「秘境冒険小説」を編集中
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'''ロストワールドもの'''({{Lang-en-short|Lost World}})は、[[ファンタジー]]または[[サイエンス・フィクション]]のジャンルの1つで、時間的・場所的に隔絶された新たな世界を発見することをプロット上の要とする。[[ヴィクトリア朝]]後期の[[騎士道物語]]のサブジャンルとして始まり、今も人気が続いている。 |
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このジャンルが生まれたのは、エジプトの[[王家の谷]]の多数の墓、半ば神話と思われていた[[イリオス|トロイ]]の要塞、ジャングルに囲まれた[[マヤ文明|マヤ]]のピラミッド、[[アッシリア|アッシリア帝国]]の都市など、世界中で失われた文明の魅力的な名残が発見されていた時代である。したがって、ヴィクトリア朝の冒険家が考古学的発見をしたという現実の物語が大衆の想像力を捕らえることに成功した。[[1871年]]から第一次世界大戦までの間に、様々な大陸を舞台にしたロストワールドものの出版数は劇的に増加した<ref>{{Cite journal|first=Bradley|last=Deane|year=2008|title=Imperial barbarians: primitive masculinity in Lost World fiction|journal=Victorian Literature and Culture|issue=36|pages=pp. 205-225|publisher=Cambridge University Press|doi=10.1017/S1060150308080121|url=http://journals.cambridge.org/production/action/cjoGetFulltext?fulltextid=1689316}}</ref>。似たようなテーマとして、[[エル・ドラード]]のような「伝説の王国」もある。 |
このジャンルが生まれたのは、エジプトの[[王家の谷]]の多数の墓、半ば神話と思われていた[[イリオス|トロイ]]の要塞、ジャングルに囲まれた[[マヤ文明|マヤ]]のピラミッド、[[アッシリア|アッシリア帝国]]の都市など、世界中で失われた文明の魅力的な名残が発見されていた時代である。したがって、ヴィクトリア朝の冒険家が考古学的発見をしたという現実の物語が大衆の想像力を捕らえることに成功した。[[1871年]]から第一次世界大戦までの間に、様々な大陸を舞台にしたロストワールドものの出版数は劇的に増加した<ref>{{Cite journal|first=Bradley|last=Deane|year=2008|title=Imperial barbarians: primitive masculinity in Lost World fiction|journal=Victorian Literature and Culture|issue=36|pages=pp. 205-225|publisher=Cambridge University Press|doi=10.1017/S1060150308080121|url=http://journals.cambridge.org/production/action/cjoGetFulltext?fulltextid=1689316}}</ref>。似たようなテーマとして、[[エル・ドラード]]のような「伝説の王国」もある。 |
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19世紀イギリスでは、[[スエズ運河]]の開通や、[[アルプス山脈]]の[[フレジュス鉄道トンネル|モン・スニー・トンネル]]開通などの交通網の発達により観光の人気が高まり、また[[デイヴィッド・リヴィングストン|リヴィングストン]]によるアフリカ大陸探検や、[[フェルディナント・フォン・リヒトホーフェン|リヒトホーフェン]]の中国地質調査といった地理学上の発見、北極・南極探検などへの関心が、[[ロンドン万国博覧会 (1851年)|ロンドン万国博]](1851年)の影響もあって高まりつつあった<ref name=kitakami1>[[北上次郎]]『冒険小説論』早川書房、1993年(「大観光の時代」)</ref>。その中で人気を集めた[[ロバート・ルイス・スティーヴンスン|L.R.スティーヴンソン]]『[[宝島]]』(1883年)に影響を受けて、[[ヘンリー・ライダー・ハガード]]が書いたアフリカ奥地を舞台にした冒険小説『ソロモン王の洞窟』(1885年) が、秘境冒険小説の起源とされることがある<ref>Robert E. Morsberger (1993), "Afterword", in The Reader's Digest, ''King Solomon's Mines''</ref>。ハガードは続いて、同じアラン・クォーターメンを主人公とするシリーズや、中央アフリカで不死の女王に出会う『洞窟の女王』などを発表した。 |
19世紀イギリスでは、[[スエズ運河]]の開通や、[[アルプス山脈]]の[[フレジュス鉄道トンネル|モン・スニー・トンネル]]開通などの交通網の発達により観光の人気が高まり、また[[デイヴィッド・リヴィングストン|リヴィングストン]]によるアフリカ大陸探検や、[[フェルディナント・フォン・リヒトホーフェン|リヒトホーフェン]]の中国地質調査といった地理学上の発見、北極・南極探検などへの関心が、[[ロンドン万国博覧会 (1851年)|ロンドン万国博]](1851年)の影響もあって高まりつつあった<ref name=kitakami1>[[北上次郎]]『冒険小説論』早川書房、1993年(「大観光の時代」)</ref>。その中で人気を集めた[[ロバート・ルイス・スティーヴンスン|L.R.スティーヴンソン]]『[[宝島]]』(1883年)に影響を受けて、[[ヘンリー・ライダー・ハガード]]が書いたアフリカ奥地を舞台にした冒険小説『ソロモン王の洞窟』(1885年) が、秘境冒険小説の起源とされることがある<ref>Robert E. Morsberger (1993), "Afterword", in The Reader's Digest, ''King Solomon's Mines''</ref>。ハガードは続いて、同じアラン・クォーターメンを主人公とするシリーズや、中央アフリカで不死の女王に出会う『洞窟の女王』などを発表した。 |
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フランスでは[[ジュール・ベルヌ]]﹃[[気球に乗って五週間]]﹄(1863年)や、﹃[[地底旅行]]﹄(1864年)など科学の可能性を強調した冒険小説に人気があった<ref>[[北上次郎]]﹃冒険小説論﹄早川書房、1993年︵﹁科学の冒険﹂ |
フランスでは[[ジュール・ベルヌ]]﹃[[気球に乗って五週間]]﹄(1863年)や、﹃[[地底旅行]]﹄(1864年)など科学の可能性を強調した冒険小説に人気があった<ref>[[北上次郎]]﹃冒険小説論﹄早川書房、1993年︵﹁科学の冒険﹂︶</ref>。ドイツでは[[カール・マイ]]が1876年から近東、南米、北米、東洋などを舞台にした異国趣味溢れる冒険小説を数多く書いて、国民作家と呼ばれるほどの人気となった<ref name=kitakami1/>。
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[[File:Page 59 (The Lost World. 1912).jpg|thumb|right|『失われた世界』([[1912年]]) の挿絵]] |
[[File:Page 59 (The Lost World. 1912).jpg|thumb|right|『失われた世界』([[1912年]]) の挿絵]] |
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[[古生物学]]への興味から書かれた[[コナン・ドイル]]『[[失われた世界]]』(1912年)は、南米の奥地に恐竜の生き残りがいるというアイデアの秘境冒険ものであり、以後この種の作品は「ロスト・ワールド」ものと呼ばれるようになった<ref>[[石上三登志]]「『キング・コング』学入門」([[エドガー・ウォーレス]]&[[メリアン・C・クーパー]]『キング・コング』創元推理文庫、2005年)</ref>。ドイルはハガードを意識して[[歴史小説]]を書いたが、二人とも「イギリスの[[騎士道]]精神を基調にしている」ことで共通していた<ref>大久保康雄「解説」(H.R.ハガード『ソロモン王の洞窟』創元推理文庫、1972年)</ref>。またこの後、[[エドガー・ライス・バローズ]]の『[[時間に忘れられた国]]』(1918年)や、[[エイブラハム・メリット]]の『ムーン・プール』(1918年)なども書かれた。『失われた世界』は1915年に映画化もされ、1933年には南洋の孤島を舞台にした映画『[[キング・コング]]』も公開された。 |
[[古生物学]]への興味から書かれた[[コナン・ドイル]]﹃[[失われた世界]]﹄(1912年)は、南米の奥地に恐竜の生き残りがいるというアイデアの秘境冒険ものであり、以後この種の作品は﹁ロスト・ワールド﹂ものと呼ばれるようになった<ref>[[石上三登志]]﹁﹃キング・コング﹄学入門﹂︵[[エドガー・ウォーレス]]&[[メリアン・C・クーパー]]﹃キング・コング﹄創元推理文庫、2005年︶</ref>。ドイルはハガードとを意識して[[歴史小説]]を書いたが、二人とも﹁イギリスの[[騎士道]]精神を基調にしている﹂ことで共通していた<ref>大久保康雄﹁解説﹂︵H.R.ハガード﹃ソロモン王の洞窟﹄創元推理文庫、1972年︶</ref>。またこの後、[[エドガー・ライス・バローズ]]の﹃[[時間に忘れられた国]]﹄(1918年)や、[[エイブラハム・メリット]]の﹃ムーン・プール﹄(1918年)なども書かれた。﹃失われた世界﹄は1915年に映画化もされ、1933年には南洋の孤島を舞台にした映画﹃[[キング・コング]]﹄も公開された。
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ベルヌの『[[海底二万里]]』(1870年)や、続いて発表された[[:en:Ignatius L. Donnelly|イグナチウス・ドネリー]]『[[:en:Atlantis: The Antediluvian World|アトランティス-大洪水以前の世界]]』(1882年)、[[ヘレナ・P・ブラヴァツキー]]『秘密教義』(1888年)により、[[アトランティス]]、[[ムー大陸|ムー]]、[[レムリア]]など古代の[[伝説上の大陸|失われた大陸]]への関心が高まり、1885年から1930年にかけてアトランティス小説と呼べるような作品が多数刊行された<ref name=tatsumi/>。 |
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[[File:Moon Pool 1st.jpg|thumb|180px|『ムーン・プール』表紙]] |
[[File:Moon Pool 1st.jpg|thumb|180px|『ムーン・プール』表紙]] |
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[[地球空洞説]]については、地球内部の理想郷を描く、{{仮リンク|ジョン・クリーブス・シムズ|en|John Cleves Symmes, Jr.}}の『シムゾニア・ある発見航海』(1823年)があり、こちらがロストワールドものの起源とされることもある<ref>{{Cite book|title=The Lost Worlds Romance: From Dawn Till Dusk |last=Becker |first=Allienne R. |authorlink= |year=1992 |publisher=Greenwood Press |location=Westport, CT |isbn=0-313-26123-7 }}</ref>。[[エドガー・アラン・ポー]]『[[ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語]]』(1838年) は、海洋での様々な冒険ののちに地球内に向かう穴の存在を示唆しており、これがベルヌ『地底旅行』や、バローズ「[[ペルシダー・シリーズ]]」(1922-63年)にも影響を与えた<ref>[[巽孝之]]「解説」([[ルーディ・ラッカー]]『空洞地球』ハヤカワ文庫、1991年)</ref>。 |
[[地球空洞説]]については、地球内部の理想郷を描く、{{仮リンク|ジョン・クリーブス・シムズ|en|John Cleves Symmes, Jr.}}の『シムゾニア・ある発見航海』(1823年)があり、こちらがロストワールドものの起源とされることもある<ref>{{Cite book|title=The Lost Worlds Romance: From Dawn Till Dusk |last=Becker |first=Allienne R. |authorlink= |year=1992 |publisher=Greenwood Press |location=Westport, CT |isbn=0-313-26123-7 }}</ref>。[[エドガー・アラン・ポー]]『[[ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語]]』(1838年) は、海洋での様々な冒険ののちに地球内に向かう穴の存在を示唆しており、これがベルヌ『地底旅行』や、バローズ「[[ペルシダー・シリーズ]]」(1922-63年)にも影響を与えた<ref>[[巽孝之]]「解説」([[ルーディ・ラッカー]]『空洞地球』ハヤカワ文庫、1991年)</ref>。 |
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17世紀以降は[[シノワズリー|シノワズリー(支那趣味)]]、[[エジプト学|エジプトロジー(エジプト学)]]が流行しており、1790年に[[:en:James Bruce|ジェイムズ・ブルース]]の冒険紀行『ナイル川の水源を見い出す旅。1768-73』が[[コールリッジ]]『クーブラ・カーン』やポーに影響を与えたとされる。またこの頃[[ロゼッタ・ストーン]]の発見、解読があったことも、エジプトをはじめとする文明の起源の探求、オリエンタリズムが文芸のテーマとされるようになった。<ref>[[高山宏]]「十九世紀とロースト・ワールド幻想」(『幻想文学 第8号』)</ref> |
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恐竜が地上のどこかに生き残っているというアイデアは、19世紀初めの恐竜の化石発掘熱や、19世紀中頃にアメリカの[[ゴールドラッシュ]]とともに起きた、[[バーナム・ブラウン]]が﹃屋根裏の恐竜たち﹄で﹁大いなる恐竜ゴールドラッシュ﹂と呼んだ地層発掘熱とともに、[[チャールズ・ダーウィン]]﹃[[ビーグル号航海記]]﹄(1839,45年)の﹁[[ガラパゴス諸島|ガラパゴス群島]]﹂の章で、ここに生息する[[爬虫類]]にかつて[[中生代]]に存在した巨大な生物を重ね合わせていることとの関連の指摘もあり、また[[レイ・ブラッドベリ]]の短編小説﹁霧笛﹂(1951年)︵1953年﹃[[原子怪獣現わる]]﹄として映画化︶のように、現代の人間世界に恐竜が現れるという作品にも受け継がれている<ref name=tatsumi>巽孝之﹃恐竜のアメリカ﹄筑摩書房、1997年︵第2章 巨大妄想︶</ref>。
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[[File:'Journey to the Center of the Earth' by Édouard Riou 02.jpg|thumb|200px|『地底旅行』挿絵]] |
[[File:'Journey to the Center of the Earth' by Édouard Riou 02.jpg|thumb|200px|『地底旅行』挿絵]] |
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===日本の作品=== |
===日本の作品=== |
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日本では[[明治時代]]以降の[[南進論]]の影響により、[[矢野龍渓]]『浮城物語』(1890年)や、[[押川春浪]]の[[インド洋]]や[[シベリア]]が舞台として登場する『[[海底軍艦]]』(1900年)などの冒険小説が書かれた<ref name=kitakami3>[[北上次郎]]『冒険小説論』早川書房、1993年(「海のロマン」)</ref><ref>[[横田順彌]]「解説」([[山田正紀]]『崑崙遊撃隊』角川文庫、1978年)</ref>。また明治後半には、[[福島安正|福島中佐]]のシベリア単騎横断や、[[郡司成忠|郡司大尉]]の千島渡航、[[河口慧海]]のチベット旅行、[[白瀬矗|白瀬中尉]]の南極探検などの、現実の冒険が「日本人の異域に対するロマンティシズムをかきたてた」<ref>[[會津信吾]]「解説」(山田正紀『魔境物語』徳間文庫、1987年)</ref>。 |
日本では[[明治時代]]以降の[[南進論]]の影響により、[[矢野龍渓]]『浮城物語』(1890年)や、[[押川春浪]]の[[インド洋]]や[[シベリア]]が舞台として登場する『[[海底軍艦]]』(1900年)などの冒険小説が書かれた<ref name=kitakami3>[[北上次郎]]『冒険小説論』早川書房、1993年(「海のロマン」)</ref><ref>[[横田順彌]]「解説」([[山田正紀]]『崑崙遊撃隊』角川文庫、1978年)</ref>。また明治後半には、[[福島安正|福島中佐]]のシベリア単騎横断や、[[郡司成忠|郡司大尉]]の千島渡航、[[河口慧海]]のチベット旅行、[[白瀬矗|白瀬中尉]]の南極探検などの、現実の冒険が「日本人の異域に対するロマンティシズムをかきたてた」<ref>[[會津信吾]]「解説」(山田正紀『魔境物語』徳間文庫、1987年)</ref>。 |
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春浪の影響による[[渋江保|羽化僊史]]『新海底旅行』(1905年)や、[[江見水蔭]]『少年探検隊』なども書かれ、押川春浪の創刊した『[[冒険世界]]』などで秘境冒険小説は興隆するが、春浪が1914年に死去し、[[第一次世界大戦]]を契機とした科学技術の向上や[[大正デモクラシー]]の影響で、春浪のような武断的な冒険小説の読者は減少していく<ref>横田順彌(『SFファンタジア3 異世界編』)</ref>。 |
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1923年に、ボルネオ島で地底人の秘宝を求める探検を描いた[[国枝史郎]]『沙漠の古都』が書かれる<ref name=neikan>『日本幻想作家名鑑』幻想文学会出版局、1991年</ref>。また[[橘外男]]『怪人シプリアノ』(1937年)、続いて雑誌『[[新青年 (日本)|新青年]]』で、1939年に[[久生十蘭]]『地底獣国』、[[小栗虫太郎]]の『有尾人』をはじめ折竹孫七を主人公とする「[[人外魔境]]」シリーズの連作が発表された。 |
1923年に、ボルネオ島で地底人の秘宝を求める探検を描いた[[国枝史郎]]『沙漠の古都』が書かれる<ref name=neikan>『日本幻想作家名鑑』幻想文学会出版局、1991年</ref>。また[[橘外男]]『怪人シプリアノ』(1937年)、続いて雑誌『[[新青年 (日本)|新青年]]』で、1939年に[[久生十蘭]]『地底獣国』、[[小栗虫太郎]]の『有尾人』をはじめ折竹孫七を主人公とする「[[人外魔境]]」シリーズの連作が発表された。 |
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また[[蒙古]]から[[南アメリカ]]まで続く地帝国を描いた[[蘭郁二郎]]『地底大陸』(1938年)や、[[高橋鉄]]の世界神秘郷シリーズなども書かれている。 |
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戦後になってからは、[[香山滋]]が『オラン・ペンデクの復讐』(1947)や、『エル・ドラドオ』(1948年)、『ソロモンの桃』(1948)などの人見十吉シリーズなど多くの秘境探検小説を執筆<ref>[[日下三蔵]]「解説」(『怪奇探偵小説傑作選10 香山滋』ちくま文庫、2003年)</ref>。 |
戦後になってからは、[[香山滋]]が『オラン・ペンデクの復讐』(1947)や、『エル・ドラドオ』(1948年)、『ソロモンの桃』(1948)などの人見十吉シリーズなど多くの秘境探検小説を執筆<ref>[[日下三蔵]]「解説」(『怪奇探偵小説傑作選10 香山滋』ちくま文庫、2003年)</ref>。渡辺啓助『二十世紀の怪異』(1963年)は秘境冒険小説風の推理小説集<ref name=neikan/>。[[黒沼健]]は『秘境物語』(1957年)などの秘境ものノンフィクションで人気を博した。 |
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少年向け作品としても、[[南洋一郎]]『吼える密林』(1932年)、『海洋冒険物語』(1935年)や、[[山川惣治]]の[[絵物語]]『[[少年ケニヤ]]』(1951年)などが人気となった。 |
少年向け作品としても、[[南洋一郎]]『吼える密林』(1932年)、『海洋冒険物語』(1935年)や、[[山川惣治]]の[[絵物語]]『[[少年ケニヤ]]』(1951年)などが人気となった。 |
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[[ジェイムズ・ブリッシュ]]﹃暗黒大陸の怪異﹄(1962年)では、[[コンゴ]]奥地で鉱物の違法採掘を行う部落の探索で恐竜が現れる。[[:en:Donald G. Payne|イアン・キャメロン]]﹃謎の類人猿を求めて﹄(1972年)では、[[アンデス山脈|アンデス]]山中で不死人や恐竜の住む古代都市に潜入する。
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[[ジェイムズ・ブリッシュ]]﹃暗黒大陸の怪異﹄(1962年)では、[[コンゴ]]奥地で鉱物の違法採掘を行う部落の探索で恐竜が現れる。[[:en:Donald G. Payne|イアン・キャメロン]]﹃謎の類人猿を求めて﹄(1972年)では、[[アンデス山脈|アンデス]]山中で不死人や恐竜の住む古代都市に潜入する。
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[[マイケル・クライトン]]は、『[[失われた黄金都市]]』(1980年) でこのジャンルを復活させた。コンゴの奥地にある失われたジャングル文明ジンジの古代都市、そしてそこに眠る[[ソロモン|ソロモン王]]の財宝を探す物語である。 |
[[マイケル・クライトン]]は、﹃[[失われた黄金都市]]﹄(1980年) でこのジャンルを復活させた。コンゴの奥地にある失われたジャングル文明ジンジの古代都市、そしてそこに眠る[[ソロモン|ソロモン王]]の財宝を探す物語である。1990年代になると{{仮リンク|ジェームズ・ガーニー|en|James Gurney}}が﹁ダイノトピア﹂と呼ばれる地図にない島を舞台にしたジュブナイル小説シリーズを出版している。その島では人類と恐竜が共存している。[[ルーディ・ラッカー]]﹃空洞地球﹄(1990年)では、﹃ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語﹄の設定から、地球内部のもう一つの地球を探検する。
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1990年代になると{{仮リンク|ジェームズ・ガーニー|en|James Gurney}}が「ダイノトピア」と呼ばれる地図にない島を舞台にしたジュブナイル小説シリーズを出版している。その島では人類と恐竜が共存している。[[ルーディ・ラッカー]]『空洞地球』(1990年)では、『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』の設定から、地球内部のもう一つの地球を探検する。[[ジェームズ・ロリンズ]]『地底世界 サブテラニアン』(1999年)は南極の地底世界の冒険を描いている。 |
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日本では、[[山田正紀]]による﹃崑崙遊撃隊﹄(1976年)では[[ゴビ砂漠]]で[[サーベルタイガー]]の住む幻の村にたどり着く。﹃ツングース特命隊﹄(1985年)ではシベリア奥地での大爆発を調査に向かい恐竜の住む洞窟世界にたどり着く。﹃魔境密命隊﹄(1985年)では[[イラン・イラク戦争]]の謀略作戦中に古代生物の住む地底世界に迷い込む。[[田中光二]]﹃ロストワールド2﹄(1980年)は、ドイル﹃失われた世界﹄のチャレンジャー教授一行が[[インカ帝国|古代インカ]]の幻の都市を探索 |
日本では、[[山田正紀]]による﹃崑崙遊撃隊﹄(1976年)では[[ゴビ砂漠]]で[[サーベルタイガー]]の住む幻の村にたどり着く。﹃ツングース特命隊﹄(1985年)ではシベリア奥地での大爆発を調査に向かい恐竜の住む洞窟世界にたどり着く。﹃魔境密命隊﹄(1985年)では[[イラン・イラク戦争]]の謀略作戦中に古代生物の住む地底世界に迷い込む。[[田中光二]]﹃ロストワールド2﹄(1980年)は、ドイル﹃失われた世界﹄のチャレンジャー教授一行が[[インカ帝国|古代インカ]]の幻の都市を探索する。[[今日泊亜蘭]]﹁怪獣大陸﹂(1978年)は南極探検隊が恐竜に遭遇する。[[菊地秀行]]﹃エイリアン魔獣境﹄(1983年)はアマゾン奥地の幻の王国で次々に奇妙な敵と対峙する。[[栗本薫]]﹃[[魔境遊撃隊]]﹄(1984年)では、謎の遺跡の残る南洋の孤島を探検する。[[川又千秋]]は、南洋の未知の島々を舞台にした﹃海神の逆襲﹄(1979年)や、﹃赤道の魔界﹄(1980年)、﹃幻獣の密使﹄(1981年)などを書き、これら現代における秘境冒険小説について[[笠井潔]]は、地図にない国々をSF的手法で描き出すことで﹁喪われた﹁秘境﹂を再発見し、さらに19世紀的な秘境冒険小説のなかに私たちが見出す近代のというこの時代への﹁息苦しさ﹂からの解放感を、再現し、追体験すべきもの﹂と評した<ref>[[笠井潔]]﹁解説﹂︵川又千秋﹃海神の逆襲﹄徳間文庫、1983年︶</ref>。[[横田順彌]]﹃人外魔境の秘密﹄(1991年)は押川春浪を主人公に、ドイル﹃失われた世界﹄の舞台を探検する。[[芦辺拓]]﹃地底獣国の殺人﹄(1997年)では[[トルコ]]の[[アララト山]]が冒険の舞台となっている。
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ロストワールドものは小説以外にも存在する。テレビゲームでは『[[トゥームレイダー]]』とその続編が有名である。映画では「[[インディ・ジョーンズ シリーズ]]」のコンセプトがロストワールドものに近い。 |
ロストワールドものは小説以外にも存在する。テレビゲームでは『[[トゥームレイダー]]』とその続編が有名である。映画では「[[インディ・ジョーンズ シリーズ]]」のコンセプトがロストワールドものに近い。 |
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==参考文献== |
==参考文献== |
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*[[小松左京]]、[[石川喬司]]監修『SFファンタジア3 異世界編』[[学習研究社]]、1978年([[石上三登志]]、[[横田順彌]]「SF秘境冒険物語」) |
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*『[[幻想文学 (雑誌)|幻想文学]] 第8号』幻想文学会出版局、1984年9月(特集 ロストワールド文学館) |
*『[[幻想文学 (雑誌)|幻想文学]] 第8号』幻想文学会出版局、1984年9月(特集 ロストワールド文学館) |
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*[[東雅夫]]編『恐竜文学大全』河出文庫、1998年 |
*[[東雅夫]]編『恐竜文学大全』河出文庫、1998年 |
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{{サイエンス・フィクション}} |
{{サイエンス・フィクション}} |
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{{DEFAULTSORT:ろすとわあるともの}} |
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[[Category:ファンタジーのジャンル]] |
[[Category:ファンタジーのジャンル]] |
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[[Category:SFのジャンル]] |
[[Category:SFのジャンル]] |