ウィルソンループ
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ゲージ理論では、ウィルソンループ(Wilson loop)︵ケネス・ウィルソン(Kenneth G. Wilson)に因む︶は、ゲージ不変な観測量を与えられたループのゲージ接続のホロノミー(holonomy)から得る。古典論では、ウィルソンループの集まりは、ゲージ変換を同一視したゲージ接続を再構成する十分な情報を構成する[1]。
場の量子論では、ウィルソンループ観測量の定義は、フォック空間上の﹁善意の(bona fide)﹂作用素である。︵実際、ハーグの定理(Haag's theorem)は、フォック空間は相互作用のある QFT に対しては存在しないという定理がある。︶この定義は、数学的にはデリケートな問題であり、通常はフレーミングを持つ各々のループを備えた繰り込みが要求される。ウィルソン作用素の作用は、量子場の基本励起を作り出すことを解釈され、量子場はループへ局所化される。このようにして、マイケル・ファラデェー(Michael Faraday)の﹁フラックスチューブ﹂は量子電磁気場の基本励起となる。
ウィルソンループは、1970年代に量子色力学 (QCD) の非摂動的定式化の試み、少なくとも QCD の強い相互作用の領域を扱う一連の変数記法として導入された[2]。ウィルソンループは、クォークの閉じ込めの問題を解くことを意図し考案されたが、今日、未解決のままである。
強い相互作用を持つ量子場理論は、基本的な非摂動的励起をもっているという事実は、アレクサンダー・ポリヤコフ(Alexander Polyakov)により、最初の弦理論を定式化するために提唱された。これは時空での基本量子のループの伝播を記述している。
ウィルソンループはループ量子重力理論の定式化で重要な役割を果たすが、そこでは、スピンネットワークに取って変わられ︵後日、スピンフォアム(spinfoam)となった︶、ウィルソンループの一種の一般化となっている。
素粒子物理学と弦理論において、ウィルソンループ、特にコンパクト多様体の非可縮なループの周りのウィルソンループは、ウィルソンライン(Wilson lines)とよく言われる。
︵あるいは、ウィルソンループ(Wilson loop)変数のほうがよいが、︶、常に閉曲線として扱うので、Cに沿って動くゲージ場
の経路順序べき(path-ordered exponential)のトレースにより定義された次の量である。
ここに、
は空間内の閉曲線であり、
は経路順序(path-ordering)作用素である。ゲージ変換
,
であり、ここに
は、ループの単に起点と終点に対応する︵ラインの起点と終点のみが寄与することに対し、間にあるゲージ変換は互いにキャンセルする︶。たとえば、SU(2) ゲージに対し、
となる。
は
の任意の実函数であり、
は3つのパウリ行列(Pauli matrices)で、和は通常の繰り返しのインデックスを渡る和を意味する。
巡回置換(cyclic permutation)の下のトレースの不変性は、
がゲージ変換の下で不変であることを保証する。トレースを取る量は、ゲージリー群の元で、ロレースは実際、無限に多い既約表現の指標に関して、この元の指標であることに注意する。このことは、作用素
が﹁トレースクラス﹂︵従って、純粋離散スペクトル︶へ限定するべきではないが、一般には通常通りエルミート的︵数学的には自己随伴)である。詳しいは、最終的に観測している量はこのトレースであるので、どのループ上のどの点を起点とするかは問題ではない。それらの点はすべて同一の値を与える。
実際、Aを主 G-バンドル上の接続形式とみなすと、上の方程式は実際、リー群Gの元を与えるループを回る単位元の平行移動と理解すべきである。
経路順序べきは、物理で共通に使われる便利な記法であるが、数学的な作用素の公正な値を秘匿している。数学者は接続の順序べきを﹁接続のホロノミー﹂として選び、ウィルソンループが満たすべき平行移動の微分方程式として特徴付けるであろう。
T=0 では、クォークの閉じ込め、あるいはゲージ不変な量子場理論の閉じ込めを解くこと、すなわち、変数が値の増加する﹁領域﹂か、ループの﹁周り﹂で逆になるかに従って、ウィルソンループ変数が特徴付けられる︵﹁領域の中の法則﹂か﹁半径の法則﹂としても知られる﹁周囲の法則﹂となるか︶。
有限温度の QCD において、ウィルソンループの熱的期待値は、と閉じ込められたハドロン相と場の閉じ込めの解かれた状態、つまりクォークグルーオンプラズマとを識別する。
方程式[編集]
ウィルソンライン(Wilson line)変数参照項目[編集]
参考文献[編集]
- ^ Giles, R. (1981). “Reconstruction of Gauge Potentials from Wilson loops”. Physical Review D 24 (8): 2160. Bibcode: 1981PhRvD..24.2160G. doi:10.1103/PhysRevD.24.2160.
- ^ Wilson, K. (1974). “Confinement of quarks”. Physical Review D 10 (8): 2445. Bibcode: 1974PhRvD..10.2445W. doi:10.1103/PhysRevD.10.2445.