谷中安規

谷中安規︵たになかやすのり、1897年(明治30年)1月18日 - 1946年(昭和21年)9月9日︶は、昭和時代前期の日本の版画家・挿絵画家。通称︿アンキ﹀とも言われる。

生涯

奈良県桜井市の生まれ。6歳で母と死別、1904年(明治37年)父と朝鮮に渡る。単身帰国し、東京の豊山中学に通うが学資が続かず中退、以後放浪生活を続ける。永瀬義郎著︽版画を作る人︾から影響を受け、その書籍をもとに独学で木版画製作を始める｡その後、1924年第一書房に勤め､社主の長谷川巳之吉に画才を認めらる^[1]その頃長谷川から日夏耿之介、堀口大學、佐藤春夫。与謝野晶子らを紹介される^[2^]1926年日夏耿之介の紹介で永瀬義郎指導下に木版画家を目指す^[^3]。 1931年に日本版画協会の結成に参加する。1936年、挿絵倶楽部︵後の日本挿絵画家協会︶が結成されるとその会員にか推薦される^[4]。版画誌﹁白と黒﹂﹁版芸術﹂同人となり、内田百閒・佐藤春夫^[5]らの作品の挿絵や装丁も手掛け、若い時から転居を繰り返していたが空襲が激しくなる頃から消息を絶ち、滝野川区中里の焼け跡で罹災生活を送っていたところに百閒が自分の安否を気遣っていることを新聞で知り、百閒宅を訪問したのが1946年2月のことである^[6]。その7ヶ月後、誰にも看取られることなくバラックにて栄養失調で餓死した。享年49歳。 2014年10月4日町田市立国際版画美術館﹁鬼才の画人谷中安規展　―1930年代の夢と現実^[7]﹂､2015年11月21日兵庫県立美術館﹁奇想の版画家谷中安規展^[8]﹂等､各地で展覧会が開催されている。

内田百閒著谷中安規画﹃王様の背中狸の勘違ひ﹄1934年(昭和9年)^[9]

作風

1929年︵昭和4年︶頃、谷中が東京漫画新聞社を訪れて﹃月刊マンガ・マン﹄の編集助手をしていた画家の吉田貫三郎に﹁シャムあたりにある寺の壁の彫刻のような人物の頭の中から手足が出ていたり、胴のあたりから頭が出ていたりしている﹂奇怪な絵を見せたので、吉田はアメリカのナンセンス漫画が流行していた時勢に合わないと考え、独断で谷中の採用を見送ったという^[10]。挿絵画家としては幻想的で、南洋を思わせるエキゾティックなモチーフや都会の情景を影絵のようにとらえた作品が特色。