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'''鷹野 つぎ'''(たかの つぎ、女性、[[1890年]]([[明治]]23年)[[8月15日]] - [[1943年]]([[昭和]]18年)[[3月19日]])は、[[大正]]・[[昭和]]時代の小説家。本名は'''次'''(読み同じ)、旧姓は'''岸'''。 |
'''鷹野 つぎ'''(たかの つぎ、女性、[[1890年]]([[明治]]23年)[[8月15日]] - [[1943年]]([[昭和]]18年)[[3月19日]])は、[[大正]]・[[昭和]]時代の[[小説家]]。本名は'''次'''(読み同じ)、旧姓は'''岸'''。 |
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== 生涯 == |
== 生涯 == |
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[[1890年]]([[明治]]23年)[[8月15日]]、[[静岡県]][[浜名郡]] |
[[1890年]]([[明治]]23年)[[8月15日]]、[[静岡県]][[浜名郡]]浜松町下垂19番地(現・[[浜松市]][[中央区 (浜松市)|中央区]]尾張町)にて、父・岸彌助と母・なをの間に、次女として生れる。家は燈油などを売る、中流の商家であった。長兄の信太郎、次兄の梅三郎、姉の重がおり、後に三女の留子、四女のたか、五女の艶子が生れた。祖父は有徳と号して俳句や歌を嗜み、祖母は[[浜松藩]]の殿中で姫に仕えていた人物であった<ref name="人と文学">後藤悦良「鷹野つぎ 人と文学」(昭和56年、浜松市立高等学校同窓会)</ref>。 |
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[[1897年]](明治30年)、[[浜松市立元城小学校|浜松町立尋常高等小学校]]に入学<ref name="人と文学" />。つぎは幼い時から手帳へ鉛筆で絵を描くことが好きで、小学校へ上ってからは、短い作文の下書きを幾通りも書いていたが、「そのうちに先生には見せないで、虫のことや雨ふりのことや、おつかひに行くのがいやな日のことを、書いてみたりするやうになつた」という<ref name="娘と時代">鷹野つぎ「娘と時代」(昭和19年、三国書房)</ref>。 |
[[1897年]](明治30年)、[[浜松市立元城小学校|浜松町立尋常高等小学校]]に入学<ref name="人と文学" />。つぎは幼い時から手帳へ鉛筆で絵を描くことが好きで、小学校へ上ってからは、短い作文の下書きを幾通りも書いていたが、「そのうちに先生には見せないで、虫のことや雨ふりのことや、おつかひに行くのがいやな日のことを、書いてみたりするやうになつた」という<ref name="娘と時代">鷹野つぎ「娘と時代」(昭和19年、三国書房)</ref>。 |
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この頃からつぎは「どういふものか紙とペンに愛着をもつてゐた」が、「父は、長兄が矢張り手帳にコツコツとなにか書いたりしてゐるのを見てゐたので、私がそれに似てきはしまいかとひどく心配するやうすであつた。おとなしい姉は、父の心を察して、私が自分の机の前にとぢこもつて、わけのわからぬ文字を紙にかきつけたりしてゐると、そばへきて、『つうちやん、そんなことをやめて、床屋へ行つて顔でも剃つてもらつておいでつせいな。』とすすめた。」と、後年書き記している。また、雑誌『少年』に単文を投書して掲載されたこともあり、この雑誌に談話会というものが各地で催されているとの記述を見て、友人たちと少女談話会を開いたりもしていた<ref name="娘と時代" />。 |
この頃からつぎは「どういふものか紙とペンに愛着をもつてゐた」が、「父は、長兄が矢張り手帳にコツコツとなにか書いたりしてゐるのを見てゐたので、私がそれに似てきはしまいかとひどく心配するやうすであつた。おとなしい姉は、父の心を察して、私が自分の机の前にとぢこもつて、わけのわからぬ文字を紙にかきつけたりしてゐると、そばへきて、『つうちやん、そんなことをやめて、床屋へ行つて顔でも剃つてもらつておいでつせいな。』とすすめた。」と、後年書き記している。また、雑誌『少年』に単文を投書して掲載されたこともあり、この雑誌に談話会というものが各地で催されているとの記述を見て、友人たちと少女談話会を開いたりもしていた<ref name="娘と時代" />。 |
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[[1906年]](明治39年)頃からは、友人と共に、[[島崎藤村]]の「若菜集」「落梅集」、[[与謝野晶子]]の「みだれ髪」「恋ごろも」、更に様々な歌集、詩集、雑誌で[[国木田独歩]]、[[田山花袋]]、[[徳田秋声]]などの小説を読んでいた。「私はその一方、自分でも歌をよんだり、新体詩をつくつたり、小説風のものを書いたり、感想めいたものをしるしたりしたが、どれもこれもほんのもの真似であつた。」と記している。また、文芸部部員として『校友』の編集を時折手伝っていた関係から、高田教諭に短歌を作ることを勧められ、「新派よりの歌」を作る。後につぎは、次のように回想している。「いまから考へてみると、私の女学生時代はなんと忙しかつたものかと、をかしく思ひ返されてくる。学校のことはもちろんだが、放課後高田先生についてなにかと学ぶ。田邊校長先生にはいろいろの古典の講義をきく。琴や、茶の湯の師匠さんのところへ通ふ。教会に行く、その教会の牧師夫人について英語を習ふ。いろいろの小説本を濫読する。時には歌をよんだり、新体詩をつくつたり、小説風のものも真似ごとに書く。それからバイオリンまで習つてゐる。」<ref name="娘と時代" /> |
[[1906年]]︵明治39年︶頃からは、友人と共に、[[島崎藤村]]の﹁[[若菜集]]﹂﹁落梅集﹂、[[与謝野晶子]]の﹁[[みだれ髪]]﹂﹁恋ごろも﹂、更に様々な歌集、詩集、雑誌で[[国木田独歩]]、[[田山花袋]]、[[徳田秋声]]などの小説を読んでいた。﹁私はその一方、自分でも歌をよんだり、[[新体詩]]をつくつたり、小説風のものを書いたり、感想めいたものをしるしたりしたが、どれもこれもほんのもの真似であつた。﹂と記している。また、文芸部部員として﹃校友﹄の編集を時折手伝っていた関係から、高田教諭に短歌を作ることを勧められ、﹁新派よりの歌﹂を作る。後につぎは、次のように回想している。﹁いまから考へてみると、私の女学生時代はなんと忙しかつたものかと、をかしく思ひ返されてくる。学校のことはもちろんだが、放課後高田先生についてなにかと学ぶ。田邊校長先生にはいろいろの古典の講義をきく。琴や、茶の湯の師匠さんのところへ通ふ。教会に行く、その教会の牧師夫人について英語を習ふ。いろいろの小説本を濫読する。時には歌をよんだり、[[新体詩]]をつくつたり、小説風のものも真似ごとに書く。それからバイオリンまで習つてゐる。﹂<ref name="娘と時代" />
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[[1907年]](明治40年)3月、女学校を卒業。続いて[[静岡県立静岡城北高等学校|静岡高等女学校]]へ入学するが、[[トラホーム]]のためにその夏には帰省し、そのまま退学した。その後は家で本を読み、裁縫や生花を習うなどした。雑誌へ作品を投稿して、賞を得ることなどもしている<ref name="人と文学" />。 |
[[1907年]](明治40年)3月、女学校を卒業。続いて[[静岡県立静岡城北高等学校|静岡高等女学校]]へ入学するが、[[トラホーム]]のためにその夏には帰省し、そのまま退学した。その後は家で本を読み、裁縫や生花を習うなどした。雑誌へ作品を投稿して、賞を得ることなどもしている<ref name="人と文学" />。 |
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[[1913年]]([[大正]]2年)6月、次男・次彌(つぐや)が生れる。9月、彌三郎と共に文芸愛好会「一隅会」を結成。[[1914年]](大正3年)1月から10月に掛けて、同人文芸誌「一隅」を発行し、毎月作品を載せた<ref name="人と文学" />。 |
[[1913年]]([[大正]]2年)6月、次男・次彌(つぐや)が生れる。9月、彌三郎と共に文芸愛好会「一隅会」を結成。[[1914年]](大正3年)1月から10月に掛けて、同人文芸誌「一隅」を発行し、毎月作品を載せた<ref name="人と文学" />。 |
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[[1914年]](大正3年)9月に彌三郎は名古屋新聞社を辞し、すぐに知己の世話で[[東京報知新聞]]へと移る。同年11月からは12月に社命により[[福島]]に滞在し、翌年4月1日からは福島支局勤務となった<ref name="人と文学" />。 |
[[1914年]](大正3年)9月に彌三郎は名古屋新聞社を辞し、すぐに知己の世話で[[東京報知新聞]]へと移る。同年11月からは12月に社命により[[福島市|福島]]に滞在し、翌年4月1日からは福島支局勤務となった<ref name="人と文学" />。 |
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[[1915年]](大正4年)12月19日、長女・參彌子(みやこ)が生れる。しかし翌年2月9日、[[脚気|小児脚気]]により2ヶ月にも満たず死去。つぎにとって初の子供の死であり、最終的には8人産んだ子供の内、6人までを失うこととなり<ref name="人と文学" />、それらの経験を『子供と母の領分』に収録された随筆などに書き残した。 |
[[1915年]](大正4年)12月19日、長女・參彌子(みやこ)が生れる。しかし翌年2月9日、[[脚気|小児脚気]]により2ヶ月にも満たず死去。つぎにとって初の子供の死であり、最終的には8人産んだ子供の内、6人までを失うこととなり<ref name="人と文学" />、それらの経験を『子供と母の領分』に収録された随筆などに書き残した。 |
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[[1926年]](大正15年)7月30日、長男・正彌が死去(15歳)。11月15日、四男・眞彌(まさや、死去した長男と同音)が生れる<ref name="人と文学" />。 |
[[1926年]](大正15年)7月30日、長男・正彌が死去(15歳)。11月15日、四男・眞彌(まさや、死去した長男と同音)が生れる<ref name="人と文学" />。 |
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[[1929年]]([[昭和]]4年)4月28日、五男・節彌が生れる<ref name="人と文学" />。 |
[[1929年]]([[昭和]]4年)4月28日、五男・節彌が生れるが、[[1932年]](昭和7年)6月23日、医療事故で失う(4歳)<ref name="人と文学" />。 |
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[[1932年]](昭和7年)6月23日、五男・節彌を医療事故で失う(4歳)<ref name="人と文学" />。 |
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[[1935年]](昭和10年)4月17日、1月に[[結核]]を発病していた三女・彌譽榮を亡くす(15歳)。5月につぎもまた結核に掛かる(大正13年に一度掛かっており、再発した)。10月、感想集『子供と母の領分』(古今書院)が刊行される。 |
[[1935年]](昭和10年)4月17日、1月に[[結核]]を発病していた三女・彌譽榮を亡くす(15歳)。5月につぎもまた結核に掛かる(大正13年に一度掛かっており、再発した)。10月、感想集『子供と母の領分』(古今書院)が刊行される。 |
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[[1936年]](昭和11年)5月、[[東京市]]立のサナトリウムに、時を同じくして発病した三男・三彌と共に入院。10月には[[中野区]][[江古田]]の浄風園へと移ったが、翌年3月30日、三彌は死去<ref name="人と文学" />。つぎはその後、病状はこれ以上は良くも悪くもならないという膠着状態となり、[[1939年]](昭和14年)10月に退院。夫の住む[[中野区]][[沼袋]]へと移った<ref name="人と文学" />。 |
[[1936年]](昭和11年)5月、[[東京市]]立の[[サナトリウム]]に、時を同じくして発病した三男・三彌と共に入院。10月には[[中野区]][[江古田]]の浄風園へと移ったが、翌年3月30日、三彌は死去<ref name="人と文学" />。つぎはその後、病状はこれ以上は良くも悪くもならないという膠着状態となり、[[1939年]](昭和14年)10月に退院。夫の住む[[中野区]][[沼袋]]へと移った<ref name="人と文学" />。 |
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[[1940年]](昭和15年)4月、随筆集『幽明記』(古今書院)が刊行される。 |
[[1940年]](昭和15年)4月、随筆集『幽明記』(古今書院)が刊行される。 |
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== 著書 == |
== 著書 == |
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*「悲しき配分」(1922年、新潮社) |
*「悲しき配分」(1922年、新潮社) |
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*「真実の鞭」 |
*「真実の鞭」〈表現叢書・13〉(1923年、二松堂書店) |
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*「ある道化役」(1929年、紅玉堂出版) |
*「ある道化役」(1929年、紅玉堂出版) |
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*「子供と母の領分」(1935年、古今書院) |
*「子供と母の領分」(1935年、古今書院) |
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*「女性の首途」(1942年、古今書院) |
*「女性の首途」(1942年、古今書院) |
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*「限りなき美」(1943年、立誠社) |
*「限りなき美」(1943年、立誠社) |
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*「娘と時代」 |
*「娘と時代」〈女性叢書〉(1944年、三国書房) |
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*「太陽の花」(1944年、輝文館) |
*「太陽の花」(1944年、輝文館) |
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*「春夏秋冬」(1944年、山根書房) |
*「春夏秋冬」(1944年、山根書房) |
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*「'''鷹野つぎ著作集'''」全4巻(1979年、谷島屋) |
*「'''鷹野つぎ著作集'''」全4巻(1979年、谷島屋) |
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*「悲しき配分」 |
*「悲しき配分」〈叢書『青鞜』の女たち・第20巻〉(1986年、不二出版) - 1922年の新潮社版の復刻。 |
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* 大場ヤス子編「鷹野つぎ『短歌』」(2004年、大場ヤス子) |
* 大場ヤス子編「鷹野つぎ『短歌』」(2004年、大場ヤス子) |
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* {{青空文庫著作者|116}} |
* {{青空文庫著作者|116}} |
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{{Normdaten}} |
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{{DEFAULTSORT:たかの つき}} |
{{DEFAULTSORT:たかの つき}} |
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[[Category:20世紀の小説家]] |
[[Category:20世紀の小説家]] |
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[[Category:日本の小説家]] |
[[Category:日本の小説家]] |
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[[Category:日本の女性小説家]] |
[[Category:日本の女性小説家]] |
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[[Category:浜松市立高等学校出身の人物]] |
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[[Category:浜松市出身の人物]] |
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[[Category:1890年生]] |
[[Category:1890年生]] |
2024年6月16日 (日) 01:11時点における最新版
鷹野つぎ | |
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誕生 |
岸次 1890年8月15日 静岡県浜名郡浜松町 |
死没 |
1943年3月19日(52歳没) 東京府東京市中野区沼袋 |
職業 | 小説家 |
国籍 | 日本 |
最終学歴 | 浜松町立浜松高等女学校卒業 |
ジャンル | 小説、評論、短歌 |
配偶者 | 鷹野彌三郎 |
子供 | 正彌、次彌、三彌、眞彌、節彌、參彌子、三彌子、彌譽榮 |
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