歯車 (小説)
歯車 | |
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作者 | 芥川龍之介 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 短編小説 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
初出情報 | |
初出 | 全章-『文藝春秋』1927年10月号 |
刊本情報 | |
収録 |
『芥川龍之介全集 第4巻』 岩波書店 1927年 『西方の人』 岩波書店 1929年12月 画:小穴隆一 |
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﹃歯車﹄︵はぐるま︶[1]は、芥川龍之介の小説。﹃玄鶴山房﹄、﹃蜃気楼﹄、﹃河童﹄、﹃或阿呆の一生﹄と並ぶ晩年の代表作である。この時期の作品には自身の心象風景を小説にしたものが多いが、この作品もその一つと言える。執筆期間は1927年3月23日から4月7日までとされる。﹁話﹂らしい﹁話﹂はなく、芥川を自殺に追い詰めたさまざまな不気味な幻視、関連妄想が描かれている。芥川は1927年︵昭和2年︶服毒自殺を図るが、生前に第一章が雑誌﹁大調和﹂に発表され、残りは遺稿として発見された。遺稿中では唯一の純粋な小説である。
あらすじ[編集]
﹁僕﹂は、知り合いの結婚披露宴に出席するため、東京のホテルに向かう。途中、レエン・コオト︵レインコート︶を着た幽霊の話を耳にする。その後、事あるごとに、季節はずれのレエン・コオトが現れ、﹁僕﹂は段々と不気味になってくる。披露宴後、そのままホテル[2]に逗留して小説を執筆しだしたとき、﹁僕﹂は、義兄がレエン・コオトを着て轢死したことを知る。 ときおり﹁僕﹂の視界には半透明の歯車が回るのが見える[3]。やがて東京に耐えきれなくなった﹁僕﹂はホテルを出て妻の実家へ帰るが、そこでも不吉な現象は続く。激しい頭痛をこらえて横になっていると、妻は﹁お父さんが死にそうな気がした﹂と言う[4]。﹁僕﹂はもはやこの先を書き続けることも生きていることも苦痛となり、眠っているうちに誰かが絞め殺してくれないだろうかと望む。評価[編集]
同時代の作家の複数名が芥川の最高傑作と評している。 ●佐藤春夫﹁彼の作中第一﹂[5] ●堀辰雄﹁生涯の大傑作﹂[6] ●広津和郎﹁芥川君の全作品中でも逸品だと考える﹂[7] ●川端康成﹁すべての作品に比べて断然いい﹂[8] 一方で、書きすぎて雑音があるとする評︵久米正雄、宇野浩二、徳田秋声︶もある[9]。症状[編集]
2009年度第104回の医師国家試験において、視界に見えた﹁歯車﹂の表現から、その原因︵病跡学︶として片頭痛を選ばせる出題があった[10]。脚注[編集]
(一)^ 自筆原稿によればタイトルは、﹁ソドムの夜﹂、﹁東京の夜﹂、﹁夜﹂と変遷したが、佐藤春夫が﹁歯車﹂の題名を薦めたという。
(二)^ 竣工間もないフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルである。
(三)^ これは、偏頭痛の予兆である閃輝暗点である可能性が高い。レエン・コオトだけでなく、復讐の神、黄色いタクシー、黒と白、もぐらもち︵もぐら︶、翼(飛行機︶、火事、赤光など、過去の罪の残像とも、死の予告とも知れない現象が繰り返し現れていく。何者かに生命を狙われていると感じるようになった﹁僕﹂は怯え苦しみ、東京の街を逃げ回るように彷徨する。
(四)^ 妻の芥川文は、後年の追想記でこの作品のラストシーンが事実そのままであったことを明かしている
(五)^ ﹁文芸春秋﹂昭和3年7月号[要ページ番号]
(六)^ 大学卒論、昭和4年[要ページ番号]
(七)^ ﹁文芸雑感﹂﹁文芸春秋﹂昭和2年12月号[要ページ番号]
(八)^ 座談会﹁芥川龍之介研究﹂﹁新潮﹂昭和10年7月号
(九)^ 新潮文庫﹃河童・或阿呆の一生﹄の吉田精一による解説より[要ページ番号]
(十)^ “日本頭痛学会”. www.jhsnet.net. 2021年4月1日閲覧。