川原泉
表示
来歴
[編集]
大学4年在学中に、初めての漫画﹁ジュリエット白書﹂を﹃花とゆめ﹄に投稿。その後、大学の教授の紹介で地元女子校の教員採用の面接を受けたが、良妻賢母教育と勉学のどちらを優先するかという質問に﹁もちろん勉学﹂と答えた結果、不採用となる。この件が川原のお嬢様学校コンプレックスの元となったという。以降は目標を漫画に定め、1983年、﹃花とゆめ﹄増刊に掲載された﹁たじろぎの因数分解﹂でデビューした。以来、白泉社を中心に活動[2]。
1985年、﹁ゲートボール殺人事件﹂の頃、東京へ引越しし、世田谷区に住む。
1986年、アイススケート漫画﹃銀のロマンティック…わはは﹄の取材のため札幌を訪れた際に、当時の担当編集者が同じだった縁で三原順と会い、交流は三原の病没まで続いた[3]。
1987年、初の長期連載となった﹃笑う大天使︵わらうミカエル︶﹄の仕事が一段落し、一旦帰郷した際に初めてファミリーコンピュータを購入し、﹃女神転生﹄などのゲームに熱中[4]。﹃ドラゴンクエスト﹄や﹃ファイナルファンタジー﹄の影響で﹃魔法の国ザンス﹄シリーズなどのファンタジーにも興味を持つに至る[2]。
1988年、﹁笑う大天使 オペラ座の怪人﹂の原稿を落としてしまい、打ちひしがれた川原は都落ちを決意、荷物をまとめたが周囲の励ましにより帰郷を中止。せっかく荷造りをしたのだからと前の仕事場から徒歩5分の場所に移転する[5]。
1996年、鹿児島市に引越す[2]。
2005年、﹃ブレーメンII﹄で第36回 星雲賞コミック部門と第4回︵2004年度︶センス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞。
2006年夏、﹃笑う大天使﹄が映画化。
人物・作品
[編集]
●カーラは公式化された愛称であり、﹃メイプル戦記﹄のおまけ﹁カーラ君を探せ﹂、﹃小人たちが騒ぐので﹄などで﹁友人M﹂の﹁カワハラ君﹂という呼びかけが﹁カーラ君﹂と聞こえるのが由来。
●書店に行く度に2万円ほど本を購入し、生活費で一番お金をかけているのは本であるというほどの読書家。恋愛ものの本はほとんど読む事はなく、好きなのはSFやホラーで、ロバート・R・マキャモン、スティーヴン・キング、そして特にディーン・R・クーンツの作品を好んでいる[6]。また、﹃銀河英雄伝説﹄のファンでもあり、徳間文庫版第7巻﹁怒涛編﹂の解説を執筆、徳間デュアル文庫版のハンドブックにも再録されている。
●1/4スペースなどの記述によると、タカシという兄がいる。彼とのエピソードのいくつかが披露されている他、漫画にも彼︵の似顔︶をモデルとした、地味な顔立ちでメガネ着用のキャラクターが散見される。
●1/4スペースやエッセイ漫画などでは、昔からの女性の友人2人︵特に﹁友人M﹂︶が登場するエピソードが多く見られる。
●ヒロインの相手は、年の離れた社会的地位のある男性という設定が多い。
●好きなミュージシャンに王様を挙げていて、王様も川原作品のファンである。
●紀文食品の﹁魚河岸あげ﹂が、東京で発見したおいしいものベスト3に入ると﹃メイプル戦記﹄の1/4スペースに書いているほど好きである。また﹁小人たちが騒ぐので﹂の中にも3回ほど﹁魚河岸あげ﹂が登場する。この事が縁となり、その思いと紀文食品が結びついて、描き下ろし作品﹁漫画魚河岸あげの魅力﹂が紀文食品のサイト内で発表された[7]。
作中の設定
[編集]聖ミカエル学園(セントミカエルがくえん)
[編集]
架空の学校。明治36年︵1903年︶創立の由緒正しき名門お嬢様学校で、生徒は﹁アーク・エンジェルの乙女達﹂と呼ばれる。カトリック系聖ミカエル教団に属し、宗教の時間・朝の礼拝など、宗教行事も多く取り入れられた、幼稚園から短大まである女子校。教師の半数をシスター︵外国人多数︶が占める。﹁よき妻 よき母﹂を育てるための教育に重きを置き、礼儀作法や清掃活動などには大変厳格だが、多くの生徒がエスカレーター式に付属短大へ入学するためか、勉強への強い意欲はあまり見られず、偏差値は中の上程度と思われ、﹃不思議なマリナー﹄の中で、﹁上品だが、そのぶんバカ﹂との発言がある。挨拶はいつでも﹁ごきげんよう﹂。﹁登下校の際は車による送り迎え禁止﹂という校則がある。
浮世離れした深窓の令嬢がほとんどだが、変わった毛色の生徒が2 - 3人必ず混ざっている。制服はシスターのような白いハイカラーの襟の胸元にひも状のリボン、プリーツではないひざ下のスカートに三つ折りソックス。ベレー帽をかぶる。映画版﹃笑う大天使﹄では、ベレー帽にスクウェアカットの胸元の黒いAラインワンピース、胸下にベルト状の細い白のリボンをつけて、足元は黒ストッキングと、かなりフェミニンになっている。
﹁archangel﹂は日本ではアーク・エンジェルの読みが一般的だが、﹃笑う大天使﹄以前の作品では、﹁大天使﹂のルビは﹁アーチエンジェル﹂となっている。また、﹃笑う大天使﹄において、その事を自虐的なネタとして取り上げている。
秋吉田藩
[編集]
江戸時代の外様大名が治める架空の藩で、奥州にあるという設定。石高は25万石。藩主は鳴沢家。秋吉田城は﹁空の鳴滝城﹂と謳われる名城で、私有財産として現存している設定である。特産は巨大松茸。現代でも旧・家臣団が鳴沢家当主の法要に列席するために集まってくる。
- 同藩が登場する作品
-
- 殿様は空のお城に住んでいる - 江戸時代中期の秋吉田藩の殿様と正室の少女と、その側近たちの時代活劇。
- 笑う大天使 - メインキャラの斎木和音の母方の先祖が秋吉田藩の藩主。
- 笑う大天使 空色の革命 - 和音の母である旧秋吉田藩「鳴沢家」の令嬢と、実業家の父との話が軸のひとつ。
- 秋吉田藩レポート - 『まるごと川原泉』2号に掲載された。
穴田アナ
[編集]
穴田アナが登場する作品
●空の食欲魔人 - 大韓航空機撃墜事件のニュース報道。
●甲子園の空に笑え! - 高校野球の実況中継。
●ゲートボール殺人事件 - 花吹雪市の朝のニュース特集︵暴力団抗争︶。
●銀のロマンティック…わはは - フィギュアスケートの実況中継。主人公の父親がトーク番組﹁穴田の部屋﹂にゲスト出演。
●笑う大天使 - 名門女子高校生連続誘拐事件のニュース報道。
●メイプル戦記 - プロ野球の実況中継。
●愚者の楽園 - K県のニュース︵台風情報︶※K県に出張中に出演
●中国の壺 - アメリカと中国の地震のニュース報道。
桜井敦子
[編集]- 彼女を振った相手
-
- 司城一臣(笑う大天使)
- 瀬名弓彦(フロイト1/2)
- 小早川秀明(メイプル戦記)
作品リスト
[編集]漫画作品
[編集]
※掲載誌はいずれも白泉社。
●ジュリエット白書 ︵別冊花とゆめ 1983年冬の号︶※コミックス収録にあたり全面的に描き直された。
●メロウ・イエロー・バナナムーン ︵別冊花とゆめ 1983年夏の号︶
●たじろぎの因数分解 ︵花とゆめ 1983年9月大増刊号︶
●悪魔を知る者 ︵別冊花とゆめ 1983年秋の号︶
●真実のツベルクリン反応 ︵花とゆめ 1983年22号︶
●花にうずもれて ︵花とゆめ 1983年11月大増刊号︶
●空の食欲魔人 ︵花とゆめ 1984年1号︶
●進駐軍(GHQ)に言うからねっ! ︵花とゆめ 1984年5号︶
●カレーの王子さま‥空の食欲魔人[8] ︵花とゆめ 1984年22号︶
●3月革命 ︵花とゆめ 1984年8号︶
●月夜のドレス ︵花とゆめ 1984年12号︶
●悲しみのオイル・ダラー ︵花とゆめEX 1984年7月1日号︶
●甲子園の空に笑え! ︵花とゆめ 1984年16 - 18号︶
●アップル・ジャック‥陸の食欲魔人[9] ︵花とゆめ 1984年24号︶
●不思議なマリナー‥海の食欲魔人[10] ︵別冊花とゆめ 1985年夏の号︶
●ミソ・スープは哲学する‥青い瞳の食欲魔人[11] ︵花とゆめ 1985年4号︶
●ゲートボール殺人事件 ︵花とゆめ 1985年10 - 12号︶
●アンドロイドはミスティー・ブルーの夢を見るか? ‥宇宙の食欲魔人[12]︵別冊花とゆめ 1985年夏の号︶
●Intorlerance... あるいは暮林助教授の逆説 ︵花とゆめ 1985年18 - 19号︶
●パセリを摘みに ︵花とゆめ 1985年23号︶
●銀のロマンティック…わはは ︵花とゆめ 1986年3 - 7号︶
●架空の森 ︵花とゆめ 1986年13号︶
●愚者の楽園8月はとぼけてる ︵花とゆめ 1986年17号︶
●大地の貴族9月はなごんでる ︵花とゆめ 1986年19号︶
●美貌の果実10月はゆがんでる ︵花とゆめ 1986年21号︶
●笑う大天使 ︵花とゆめ 1987年3 - 14、17 - 19号︶
●笑う大天使 空色の革命 ︵花とゆめ 1988年3号︶
●笑う大天使 オペラ座の怪人 ︵花とゆめ 1988年6、12、16、19号︶
●笑う大天使 夢だっていいじゃない ︵花とゆめ 1988年23号︶
●森には真理が落ちている ︵花とゆめ 1988年1号︶
●フロイト1/2 ︵花とゆめ 1989年4、8号︶
●追憶は春雨ぢゃ ︵花とゆめ 1989年11号︶
●かぼちゃ計画 ︵花とゆめ 1989年14号︶
●中国の壺 ︵花とゆめ 1989年19、21、23号︶
●殿様は空のお城に住んでいる ︵花とゆめ 1990年4、9、14号︶
●バビロンまで何マイル? ︵花とゆめ 1990年19号 - 1991年4、7 - 10、12 - 13号︶
●0の行進 ︵花曜日 1991年SUMMER号︶
●メイプル戦記 ︵花とゆめ 1991年17 - 20号、1992年10号…1995年21号︵不定期連載︶︶
●ヴァンデミエール 葡萄月の反動 ︵花とゆめ 1993年19号※、1994年6、8号︶ ※急病のため2Pのみ
●小人たちが騒ぐので ︵PUTAO 1997年7月号 - 1998年6月号︶
●ロレンツォのカエル ︵セリエミステリー 1997年4月号︶
●ブレーメンII ︵MELODY 1999年6月号 - 2003年9月号、2004年2 - 7月号︶
●﹁〜がある﹂シリーズ
●レナード現象には理由がある ︵MELODY 2003年1月号︶
●ドングリにもほどがある ︵MELODY 2003年11月号、2004年1月号︶
●あの子の背中に羽がある ︵MELODY 2004年11月号、2005年3、8月号︶
●真面目な人には裏がある ︵MELODY 2005年10月号 - 2006年2、4月号︶
●その理屈には無理がある ︵MELODY 2006年10月号︶
●その科白には嘘がある ︵MELODY 2006年12月号 - 2007年2月号︶
●グレシャムには罠がある ︵MELODY 2007年2、4、10月号︶
●コメットさんにも華がある ︵MELODY 2007年12月号 - 2008年4月号、2011年4月号別冊ふろく︶
●バーナム効果であるあるがある ︵MELODY 2011年8月号 - ︶
エッセイほか
[編集]- 本日のお言葉 (白泉社 1989年10月) 川原漫画から精選された珠玉のお言葉400余、ほか
- 新・本日のお言葉 (白泉社 2000年1月)
- 事象の地平 (白泉社 1998年7月) 川原教授のまるかじりエッセイ集
- 川原泉の本棚 (白泉社 2003年2月) 川原泉による選・イラストのアンソロジー本
- 川原泉の本棚2 (白泉社 2004年2月)
- デジタル原始人☆川原泉(白泉社 2022年5月[13])共著:福田素子[13]
参考文献
[編集]- 川原泉 『笑う大天使』 1 - 3巻(花とゆめCOMICS、白泉社、1987年、1988年、1989年)
- 三原順 『はみだしっ子』 第1巻(白泉社文庫、1996年)
- 『まるごと川原泉』 1 - 3号(白泉社MELODY別冊 2004年9月増刊、2004年11月増刊、2005年1月増刊)
脚注
[編集]
(一)^ “川原泉の一覧”. BookLive. 2020年12月1日閲覧。
(二)^ abc雑誌﹃エグゼクティブ﹄︵ダイヤモンド社︶2001年6月号 本棚探検隊が行く 128 川原泉の本棚︵取材・文‥甲斐武佳、撮影‥津藤文生︶参考。
(三)^ ﹃はみだしっ子﹄第1巻 解説‥川原泉 参考。
(四)^ ﹃笑う大天使﹄第1巻11頁 1/4スペースによーこそ (2) 参考。
(五)^ ﹃笑う大天使﹄第2巻77頁 1/4スペース白書・4参考。
(六)^ Yahoo!ブックス インタビュー 川原泉 - ウェイバックマシン︵2006年8月12日アーカイブ分︶
(七)^ 紀文 HOME > ブランドサイト > 魚河岸あげ® > [マンガで伝わる魚河岸あげ®の魅力 https://www.kibun.co.jp/brand/uogashiage/manga/index.html]
(八)^ “BinB Speed Reader”. www.cmoa.jp. 2023年3月14日閲覧。
(九)^ “BinB Speed Reader”. www.cmoa.jp. 2023年3月14日閲覧。
(十)^ “BinB Speed Reader”. www.cmoa.jp. 2023年3月14日閲覧。
(11)^ “BinB Speed Reader”. www.cmoa.jp. 2023年3月14日閲覧。
(12)^ “BinB Speed Reader”. www.cmoa.jp. 2023年3月14日閲覧。
(13)^ ab“レイヤー?ファイル?デジタル原始人・川原泉がマンガのデジタル制作に挑戦”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年5月2日) 2022年5月10日閲覧。
外部リンク
[編集]- 魚河岸あげ - 紀文食品魚河岸あげ特集サイト
- マンガでチェック!魚河岸あげ®の魅力 - 上記サイト中の漫画紹介ページ