裁判所
概説[編集]
﹁裁判所﹂には司法行政上の官署としての裁判所、司法行政上の官庁としての裁判所、裁判機関としての裁判所の3つの意味があり、前二者をまとめて国法上の意味の裁判所ともいう[1]。国法上の意味の裁判所[編集]
官署ないし官庁としての裁判所を国法上の意味の裁判所という[1][2]。 ●官署としての裁判所 官署としての裁判所とは裁判官を中心として裁判所職員やその設備の全体を含む意味での裁判所をいう[2]。 ●官庁としての裁判所 官庁としての裁判所とは司法行政上の国家意思を決定しこれを表示する国家機関をいう[2]。裁判機関としての裁判所[編集]
実際にある個別的・具体的な争訟︵訴訟︶を審理する裁判体。裁判機関としての裁判所は当該裁判所の裁判官により構成される[3]。日本の裁判所[編集]
詳細は「日本の裁判所」を参照
司法権の帰属[編集]
日本国憲法第76条第1項は﹁すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。﹂とする。裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する[4]。
特別裁判所の禁止[編集]
日本国憲法第76条第2項前段は﹁特別裁判所は、これを設置することができない。﹂とする。日本国憲法が特別裁判所を禁じている趣旨は、法廷の平等︵公平・平等の原則︶、司法の民主化、法解釈の統一性を考慮したものである[5]。 日本国憲法にいう﹁特別裁判所﹂とは、特定の地域・身分・事件等を対象として通常の裁判所︵通常裁判所︶の系列から独立して設置される裁判機関をいう[5]。したがって、最高裁判所の系列下にある家庭裁判所や知的財産高等裁判所はこれにあたらない[5]︵家庭裁判所に関する判例、昭和31年5月30日最高裁大法廷判決刑集第10巻5号756頁︶。 憲法上の例外として、公の弾劾による罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために国会に設けられる弾劾裁判所がある︵日本国憲法第64条︶[5]。行政機関の終審での裁判禁止[編集]
日本国憲法第76条第2項後段は﹁行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。﹂とする。 終審でなければ行政機関が準司法手続を行うこともできる︵行政審判︶。アメリカ合衆国の裁判所[編集]
詳細は「アメリカ合衆国の司法制度」を参照
アメリカ合衆国では連邦制がとられており、連邦と州の二重の司法制度を有している[6]。
アメリカ合衆国憲法修正第10条は﹁本憲法によって合衆国に委任されず、また州に対して禁止されなかった権限は、それぞれの州または人民に留保される﹂としており、州裁判所は連邦裁判所から独立して管轄権を行使する[6]。
連邦裁判所は、アメリカ合衆国憲法、アメリカ連邦議会の制定法、これらを解釈する連邦裁判所判決によって特に与えられたものに限り管轄権を有する[6]。
連邦裁判所[編集]
詳細は「アメリカ合衆国連邦裁判所」を参照
●連邦最高裁判所︵Supreme Court︶
連邦最高裁判所はアメリカ合衆国の司法制度の頂点にある最上級裁判所である[7]。連邦及び州の裁判所からの最終上訴裁判所であるが、通常、憲法上の重大な新しい問題が提起されている場合と控訴裁判所間の判決が矛盾を生じている場合にのみ上訴が認められる[7]。このほか複数の州の間の争いのように、自らが第一審裁判管轄権を有する場合や専属管轄権を有する場合の訴訟も扱う[7]。
●連邦巡回控訴裁判所︵Court of Appeals︶
連邦地方裁判所の判決の審理、連邦地方裁判所の中間命令の審理、行政機関の決定の審理を管轄している[7]。米国には自動的上訴の制度がないため多くの争いの事実上の最終審となっている[7]。
●連邦地方裁判所︵District Court︶
米国における事実審裁判所であり、通常はここから訴訟が開始される[7]。連邦議会の制定法により、州法に関する争いのうち当事者間に州籍の違いがあり最低訴額の要件が満たされている場合、連邦法に関する争点が存在する場合の2種類について管轄権を有する[7]。
●特別裁判所
連邦議会は連邦請求裁判所など特定の種類の訴訟を扱う特別な連邦下級裁判所を創設している[8]。
州裁判所[編集]
詳細は「州裁判所 (アメリカ合衆国)」を参照
州によって州裁判所の種類や数は異なっている[8]。典型的には、最上級裁判所を頂点に、中間上訴裁判所、一般管轄裁判所︵事実審裁判所︶で構成されることが多い[8]。