出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リ ア ル タ イ ム P C R ︵ R e a l - t i m e P C R ︶ は 、 定 量 P C R ︵ Q - P C R ︶ の ひ と つ 。 ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 ( P C R ) に よ る 増 幅 を 経 時 的 ︵ リ ア ル タ イ ム ︶ に 測 定 す る こ と で 、 増 幅 率 に 基 づ い て 鋳 型 と な る D N A の 定 量 を 行 な う 。
こ の 定 量 は 蛍 光 色 素 を 用 い て 行 わ れ 、 イ ン タ ー カ レ ー シ ョ ン 法 と ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 、 L U X 法 が あ る 。 イ ン タ ー カ レ ー シ ョ ン 法 で は 、 二 本 鎖 D N A に 特 異 的 に 挿 入 ︵ イ ン タ ー カ レ ー ト ︶ し て 蛍 光 を 発 す る 色 素 ( S Y B R g r e e n I ) を 用 い る 。 一 方 で 、 ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 は T a q M a n プ ロ ー ブ 法 が 最 も 一 般 的 で あ り 、 D N A 配 列 に 特 異 的 な オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド に 蛍 光 色 素 を 結 合 さ せ た プ ロ ー ブ を 用 い る 方 法 で あ る 。
SYBR green法の利点は、プローブの設計や用意を必要としないため、プローブアッセーと比べ安価である。欠点としては、プライマー二量体のような非特異的な二本鎖DNAも検出してしまうこと、マルチプレックス解析が行えないことが挙げられる。
プライマー二量体が非特異的に検出されていないかを確認するためには、融解曲線分析を行う。
融解曲線分析ではPCR後に、反応液の温度を徐々に上昇させ、SYBR Green Iのシグナルを検出する。温度が低い時は、二本鎖形成をしているため、蛍光シグナルが検出されるが、徐々に温度が上昇し融解温度に達すると、解離し1本鎖になるため、蛍光シグナルが急激に低下する。通常、プライマー二量体がない場合、反応液内の二本鎖形成をしているのは1つの増幅産物であるため、融解曲線のピークは1つであるが、反応液内で、目的産物以外の増幅が起きていたり、プライマー二量体形成が認められる場合は、ピークが2つ以上認められる。このような場合には、増幅産物を泳動しバンドが1つであるか確認する必要がある。まれにバンドが1つにもかかわらず、融解曲線分析でピークが1つでないことがあるが、GC含量に偏りがあると、融解曲線分析時に解離がいっきに起きないことがあり、このような場合はあまり問題としなくて良い。
配 列 特 異 的 な オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド の 5 ' 末 端 に レ ポ ー タ ー 、 3 ' 末 端 に ク エ ン チ ャ ー を 標 識 し た プ ロ ー ブ を 用 い る 方 法 で あ る 。 R e a l t i m e P C R で は レ ポ ー タ ー の 蛍 光 物 質 を 検 出 す る こ と で 増 幅 を 確 認 す る 。 レ ポ ー タ ー に は F I T C や V I C を 用 い る こ と が 多 い 。 一 方 、 ク エ ン チ ャ ー は レ ポ ー タ ー の 蛍 光 を 蛍 光 共 鳴 エ ネ ル ギ ー 転 移 ︵ F R E T ︶ に よ り 消 光 さ せ る 標 識 物 で 、 従 来 は T A M A R A な ど の 蛍 光 物 が 用 い ら れ る こ と が 多 か っ た 。 こ の 場 合 、 レ ポ ー タ ー か ら 受 け 取 っ た エ ネ ル ギ ー を 光 と し て 放 出 し て い た が 、 最 近 は E c l i p s e や D A B C Y L 、 M G B な ど の エ ネ ル ギ ー を 熱 に 変 え る ダ ー ク ク エ ン チ ャ ー が 用 い ら れ る こ と が 多 い 。 後 者 の 利 点 と し て 、 バ ッ ク グ ラ ン ド が 低 い こ と が 挙 げ ら れ る 。 F R E T は ク エ ン チ ャ ー と レ ポ ー タ ー の 距 離 が 離 れ る と 起 こ ら な く な り 、 レ ポ ー タ ー か ら 蛍 光 が 発 せ ら れ る 。 P C R 反 応 が す す み 、 T a q D N A ポ リ メ ラ ー ゼ の 5 ' → 3 ' エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ 活 性 に よ り ハ イ ブ リ ダ イ ズ さ れ て い た T a q M a n プ ロ ー ブ が 加 水 分 解 さ れ る と レ ポ ー タ ー と ク エ ン チ ャ ー の 距 離 が 離 れ 、 蛍 光 シ グ ナ ル が 発 せ ら れ 、 こ れ を 検 出 す る こ と で P C R 産 物 量 を 定 量 す る こ と が 出 来 る 。
T a q M a n プ ロ ー ブ 法 の 利 点 は 、 特 異 的 な 配 列 を も つ 蛍 光 プ ロ ー ブ を 用 い る た め 、 S Y B R G r e e n 法 の よ う な プ ラ イ マ ー 二 量 体 の 非 特 異 的 な 検 出 が な い 点 で 特 異 度 に す ぐ れ る 。 ま た 、 複 数 の プ ロ ー ブ に 別 の 蛍 光 物 質 を 標 識 し て お け ば 、 マ ル チ プ レ ッ ク ス 解 析 を 行 う こ と も 可 能 で あ る 。 欠 点 と し て は 、 蛍 光 プ ロ ー ブ を 検 出 す る 配 列 ご と に 設 計 、 合 成 し な け れ ば な ら な い た め 、 S Y B R G r e e n 法 よ り も 費 用 と 手 間 が か か る こ と が 挙 げ ら れ る 。
リアルタイムPCR(real time PCR)は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (reverse transcription PCR; RT-PCR)と組み合わせて少量のmRNA の定量へ使われ、これにより特定の時間、細胞、組織での遺伝子の発現をみることができる。この組み合わせによる技法を"定量RT-PCR" (quantitative reverse transcription PCR) 法と呼ぶ。
リアルタイムの装置の中で逆転写反応を行うOne-step RT-qPCRとあらかじめ作成しておいたcDNAを用いてRT-qPCRを行うTwo-step RT-qPCRに大きく分けられる。前者はDNAの増幅で用いるものと同じプライマーを用いて逆転写反応を行う方法であり、感度、特異度が高く微量RNAの検出にすぐれる。また、チューブを移し替える回数が減るため、簡便でコンタミネーションの危険も少なくなる。
R e a l t i m e P C R で の 定 量 方 法 は 、 コ ピ ー 数 を 算 出 す る 絶 対 定 量 法 と 相 対 値 で 発 現 を 調 べ る 相 対 定 量 法 に 分 け ら れ る 。
絶 対 定 量 法 と は 、 あ ら か じ め 濃 度 の 分 か っ て い る 目 的 産 物 の D N A を 段 階 希 釈 し 、 希 釈 系 列 を 用 い て R e a l t i m e P C R を 行 い 検 量 線 を 書 き 、 濃 度 不 明 の サ ン プ ル の Ct 値 を 検 量 線 に あ て は め コ ピ ー 数 を 計 算 す る も の で あ る 。 主 に ウ イ ル ス や 細 菌 の 検 出 に 用 い ら れ る 。 一 方 で 、 相 対 定 量 法 は 、 主 に m R N A の 発 現 の 定 量 に 最 も 一 般 的 に 用 い ら れ て い る 方 法 で 、 目 的 遺 伝 子 と リ フ ァ レ ン ス 遺 伝 子 を 同 時 に 解 析 し リ フ ァ レ ン ス 遺 伝 子 に 比 べ 、 目 的 遺 伝 子 が ど れ だ け 発 現 し て い る か を 相 対 的 に 比 較 し た も の で あ る 。 前 提 条 件 と し て 、 リ フ ァ レ ン ス 遺 伝 子 と 目 的 遺 伝 子 の 増 幅 効 率 が 同 じ で あ る こ と 、 解 析 す る 全 て の サ ン プ ル で リ フ ァ レ ン ス 遺 伝 子 が 安 定 し て 一 定 に 発 現 し て い る こ と が 重 要 で あ る 。 P C R の 増 幅 効 率 を 確 認 す る 方 法 と し て は 、 検 量 線 の 傾 き を S l o p e と し 、
E
=
10
−
1
/
S
l
o
p
e
−
1
{\displaystyle E=10^{-1/Slope}-1}
で 計 算 が 出 来 る 。
最 近 で は 、 単 純 に P C R 反 応 に よ る D N A や R N A の ﹃ 定 量 ﹄ は も ち ろ ん の こ と 、 H i g h r e s o l u t i o n m e l t i n g ( H R M ) を 用 い た 変 異 解 析 、 S N P 解 析 [ 1 ] [ 2 ] さ ら に は 、 蛋 白 の 定 量 な ど 様 々 な 用 途 に 用 い ら れ て き て い る 。
Higuchi, R., Dollinger, G., Walsh, P. S., and Griffith, R. 1992. Simultaneous amplification and detection of specific DNA sequences. Biotechnology 10:413–417.
Higuchi, R., Fockler, C., Dollinger, G., and Watson, R. 1993. Kinetic PCR: Real time monitoring of DNA amplification reactions. Biotechnology 11:1026–1030.
^ https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2005/pr20050223/pr20050223.html
^ https://www.eco-tech.nipponsteel.com/catalogue/j-bio21/docs/01.pdf