者、イエスの教えに従わない者が、かぎりなき永遠の刑罰を受けると記している。 |
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*[[テサロニケの信徒への手紙二|第二テサロニケ]]1:7-1:9 ﹁''それは、主イエスが炎の中で力ある天使たちを率いて天から現れる時に実現する。その時、主は神を認めない者たちや、わたしたちの主イエスの福音に聞き従わない者たちに報復し、そして、彼らは主のみ顔とその力の栄光から退けられて、永遠の滅びに至る刑罰を受けるであろう。''﹂︵[[口語訳聖書]]︶
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*[[テサロニケの信徒への手紙二|第二テサロニケ]]1:7-1:9 ﹁''それは、主イエスが炎の中で力ある天使たちを率いて天から現れる時に実現する。その時、主は神を認めない者たちや、わたしたちの主イエスの福音に聞き従わない者たちに報復し、そして、彼らは主のみ顔とその力の栄光から退けられて、永遠の滅びに至る刑罰を受けるであろう。''﹂︵[[聖書 口語訳|口語訳聖書]]︶
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黙示録には以下の記述がある。 |
黙示録には以下の記述がある。 |
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概念[編集]
キリスト教での地獄は一般的に、死後の刑罰の場所または状態[1]、霊魂が神の怒りに服する場所[2]とされる。 他方、地獄を霊魂の死後の状態に限定せず、愛する事が出来ない苦悩・神の光に浴する事が出来ない苦悩という霊魂の状態を指すとし、この世においても適用出来る概念として地獄を理解する見解が正教会にある。この見解はドストエフスキーの﹃カラマーゾフの兄弟﹄に登場するゾシマ長老の台詞にもみえる。地獄を死後の場所に限定せず、霊魂の状態として捉える理解は、楽園が霊魂の福楽であると捉える理解と対になっている[3]。語義・訳語[編集]
ギリシャ語における二つの語彙の概念差[編集]
ギリシャ語においては、英語で "hell" と訳される語彙として、γέεννα︵古典ギリシャ語再建音‥ゲヘンナ、現代ギリシャ語転写‥ゲエンナ︶と、ᾍδης︵古典ギリシャ語再建音‥ハデース、現代ギリシャ語転写‥アディス︶の二つの語彙があり、両語彙とも旧約聖書・新約聖書に使われている[4]。各言語における訳し分け[編集]
ギリシャ語から他言語に翻訳するにあたりこの二つの語彙をどのように処理するかについて、二つの語彙を当てて訳し分けるか、それとも同じ語彙を当てるか、いずれかの方策が各種各言語翻訳によって採られる事となっている。 カトリック教会で広く使われたヴルガータ版ラテン語聖書では、Γέεννα に gĕhenna を、ᾍδης に Infernum を当てている[6]。スラヴ系の正教会で広く使われる教会スラヴ語訳聖書では、Γέεννα に Геенна を、ᾍδης に Адъ を当てている[7][8]。 しかしながら、英語訳である欽定訳聖書ではこのような訳し分けがなされず、いずれも "hell" と訳されている。英語の "hell" の語はかつてギリシャ語のハデス、ヘブライ語のシェオルに対応していたが、17世紀以降にゲヘナをあらわす意味に変化した[9]。日本語訳聖書における訳し分け[編集]
日本語訳聖書においては、ギリシャ語における両語彙を訳し分けるものと訳し分けていないものとがあるが、近年のものは訳し分ける傾向にある。日本正教会訳聖書は漢字では訳し分けていないが、ルビを振ることで読みを変えて訳し分けを行っている。 以下の対照表における聖書の並びは、左から翻訳が古い順としてある。以下の対照表に挙げた箇所以外にも、多数の箇所に﹁地獄﹂﹁陰府﹂が出て来る。日本語訳聖書における訳し分け対照表 | |||||||
ギリシャ語 | 聖書箇所 | 日本正教会訳聖書 | ラゲ訳聖書 | 大正改訳聖書 | 口語訳聖書 | 新改訳聖書 | 新共同訳聖書 |
γέεννα | マタイ 5:22 |
地獄 (ルビ:「ゲエンナ」) |
地獄 | ゲヘナ | 地獄 | ゲヘナ | 地獄 |
マタイ 18:9 |
地獄 (ルビ:「ゲエンナ」) |
地獄 | ゲヘナ | 地獄 | ゲヘナ | 地獄 | |
マルコ 18:9 |
地獄 (ルビ:「ゲエンナ」) |
地獄 | ゲヘナ | 地獄 | ゲヘナ | 地獄 | |
ルカ 12:5 |
地獄 (ルビ:「ゲエンナ」) |
地獄 | ゲヘナ | 地獄 | ゲヘナ | 地獄 | |
ᾍδης | マタイ 11:23 |
地獄 (ルビ:「ぢごく」) |
地獄 | 黄泉 | 黄泉 | ハデス | 陰府 |
ルカ 16:23 |
地獄 (ルビ:「ぢごく」) |
地獄 | 黄泉 | 黄泉 | ハデス | 陰府 | |
使徒行伝 2:31 |
地獄 (ルビ:「ぢごく」) |
冥府 | 黄泉 | 黄泉 | ハデス | 陰府 | |
黙示録 1:18 |
地獄 (ルビ:「ぢごく」) |
地獄 | 陰府 | 黄泉 | ハデス | 陰府 | |
黙示録 20:13 |
地獄 (ルビ:「ぢごく」) |
冥府 | 陰府 | 黄泉 | ハデス | 陰府 |
聖書箇所[編集]
西方教会[編集]
アタナシオス信条で永遠の地獄を告白している。カトリック教会[編集]
プロテスタント[編集]
ルーテル教会[編集]
アウクスブルク信仰告白で永遠の地獄を確認している。第17条﹁審判のためキリストが再び来り給うことについて﹂で、﹁不敬虔な者や悪魔には限りない苦悩を宣告し給うであろう。﹂と告白する[18]。改革派教会[編集]
改革派信仰の長老派教会では、永遠の地獄を強く主張し、伝統的に永遠の地獄の存在を認めてきた。ハイデルベルク信仰問答、ドルト信仰基準、ウェストミンスター信仰告白でも、この立場が確認されている。 ウェストミンスター信仰告白32章﹁人間の死後の状態について、また死人の復活について﹂で死後どうなるか告白する。悪人の霊魂は死後、大いなる日のさばきまで、﹁苦悩と徹底的暗黒のうちにありつづける。﹂ また、正しくない者のからだは、イエス・キリストが再臨してから、﹁キリストの力によって恥辱によみがえらせられる。﹂33章﹁最後の審判について﹂で、神がこの日を定めた目的について告白する。﹁邪悪で不従順な捨てられた者の永遠の刑罰において神の正義の栄光が表されるためである。﹂﹁神を知らずイエス・キリストの福音に服さない悪人は、永遠の苦悩に投げ込まれ、主のみ前とみ力の栄光とからの永遠の破滅をもって罰せられるからである。﹂[19] 霊と肉体の結合の解体が死である[20]。不信者は死後にハデスで苦しみながら最後の裁きを待つ[21]。イエス・キリストが再臨したとき、不信者は神に裁かれるために復活し[22]、永遠の滅びを宣告される[23]。不信者はよみがえった体で、意識をもったまま、永遠に苦しむ[24]。 新生していない者が落ちる地獄について解説し、キリストを信じてこの神の怒りから、迫り来る滅びから、逃れるようにと説教した、ジョナサン・エドワーズの﹃怒れる神の御手の中にある罪人﹄が有名。 マーティン・ロイドジョンズは、山上の垂訓にあらわれる﹁にせ預言者﹂の特徴の一つに、永遠の刑罰の否定をあげている[25]。 プロテスタント正統主義の歴史的な信仰告白において、罪ゆえにすでに有罪宣告を受けている不信者は、よみで苦しみながらイエス・キリストの再臨を待っているが、恥辱に復活し、恥辱の体と魂が結び付けられ、キリストによる最後の裁きの後、彼ら不信者が永遠の地獄で苦しみを受けると告白している[26][27][28]。 根拠とされる聖書箇所は以下の通りである。 ●マタイ 5:22 ﹁また、﹃ばか者。﹄と言うような者は燃えるゲヘナに投げ込まれます。﹂︵新改訳聖書︶ ●マルコ 9:48 ﹁地獄では蛆が尽きることも、火が消えることもない。﹂︵新共同訳聖書︶ パウロは、イエス・キリストが再臨したとき、神を信じない者、イエスの教えに従わない者が、かぎりなき永遠の刑罰を受けると記している。 ●第二テサロニケ1:7-1:9 ﹁それは、主イエスが炎の中で力ある天使たちを率いて天から現れる時に実現する。その時、主は神を認めない者たちや、わたしたちの主イエスの福音に聞き従わない者たちに報復し、そして、彼らは主のみ顔とその力の栄光から退けられて、永遠の滅びに至る刑罰を受けるであろう。﹂︵口語訳聖書︶ 黙示録には以下の記述がある。 ●黙示録 20:10 ﹁そして、彼らを惑わした悪魔は火と硫黄との池に投げ込まれた。そこは獣も、にせ預言者もいる所で、彼らは永遠に昼も夜も苦しみを受ける。﹂︵新改訳聖書︶ ●黙示録 20:15 ﹁いのちの書に名のしるされていない者はみな、この火の池に投げ込まれた。﹂︵新改訳聖書︶ ●黙示録 21:8 ﹁しかし、おくびょうな者、信じない者、忌むべき者、人殺し、姦淫を行う者、まじないをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者には、火と硫黄の燃えている池が、彼らの受くべき報いである。これが第二の死である﹄。﹂︵新改訳聖書︶ 他教派においても永遠の地獄は否定されてはいないが、プロテスタント正統主義とはニュアンスの差がある︵他教派の項目参照︶。東方教会[編集]
正教会[編集]
概要[編集]
正教会において、自分自身を省みない人々、悪人・罪人が行くところとして、地獄︵ゲエンナ・ぢごく︶があるとされる。それについて言及される聖書箇所として正教要理に挙げられているのは以下の通りである[29]。 ●マトフェイ 5:22、13:50、22:13、マルコ 9:44、ルカ 8:31、16:23、ペトル前書 3:19、フィリップ書 2:10[29]ただし、正教会において地獄とは、﹁自ら神を拒絶する状態﹂であり、神が人間を虐待する場所のようにはとらえない[30]。 これら罪人のために、信者・残された家族はその人が赦され救われるように祈り、聖体礼儀に参加し、神の教えに従って善行を積み重ねるように教えられる。正教要理に示されている聖書箇所は以下の通りである[29]。
地獄は永遠か・全てが救われるのか[編集]
地獄のイメージ[編集]
ダンテが﹃神曲﹄で描いた地獄のイメージや、ミケランジェロによって描かれた﹃最後の審判﹄のイメージは正教会では受け入れられていない[3]。 府主教イラリオン・アルフェエフによれば、人が神から離れたことを実感する苦悩のシンボルとして﹁火﹂﹁寒冷﹂﹁渇き﹂﹁白熱の火炉﹂﹁焦熱の湖﹂などがあるが、西欧中世文学が創作した形象は物質的で粗野なものであり、永遠の苦悩の概念が歪められてしまったとされる。また掌院ソフロニイは、ハリストス︵キリスト︶は愛であること、最後の審判においてさえ神は人を愛し続けると述べている。ミケランジェロのフレスコ画﹃最後の審判﹄に示された神の怒り・裁き・侮辱・決闘応諾等のスコラ的教えは、正教的理解と相容れる点が少ないとされる[3]。霊魂消滅説・絶滅説[編集]
万人救済説[編集]
永遠の地獄の存在を否定し、万人が天国に行くと主張するグループもある。宗教多元主義のジョン・ヒックやジョン・A・T・ロビンソンは万人救済説を唱えた[36][37]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- Heaven and Hell - スタンフォード哲学百科事典「天国と地獄」の項目。