メノウ
表示
(瑪瑙から転送)
メノウ | |
---|---|
![]() アルゼンチンの縞瑪瑙; 横幅9.5cm | |
分類 | 酸化鉱物 石英種(Quartz variety) |
化学式 | SiO2 二酸化ケイ素 |
結晶系 | 三方晶形 微晶質(Rhombohedral Microcrystalline) |
晶癖 | 潜晶質 二酸化ケイ素(Cryptocrystalline silica) |
へき開 | なし |
断口 | 非常に鋭い貝殻状. |
モース硬度 | 6.5–7 |
光沢 | ガラスや樹脂光沢 |
色 | 無色(内包物により多彩な色を現す) |
条痕 | 白色 |
透明度 | 半透明から不透明 |
比重 | 2.58–2.64 |
屈折率 | 1.530–1.540 |
複屈折 | up to +0.004 (B-G) |
多色性 | なし |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ac/Newmexico004.jpg/220px-Newmexico004.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b4/Hungary001.jpg/220px-Hungary001.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b3/Dendritic_agate_with_three_dendrite_occurances.jpg/220px-Dendritic_agate_with_three_dendrite_occurances.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1c/Oregon001.jpg/220px-Oregon001.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1a/Oregon002.jpg/220px-Oregon002.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/09/Oregon003.jpg/220px-Oregon003.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/eb/Oregon004.jpg/220px-Oregon004.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/99/%E8%89%B2%E4%BB%98%E3%81%8D%E7%91%AA%E7%91%99_P1200142.jpg/220px-%E8%89%B2%E4%BB%98%E3%81%8D%E7%91%AA%E7%91%99_P1200142.jpg)
性質・特徴
[編集]
主成分は SiO2︵二酸化ケイ素︶。比重は2.62-2.64、モース硬度は6.5-7。隠微晶質であるため、肉眼では結晶を認めることができず、非晶質のように見える。
しばしば中心部にすき間を残し、晶洞を形成していることがあり、またまれに液体・気体がそのすき間に存在することもある。
成分・種類
[編集]
縞瑪瑙︵しまめのう、Banded agate︶
タマネギのように同心状に縞が成長したもの、平行に縞が成長したもの、レースのカーテンのように縞が成長したものなど、様々な縞瑪瑙が存在する。
オニキス︵onyx、オニックス︶
詳細は「オニキス」を参照
縞瑪瑙の中でも平行な縞状模様があるもの。蛋白石質と石英質の部分が交互に配列するため、縞状に見え、黒色と白色がきれいに層状になっているものは、古くからカメオ細工の材料として用いられている。縞を生かしたデザインにされる場合と、単色部分のみを用いたデザインにされる場合がある。単に縞瑪瑙とも呼ばれる。
サードニクス︵sardonyx、サードニックス︶
オニキスの一種で、縞目が紅色と白色に彩られていて美しいもの。紅縞瑪瑙とも呼ばれる。
サンダーエッグ︵雷の卵、Thunderegg︶
メノウや蛋白石、碧玉が満たされた、流紋岩等のノジュール(団塊)。アメリカのオレゴン州の先住民の伝説に由来している。アメリカのオレゴンとニューメキシコ州やドイツのザクセン州で産出したものが有名。
雨花石︵うかせき、Rain flower pebble、ユーファストーン︶
南京近郊の川で採れるカラフルな模様石(主にメノウや碧玉)で、磨かなくともそのままの状態で美しい。かつて南京の雨花台で採れたことに由来している。乾燥時は白っぽいが、水に濡らすと透明感や色の鮮やかさが増す。
錦石︵にしきいし、Nishiki stone︶
青森県津軽地方で採れる、メノウや碧玉、珪化木などの磨くとツヤの出る美しい色彩の石。どのような石か、明確に定義されているわけではない。
苔瑪瑙︵こけめのう、Moss agate、モスアゲート︶
緑泥石や鉄やマンガンの酸化物の内包により、緑や赤色等の苔状の模様が現れたもの。インドやハンガリーのマトラ山脈で産出したものが有名。
樹枝瑪瑙︵Dendritic agate、デンドリティックアゲート︶
鉄やマンガンの酸化物の内包により、黒や赤色等のシダ状の模様が現れたもの。石の中に0.何ミリという薄さで模様が入っているため、薄くカットされアクセサリー用に加工される。マダガスカルやインドのケン川で産出したものが有名。
羽毛瑪瑙︵うもうめのう、Plume agate、プルームアゲート︶
鉄やマンガンの酸化物の内包により、黒や赤色等の羽毛や草花状の模様が現れたもの。樹枝瑪瑙とは異なり、模様にボリュームがある。アメリカのテキサス州、オレゴン州、カリフォルニア州で産出したものが有名。
針入り瑪瑙︵はりいりめのう、Sagenite agate、セージナイトアゲート︶
針鉄鉱や沸石、輝安鉱等の針状鉱物の内包により、針状の模様が現れたもの。模様だけを残し、メノウに置換しているもの(仮晶)も多い。アメリカのカリフォルニア州ニポモで産出したものが有名。
チューブアゲート︵Tube agate︶
針状に伸びた針状鉱物や霰石、鉄やマンガンの酸化物を芯に、周囲を玉髄が覆い管状の模様が現れたもの。
虹瑪瑙︵にじめのう、Iris agate、イリスアゲート︶
稀に透明度の高い縞瑪瑙の中に、薄くスライスして強い光を当てると虹が現れるものがある(細かい縞が回折格子の役割を果たすため) 。ギリシア神話に登場する虹の女神イリス(Iris)に由来している。ブラジル、アメリカ、アルゼンチンやメキシコでの産出が確認されている。
ファイアーアゲート︵Fire agate︶
葡萄状の玉髄を多層の薄膜状褐鉄鉱が覆うことにより、虹が現れたもの。メキシコとアメリカのアリゾナ州での産出が確認されている。人工的に処理された虹の無い赤いメノウ、クラブファイアーアゲート(スパイダーウェブ・カーネリアン)がよくファイアーアゲートの名で流通しているが、まったくの別物である。
水入りメノウ
空洞中に液体の水が含まれるもの。中に含まれる水は、メノウが形成されたときの岩漿水であると言われることが多いが、必ずしもそうとは限らない。中の水は、多孔質の構造を通して蒸発しやすく、逆に長時間水中に浸けることで、人為的に水を入れることもできる。
産出地
[編集]
メノウはありふれた鉱物で、世界各地で産する。特にメキシコ、アルゼンチンなどの南米や、ドイツ、オーストラリア、ボツワナ、ポーランド、チェコやイギリスのスコットランドのものはカラフルで、世界中のコレクターの間で人気がある。日本では青森県、石川県、群馬県、富山県、北海道などで産し、七宝のひとつに数えられている。
-
アルゼンチンのメノウ
-
メキシコのメノウ
-
ドイツのメノウ
-
オーストラリアのメノウ
-
ボツワナのメノウ
-
ポーランドのメノウ
-
チェコのメノウ
-
スコットランドのメノウ
用途・加工法
[編集]
メノウは、多孔質であるため、人工的に染色が可能であり、玉髄とともに、灰皿、置物、印鑑など、さまざまな工芸の彫刻材料として使われる。穴を開けた球状の縞瑪瑙に、ゴムや紐を通し、ジュエリーや数珠、ブレスレットやペンダントなどのアクセサリーとしても使われる。硬度が高いのを利用して、化学実験用の乳鉢などにも用いられている。また皮革の艶出し用のローラー素材として使われている。
国内における加工史としては、弥生時代後晩期の遺跡である平原遺跡において、瑪瑙製管玉が出土している︵詳細は、﹁平原遺跡#主な出土品﹂を参照︶。
-
メキシコのメノウを用いた、コウノトリの彫物
-
スライス後着色され、コースターとして製品化されたメノウ
-
いろいろな色に着色されたメノウ
-
化学実験に用いられるメノウの乳鉢
定義・由来
[編集]
瑪瑙の名前は、石の外観が馬の脳に似ているためつけられた[1]。事実、10世紀前半成立の﹃和名類聚抄﹄巻11﹁玉類﹂の項目では、メノウを﹁馬脳﹂と表記し、﹁俗音、女奈宇﹂と記述する。英語の agate は、ギリシャ語の achates に由来し、これはイタリア・シチリア島の同名の川︵Acate、現名はディリッロ川︶でこの石がとられていたためである。
碧玉や玉髄などが層状になっているものがメノウであり、層状になっていない場合はメノウではない。例えばメノウの縞模様が見えない場合、メノウの一層だけを切り出した場合はすでにメノウではない。しかし宝飾業界ではあまり区別されず、碧玉や玉髄のことを﹁メノウ﹂と呼んだり、逆に例えば赤メノウを﹁カーネリアン﹂︵紅玉髄︶と呼んだりすることが多い︵縞模様が見えないものがカーネリアンで、縞模様が見えるものは赤メノウである︶。
その他
[編集]
●仏教の﹃無量寿経﹄では、七宝の一つとされる。
●中国人の好みであったためか、古墳時代後期の輸出品として、メノウの記録が残り、﹃新唐書﹄巻220の記述として、﹁永徽の初、孝徳が即位して白雉と年号を改めた。大きさ斗のような琥珀と五升の器のような瑪瑙︵メノウ︶を献じた﹂と記し、後代の﹃宋史﹄においても、﹁永徽5年︵654年︶、︵日本が︶使を遣して琥珀、瑪瑙を献ず﹂と再録している。
●島根県花仙山産のメノウを製作できるいずもまがたまの里 伝承館があったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともない、2022年に閉館されている。
脚注
[編集]参考文献
[編集]
●益富寿之助﹃鉱物 : やさしい鉱物学﹄保育社︿カラー自然ガイド﹀、1974年、31-37頁。ISBN 4-586-40013-7。
●松原聰﹃日本の鉱物﹄学習研究社︿フィールドベスト図鑑﹀、2003年、227頁。ISBN 4-05-402013-5。
●青木正博﹃鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる﹄誠文堂新光社、2011年、187-188頁。ISBN 978-4-416-21104-5。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Agate (英語), MinDat.org, 2012年3月31日閲覧。
- “瑪瑙(メノウ)”. 地質標本館. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 2012年3月31日閲覧。