グラース家
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グラース家︵英:Glass family︶はアメリカの小説家、J・D・サリンジャーの連作物語に登場する一家である。グラス家とも表記される。
1948年1月31日に発表された短編﹁バナナフィッシュにうってつけの日﹂に長男シーモア・グラースが登場したのを皮切りに、作者の様々な作品に一家が登場するようになった。5男2女の大家族で、全員が幼少時代に﹃これは神童﹄︵It's a Wise Child︶というラジオのクイズ番組に出演しているという設定であり、高い知能と知名度を持つ。ウィットとエスプリに満ちた家族間の会話・手紙のやり取り等が特徴。
この一家の物語はサリンジャーのライフワークだったが、1965年に﹃ハプワース16、一九二四﹄を発表後、作品を一切発表しないまま隠遁生活ののち2010年に死去した。遺稿の整理を行っている息子のマット・サリンジャーによれば、サリンジャーは隠遁後も執筆を続けており、グラース家のエピソードも残されているという[1]。
家族構成[編集]
ベシー グラース家の母親。アイルランド系。﹁ゾーイー﹂で登場しゾーイーと会話を交わす。 レス グラース家の父親。ユダヤ系。作中では登場頻度が少なく深く書かれることはなかった。 シーモア 長男。グラース家の物語の中心をなす人物であり、どの家族も彼の影響を多分に受けている。﹁バナナフィッシュにうってつけの日﹂でグラース家の登場人物として初登場するが、結末で拳銃自殺する。 バディ 次男。作家であり、﹃大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア-序章-﹄﹁ゾーイー﹂はバディによって書かれたという形式で作品が叙述される。一家の視点人物。 ブーブー 長女。﹁小舟のほとりで﹂で登場時は結婚して﹁タンネンバウム﹂姓だった。 ウォルト 三男。ウェーカーとは双子。﹁コネティカットのひょこひょこおじさん﹂で登場人物の会話の中で間接的に初登場、第二次世界大戦後の日本占領時において不慮の事故︵ストーブの爆発︶で死亡した。 ウェーカー 四男。ウォルトの12分後に生まれた双子。作中ではほとんど名前のみで、ほとんど人となりは言及されない。 ゾーイー 五男。本名はザカリ。美貌の青年で俳優を仕事にしているが、劇作家やショービジネスに対して不満を持っている。﹁ゾーイー﹂では主人公となりフラニーと長い会話をする。 フラニー 次女。本名はフランシス。シーモアとは18歳年が離れている。﹁フラニー﹂で主人公として登場。グラース一家が登場する作品[編集]
●バナナフィッシュにうってつけの日 ●コネティカットのひょこひょこおじさん ●小舟のほとりで ●フラニーとゾーイー ●大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア-序章- ●ハプワース16、一九二四評価[編集]
﹃ライ麦畑でつかまえて﹄と並ぶサリンジャーの主要な著作群だが、特に後半の作品に対しては批判もある。ジョン・アップダイクはニューヨーク・タイムズ紙で﹃フラニーとゾーイー﹄の批評として、﹁グラス家の子供たちはあまりにも美しく知性的で、悟りを開いているし、サリンジャーは彼らを深く愛しすぎている﹂﹁彼らをあまりにも身内意識で愛しすぎている。彼らの作り話が彼には隠遁所になっている﹂と述べた[2]。注釈[編集]
- ^ サリンジャーの息子が父の遺稿を整理中、2019年2月4日、HON.jp
- ^ ケネス・スラウェンスキー『サリンジャー 生涯91年の真実』田中啓史訳、晶文社、504頁