推力
表示
推力︵すいりょく、スラスト、英: thrust︶とは、
(一)建築でアーチの支点を外側に押し広げようとする鉛直方向の力。
(二)機械などで軸方向に働く力
(三)移動する物体︵走行物体や飛行物体 等々︶を進行方向に推し進める力のこと[1]。﹁推進力﹂とも。
本項では3について記述する。
飛行時に機体に働く力。Weight 重力、Lift 揚力、Thr ust 推進力、 Drag 抗力
固定翼機は、プロペラを回転させて空気を動かすか、ジェットエンジン︵やロケットエンジン︶からの排気ガスを飛行方向とは逆向きに噴射することで、前方推力を生み出す。この前方推力は、﹁空気の質量﹂に﹁気流の平均速度﹂を乗じたものに比例する。可変ピッチプロペラのブレードを逆ピッチにしたり、ジェットエンジンを逆噴射させたりすることで逆推力を起こし、着陸後のブレーキの効きをよくすることができる。回転翼機や推力偏向のV/STOL機では、エンジンの推力で機体の重量を支え、その推力の一部を前後に向けて前進速度を制御する。
ロケットの質量は、燃焼室からロケットエンジンのノズルを通って加速された排気質量の運動量が変化する時間率と大きさが等しく逆向きの推進力で前方に進む。これは、ロケットに対する排気速度 × 質量が放出された時の時間率 であり、数学的に表すと‥
ここで‥
●T = 生み出された推力︵力︶
● 時間に対する質量の変化率︵燃料の燃焼率︶
●v = 排気速度
である。
もちろん、﹁ゆっくり打ち上げる﹂のは非常に効率が悪いため、打ち上げ時の推力はその重量に充分な余裕を加えたものより大きくなければならない。
スペースシャトルでは、推力1.8MNのメインエンジンが3つ、推力14.7MNの固体ロケットブースタが2つ、合計した推力は34.8MNである。打ち上げ時の質量2,040,000kgは20MNの重量に相当する。
また、セルフレスキュー用推進装置 (SAFER) には、それぞれ3.56Nのスラスタが24個設けられている。
空気吸入の分野では、無線操縦機用のジェットエンジン AMT-USA AT-180 の推力は 90N (20Lbf) ある[2]。ボーイング777-300ER に搭載されているエンジン GE90-115B は、﹁世界最強の商業用ジェットエンジン﹂としてギネス・ワールド・レコーズに認定されていて、試験出力は 569kN (127,900Lbf) である。
水中で回転し推力を生んでいるプロペラ。キャビテーションが生じると 推力が減少してしまう。
様々な艦船で多様な推進装置が用いられているが、代表的なものにスクリュープロペラ︵プロペラ︶を用いるプロペラ船がある。これは、プロペラを回転させ、水を後方に加速して︵蹴って︶推力を得る方式である。
原動機で発生させた力をシャフトでプロペラに伝え、プロペラが水を後方に押しその反作用を推力とする。原動機の発生させた力が全て推力になるわけではなく、プロペラが生じさせる水流はらせん状の渦でねじれが生じており、推力になるのは原動機の発生させた力の一部である。
ヨットにはたらく力の分析
帆船の場合はいささか複雑である。帆船などでは風の力を推力の源とする。ただし風の力と言っても、真の風に、船の進行によって逆向きに生じる進行風が合成され︽みかけの風︾が発生する。その︽みかけの風︾をセイルが受け、その結果セイルは迎え角に応じて斜め方向の力を発生させ、その力を帆柱などに伝え船体が受ける。その力は進行方向からずれた斜め方向になっているが、その力のうち船体の横方向の成分は船体側面やキール︵竜骨︶が水から受ける抗力によって差し引き減少させ、船体の縦方向の成分を推力として前方へ進む。