峠
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峠︵とうげ︶とは、山道を登りつめてそこから下りになる場所。山脈越えの道が通る最も標高が高い地点。なお、峠の片側にのみ大きな高低差があってもう一方の側が平坦に近いものを片峠という。日本での片峠の代表的な事例としては碓氷峠がある。
峠は、中国地方で垰あるいは乢とも書き、﹁たお﹂﹁とう﹂﹁たわ﹂﹁たわげ﹂などと呼ぶ地方があり、地名などにも見られる︵岡山県久米南町安ケ乢など︶。登山用語では乗越︵のっこし︶、または単に越︵こえ、こし︶などとも言い、山嶺・尾根道に着目した場合は鞍部︵あんぶ︶、窓、コル︵col︶とも言う。
かつて峠はクニ境であり、その先は異郷の地であった。そのため、峠は、これから先の無事を祈り、帰り着いた時の無事を感謝する場所でもあったことから、祠を設けている所が多い。この祠は、異郷の地から悪いものが入り込まないための結界の役割も果たしていたと考えられる。本来の意味から転じて、何らかの物の勢いが最も盛んな時期のことを峠という。
語源[編集]
峠の語源は﹁手向け︵たむけ︶﹂で、旅行者が安全を祈って道祖神に手向けた場所の意味と言われている。﹁峠﹂という文字は室町時代に日本で会意で形成された国字︵和製漢字︶である[1]。
なお、中国語では、﹁嶺﹂︵簡体字は岭︶という字で峠の地形を表す事が多い。例えば、万里の長城のある﹁八達嶺﹂や、映画﹃あゝ野麦峠﹄の中国公開時の題名﹃啊!野麥岭﹄などがある。また、﹁山口﹂と表記する例もある。
朝鮮半島では、アリランゴゲのように、コゲ︵고개︶という言葉で峠を表すほか、재︵ジェ︶を用いている地名も多い。コゲは単独でもよく使われるが、ジェは主に複合語で接尾詞的に現れる。漢字語の峙︵치、チ︶と嶺︵령、リョン︶も使い、特に峙は朝鮮語漢字音としては珍しく読み方が2つあり、漢字は同じでも大峙駅などでは読み方が異なる。
ドライブコースとしての峠[編集]
自動車等のドライブコースとして呼称される﹁峠﹂とは、必ずしも上記のような限定的な意味ではなく、山間部にある道路において峠を含むつづら折れの区間全体を指すことが多い。﹁峠攻め﹂などの言葉がある。日本国外でも、近年﹁touge﹂として使用されている。 道路幅が狭く多数の急カーブや急勾配がある峠道は夜になると﹁ローリング族﹂や﹁峠族﹂と呼ばれる暴走族︵違法競走型暴走族︶が出没することがある。特に峠族やローリング族の活動が全盛期かつそれらへの対策が不十分だった昭和末期から平成中期にかけての時代は騒音や暴走行為が地域の社会問題となることも多かった。世界の主な峠[編集]
アジア[編集]
●ミンタカ峠 ●カイバル峠 ●寿峠︵壽峠、壽𡶛、壽卡︶ ●台湾の屏東県と台東県の間、南迴公路︵台9線︶に﹁寿峠﹂という日本統治時代の名残の地名がある。しかし、﹁峠﹂の文字は国字で中国語には本来ないため、中国語にあって字体の似た﹁卡﹂を旁に用いた﹁𡶛﹂か、偏も省いた﹁卡﹂で表記されることが多く、﹁カー﹂︵kǎ︶と発音されている。 ●高熊峠 ●台湾の苗栗県にある地名。 ●肉板峠 ●台湾の新北市にある地名。 ●三角嶺峠 ●台湾の南投県にある地名。 ●八幡峠 ●台湾の南投県にある地名。 ●アリラン峠︵アリランコゲ︶ ●元来﹃アリラン﹄という朝鮮民謡中に出てくる架空の峠であったが、同曲にちなんで朝鮮半島各地の峠に命名される。 ●ハイヴァン峠 ●ベトナムの南北を隔てる峠。ここを境に気候、人間の性格、食事の味付けまでも変わるとまで言われている。チュノムを使っていた頃のベトナムでは、峠のことを﹁𡸇﹂︵山へんに条︶と書いていた。 ●大関嶺 ●大韓民国の江原特別自治道にある地名。日本[編集]
詳細は「日本の峠一覧」を参照
ヨーロッパ[編集]
アメリカ[編集]
脚注[編集]
- ^ 沖森卓也ほか『図解 日本の文字』三省堂、2011年、52頁