シャーロック・ホームズの帰還
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﹃シャーロック・ホームズの帰還﹄︵シャーロック・ホームズのきかん、The Return of Sherlock Holmes︶は、イギリスの小説家、アーサー・コナン・ドイルによる短編集。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、五つの短編集のうち3番目に発行された作品である。1905年の発行で、イギリスの﹃ストランド・マガジン﹄1903年10月号から1904年12月号にかけて発表された13の短編を収録している[1]。
﹃ストランド・マガジン﹄連載時にはシドニー・パジェットが挿絵を担当した。
日本語版では、訳者により﹃シャーロック・ホームズの生還﹄﹃シャーロック・ホームズの復活﹄などの訳題も使用される。
ホームズの死と復活[編集]
ドイルは﹃ストランド・マガジン﹄1893年12月号に発表した﹁最後の事件﹂でシャーロック・ホームズをライヘンバッハの滝に葬り、シリーズを終了させた。﹁最後の事件﹂発表後、読者や出版社からはホームズを復活させるよう幾度となく要望がなされたが、ドイルにその意思はなかった。新鮮なプロットを追い求めるのにうんざりしていたこと、ホームズシリーズばかりが注目を集め、自身の他の分野の著作が埋もれてしまっていることなどから、これ以上シリーズを書き続けるのは間違いだと考えていたためである[2]。1896年のスピーチ[3]では、ホームズを殺したのは自己防衛のための殺人であり、もしホームズを殺していなかったらホームズのほうが自分を殺しただろう、と述べている[4]。 しかし、ホームズ復活の可能性は皆無というわけではなかった。1896年、ドイルは﹁競技場バザー﹂というシリーズの短いパロディを書く。1897年、ホームズを主役とする芝居の台本を書き、これは後にウィリアム・ジレットが台本を書き直して舞台化された。1898年には﹃ストランド・マガジン﹄に連載していた﹃炉辺物語﹄に含まれる短編﹁時計だらけの男﹂と﹁消えた臨時列車﹂の作中に、ホームズらしき人物を登場させている[5]。そして1901年、ドイルはホームズの登場する新作、長編﹃バスカヴィル家の犬﹄を﹃ストランド・マガジン﹄1901年8月号から1902年4月号にかけて連載した。事件の発生は﹁最後の事件﹂より前であり、ホームズが生き返ったわけではないが、再登場したホームズは以前と同様の優れた腕前を見せ、読者の変わらぬ支持を集めたのであった[4]。 1903年、依然としてホームズの復活を拒絶していたドイルに対し、アメリカのコリアーズ社がシリーズの1作につき4000ドル(2000年代においては約3000万円の価値)という破格の提案をする。ついにドイルはこの提案を受け入れ、新たに8編の物語を書くという契約を結んだ。ドイルは執筆を開始し、ホームズが死んでいなかったことが明かされる﹁空き家の冒険﹂をはじめとする8編が、同年9月までに完成する。そして、短編としては9年10ヶ月ぶりとなる﹃シャーロック・ホームズの帰還﹄の連載が、アメリカの﹃コリアーズ・ウィークリー﹄1903年9月26日号とイギリスの﹃ストランド・マガジン﹄1903年10月号にて開始されたのであった。1903年の秋、ドイルはボーター選挙区で推薦を受けて政治活動を行なったが、翌年になると執筆に戻り、4編を追加で書き上げた。 さらに、ドイルは連載の契約とは別に、サミュエル・シドニー・マックルーア[6]と執筆の約束をしていた。マックルーアは短編の新連載か中編を希望していて、12編の新連載に対しては75000ドルを提示した。しかし、プロットを使い切ったと考えていたドイルは、再びシリーズを終了させる作品として執筆することにした。こうしてホームズを引退させる短編﹁第二の汚点﹂が執筆されたが、ホームズの引退はその死ほどの関心は得られなかった。﹁第二の汚点﹂は契約の問題などから、最終的には13編目の連載作品として﹃コリアーズ・ウィークリー﹄と﹃ストランド・マガジン﹄で発表されることになった。﹃シャーロック・ホームズの帰還﹄は全13編の連載となり、1905年に単行本として発行された[4]。収録作品[編集]
タイトルは﹃ストランド・マガジン﹄に掲載されたもの。日本語版では訳者により様々な訳題が使用されている。括弧内は掲載号。
●The Adventure of the Empty House - 空き家の冒険︵1903年10月号︶
●The Adventure of the Norwood Builder - ノーウッドの建築業者︵1903年11月号︶
●The Adventure of the Dancing Men - 踊る人形︵1903年12月号︶
●The Adventure of the Solitary Cyclist - 孤独な自転車乗り︵1904年1月号︶
●The Adventure of the Priory School - プライオリ学校︵1904年2月号︶
●The Adventure of Black Peter - ブラック・ピーター︵1904年3月号︶
●The Adventure of Charles Augustus Milverton - 犯人は二人︵1904年4月号︶
●The Adventure of the Six Napoleons - 六つのナポレオン︵1904年5月号︶
●The Adventure of the Three Students - 三人の学生︵1904年6月号︶
●The Adventure of the Golden Pince-Nez - 金縁の鼻眼鏡︵1904年7月号︶
●The Adventure of the Missing Three-Quarter - スリークウォーター失踪︵1904年8月号︶
●The Adventure of the Abbey Grange - 僧坊荘園︵1904年9月号︶
●The Adventure of the Second Stain - 第二の汚点︵1904年12月号︶