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ブルー blue
16進表記
#0040FF RGB
(0, 64, 255) HSV
(225°, 100%, 100%)
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青い空
シャウエン の青い建物(モロッコ )
青い地球
青 ︵ あ お 、 靑 、 蒼 、 碧 ︶ は 基 本 色 名 の ひ と つ で 、 晴 れ た 空 の 色 や 海 の 色 、 瑠 璃 の よ う な 色 の 総 称 で あ る 。 青 は 英 語 の b l u e 、 外 来 語 の ブ ル ー に 相 当 す る 。 寒 色 の ひ と つ 。 ま た 、 光 の 三 原 色 の ひ と つ も 青 と 呼 ば れ る 。 青 色 ︵ セ イ シ ョ ク 、 あ お い ろ ︶ は 同 義 語 。
国 際 照 明 委 員 会 ( C I E ) は 4 3 5 . 8 n m の 波 長 を R G B 表 色 系 に お い て 青 ( B ) と 規 定 し て い る 。
﹁ あ お ﹂ は 緑 色 な ど の 寒 色 全 体 を 指 し て 用 い ら れ る こ と が あ り 、 こ の よ う に 青 と 緑 が 明 確 に 分 節 さ れ て こ な か っ た 言 語 は 世 界 に 例 が 多 い 。
ツユクサ の花 青の染料がとれる
青 と い う 基 本 色 名 は 、 そ の 他 多 く の 固 有 色 名 を 総 称 と し て 含 ん で い る 。
た と え ば 、 水 色 ︵ み ず い ろ ︶ ・ 空 色 ︵ そ ら い ろ ︶ と 呼 ば れ る よ う な 明 度 が 高 く 彩 度 の 低 い 、 淡 い 色 合 い の も の 、 紺 色 ︵ こ ん い ろ ︶ や 藍 色 ︵ あ い い ろ ︶ 、 群 青 色 ︵ ぐ ん じ ょ う い ろ ︶ な ど の 明 度 が 低 い 、 濃 い 色 合 い の も の な ど が 青 に 含 ま れ る 。 空 の 色 に は ﹁ 空 色 ﹂ と い う 固 有 色 名 が あ る に も か か わ ら ず 、 ﹁ 青 空 ﹂ と 呼 ぶ こ と な ど が 良 い 例 で あ る 。
現 代 の 青 に 相 当 す る 色 と し て 、 日 本 で は 伝 統 的 に は 藍 ︵ あ い ︶ や 縹 ︵ は な だ ︶ を 用 い て き た 。
こ れ は 、 日 本 に お い て 青 を 表 現 す る た め の 染 料 が 古 来 は ツ ユ ク サ で あ り 、 そ の 色 を 花 色 と 呼 ん だ こ と に 由 来 す る と 思 わ れ る 。 後 に は 染 料 と し て ア イ が 用 い ら れ る よ う に な り 、 藍 や 縹 が 青 系 統 の 色 を 表 す 総 称 と し て 定 着 し た 。 し か し 、 こ れ ら の 色 名 も 現 在 は 基 本 的 に 青 と 総 称 す る よ う に な り 、 藍 や 縹 は 固 有 色 名 と し て の 性 格 が 強 く な っ て い る 。
日 本 語 の ﹁ 青 春 ﹂ ﹁ 青 葉 ﹂ ﹁ 青 信 号 ﹂ と 同 じ く 、 現 代 の 中 国 語 で も 、 ﹁ 青 ﹂ と い う 字 は ﹁ 緑 ﹂ と 同 義 語 で あ る [ 1 ] ︵ 青 菜 ︵ チ ン ツ ァ イ ︶ 、 青 草 ︵ チ ン ツ ァ オ ︶ 、 青 椒 ︵ チ ン ジ ャ オ ︶ な ど ︶ 。 そ し て 、 ブ ル ー を ﹁ 藍 ﹂ 、 グ リ ー ン を ﹁ 緑 ﹂ 、 イ ン デ ィ ゴ を ﹁ 靛 ﹂ と 表 記 し て 区 別 す る 。 で も 、 ﹁ 青 色 ﹂ は シ ア ン の 意 味 。
用法例:「綠 燈(青信号)」「藍 天(青空)」[2] 「蔚藍 的大海(青々とした海)」(例外として、「青天」だけは、緑空ではなく青空のことを指す)
﹁ あ お ﹂ と 訓 じ ら れ る 漢 字 と し て 蒼 お よ び 碧 も あ る 。 こ れ ら も ま た 総 称 と し て の 青 の 範 疇 で あ る が 、 ﹁ 青 ﹂ よ り も 固 有 色 名 と し て の 性 格 が 強 い 。
蒼 は 、 干 し た 青 草 の よ う な 色 、 生 気 の 無 い 青 色 を 指 し 、 不 透 明 、 く す ん だ 青 色 を 意 味 す る 。 ﹁ 蒼 蒼 ﹂ は 、 あ お あ お と し た さ ま 、 草 木 な ど の 茂 る さ ま を 指 す [ 3 ] 。 中 国 で は 、 蒼 を 時 々 使 う 場 合 は 曇 り 空 、 遠 山 の よ う な く す ん だ 青 色 も し く は 灰 色 を 指 し 、 例 え ば " 蒼 茫 的 天 空 " 、 " 遠 山 蒼 蒼 " と い う 表 現 [ 4 ] や 、 ア オ サ ギ の よ う に 体 毛 が 灰 色 の 動 物 の 名 前 に 使 わ れ る 場 合 が あ る 。 こ の 点 で ﹁ 青 ﹂ ﹁ 碧 ﹂ ﹁ 藍 ﹂ と は 区 別 さ れ る 。
ウィクショナリーには、蒼 の項目があります。
一 方 、 碧 は 、 青 く 澄 ん で 見 え る 石 、 青 色 の 美 し い 石 の 意 味 が あ り 、 碧 空 、 碧 海 な ど の 言 葉 も あ る よ う に 美 し い も の を 表 す 色 と し て よ く 使 わ れ る 。 青 色 な い し 緑 色 を 表 す 。 ま た 無 色 の 奥 か ら 浮 き 出 す 青 緑 色 と あ る [ 5 ] 。 碧 は ﹁ み ど り ﹂ と も 読 む 。 そ の 場 合 、 ﹁ 青 ﹂ よ り も さ ら に 緑 色 に 近 い 色 で あ る こ と を 強 調 し て 用 い る ケ ー ス が 多 い 。 色 合 い と し て は ﹁ 青 緑 ﹂ に 近 く 、 ﹁ 青 ﹂ に 含 ま れ る が ﹁ 蒼 ﹂ や ﹁ 藍 ﹂ と は 確 か に 区 別 さ れ る 。 中 国 で は 、 特 に 玉 石 の 色 を 指 す [ 6 ] 。 ま た 日 本 で も 、 色 で は な く 宝 石 を 意 味 す る 漢 字 と し て も 使 わ れ て い る 。
日 本 語 の ﹁ あ お ︵ あ を ︶ ﹂ の 推 測 の 域 を 出 る よ う な 語 源 は 詳 ら か で な い が 、 ﹁ し ろ ﹂ ︵ 顕 色 ︶ ・ ﹁ く ろ ﹂ ︵ 暗 色 ︶ ・ ﹁ あ か ﹂ ︵ 明 色 ︶ と と も に 色 を 表 す 語 と し て 古 く か ら 用 い ら れ て き た も の で あ る 。 し か し 古 代 に お い て こ れ は 、 現 在 の 青 色 ・ 緑 色 ・ 紫 色 ・ 灰 色 の よ う な 非 常 に 広 い 範 囲 の 色 を 総 称 し て ︵ 漠 色 ︶ 用 い ら れ て い た と 考 え ら れ て い る [ 7 ] [ 8 ] 。 現 代 で も い く つ か の 語 に そ う し た 影 響 が 残 っ て お り 、 特 に 緑 色 を さ す ﹁ 青 ﹂ の 用 法 は 広 く 見 ら れ る 。
ま た 、 各 地 方 言 で ﹁ あ を ﹂ は 黄 色 ま で 指 し て い た と さ れ 、 ﹃ 大 日 本 方 言 辞 典 ﹄ に よ れ ば 、 青 森 ・ 新 潟 ・ 岐 阜 ・ 福 岡 ・ 沖 縄 と い っ た 地 方 で は 、 青 は 黄 も 意 味 し た 。
こ の よ う な こ と か ら 、 日 本 語 の 青 を 表 す 言 葉 の 色 度 範 囲 は 緑 〜 青 緑 〜 青 〜 青 紫 ま で 幅 が 広 い ほ か 、 一 部 ﹁ く ろ ﹂ ︵ 暗 色 ︶ と 重 複 す る ︵ ﹃ 青 毛 の 馬 ﹄ な ど ︶ 。
片 山 龍 峯 が 考 察 し た 一 説 と し て 、 日 本 語 の ア オ は ﹁ ア フ = 会 う ・ 合 う ﹂ 、 ま た は 、 そ の 連 用 形 の ﹁ ア ヒ = 間 ︵ 隣 合 う の 意 ︶ ﹂ と 関 連 し た 語 で あ り 、 ア イ ヌ 語 の ア フ ︵ 会 ︶ の 他 界 観 と も 関 連 す る も の と 捉 え ら れ て い る 。 龍 峯 に よ れ ば 、 ア オ と は 黒 と 白 の 範 囲 の 中 間 色 を 意 味 す る ﹁ 間 ︵ ア ヒ ︶ ﹂ か ら き て い る と さ れ ︵ 龍 峰 は さ ら に 現 世 と 他 界 の 中 間 の 意 に つ い て も 触 れ て い る ︶ 、 沖 縄 で も 青 は こ の ﹁ ア ヒ ︵ 間 ︶ ﹂ か ら 派 生 し た 語 で あ る と し て い る 。 し た が っ て 、 大 和 ・ ア イ ヌ ・ 琉 球 に お け る ﹁ ア オ ﹂ の 語 源 の 流 れ は 同 じ と こ ろ か ら 派 生 し た も の と 考 察 し て い る [ 9 ] 。
光の三原色。左の円が青(ブルー)
青 ( B l u e ) は 光 の 三 原 色 の ひ と つ で 、 カ ラ ー モ ニ タ ー や ウ ェ ブ サ イ ト 上 で 用 い ら れ 、 赤 ( R e d ) ・ 緑 ( G r e e n ) と 共 に 使 わ れ る た め R G B と 呼 ば れ る 。 こ の 場 合 の 青 は R G B 値 で 表 す と
( R , G , B ) = ( 0 , 0 , 2 5 5 )
で 表 さ れ 、 ウ ェ ブ ブ ラ ウ ザ で B l u e と 指 定 し た と き は 、 16 進 数 を 用 い て # 0 0 0 0 F F と し て 定 義 さ れ る ︵ 右 図 ︶ 。 色 合 い と し て は 日 本 語 の ﹁ 青 ﹂ か ら イ メ ー ジ す る 色 合 い よ り も や や 紫 み を 帯 び た 濃 い 青 色 ︵ 群 青 色 ︶ で あ る 。
ウ ェ ブ カ ラ ー と し て は さ ら に L i g h t B l u e 、 M e d i u m B l u e 、 D a r k B l u e の 三 色 が 以 下 の よ う に 定 義 さ れ て い る 。
現 在 の 印 刷 で 使 わ れ 青 は シ ア ン と 呼 ば れ る 。 プ ロ セ ス カ ラ ー の シ ア ン に は 最 も よ く 使 わ れ る の は 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン の β 結 晶 で あ る P i g m e n t B l u e 1 5 : 3 で 、 こ れ の 分 散 性 能 を 高 め た も の が 、 P i g m e n t B l u e 1 5 : 4 で あ る 。 ど ち ら も 、 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン 青 と し て は 緑 味 で あ る 。 ま た 、 光 の 三 原 色 の 青 に 色 合 い が 似 た 色 は 、 シ ア ン と マ ゼ ン タ で も 作 る こ と が で き る し 、 ﹁ 特 色 ﹂ と し て 別 の 色 を 使 う 方 法 も あ る 。
J I S の 規 格 で は 青 お よ び ブ ル ー が そ れ ぞ れ 定 義 さ れ て い る 。 こ の 両 者 の 色 は 微 妙 に 異 な る 色 と し て 定 義 さ れ て い る 。
実 際 の 色 の 違 い は 右 の 表 を 参 照 。
藍 は 太 古 よ り 使 用 さ れ て お り 、 現 在 で も 重 要 な 色 素 ︵ 染 料 ・ 顔 料 ︶ で あ る 。 現 在 よ り 遥 か に 高 級 で あ っ た 古 来 の 絵 画 な ど で 、 美 し い 紫 青 色 を 出 す 顔 料 に は 半 貴 石 ラ ピ ス ラ ズ リ を 原 料 と し た 顔 料 を 用 い た 。 こ れ は 海 の 彼 方 か ら 運 ば れ て き た の で ウ ル ト ラ マ リ ン と 呼 ば れ 珍 重 さ れ た 。 そ の 後 科 学 が 発 達 し 合 成 色 素 、 合 成 顔 料 が 生 産 さ れ る よ う に な っ た 。 1 7 0 4 年 に ド イ ツ で 作 ら れ た 紺 青 ︵ プ ル シ ャ ン ブ ル ー ︶ は 暗 い 青 色 顔 料 で あ り 、 最 初 の 合 成 顔 料 と さ れ て い る が 、 現 在 で も 生 産 さ れ て い る 。 青 色 顔 料 と し て 現 在 最 も 多 用 さ れ る の は 、 葉 緑 素 に 似 た 化 学 構 造 を 持 つ フ タ ロ シ ア ニ ン 青 で あ り 、 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン で あ る C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e 、 P i g m e n t B l u e 1 5 : 3 な ど が 上 述 シ ア ン と し て 使 用 さ れ て い る 。 な お プ ル シ ャ ン ブ ル ー や フ タ ロ シ ア ニ ン 青 よ り 明 る い 青 色 顔 料 と し て は コ バ ル ト 青 ︵ ア ル ミ ン 酸 コ バ ル ト ︶ や セ ル リ ア ン ブ ル ー ︵ 錫 酸 コ バ ル ト ︶ 、 コ バ ル ト ク ロ ム 青 、 コ バ ル ト - ア ル ミ - 珪 素 酸 化 物 ( O x i d e C o - A l - S i ) 、 酸 化 コ バ ル ト - 亜 鉛 - 珪 素 ︵ ‥ O x i d e C o - Z n - S i ︶ 、 マ ン ガ ン 青 、 バ ナ ジ ウ ム ジ ル コ ニ ウ ム 青 ︵ ト ル コ 青 ︶ 等 が あ る 。
ウルトラマリン青 Ultramarine Blue[ 編集 ]
合成ウルトラマリン青
瑠璃(ラピスラズリ)
現 在 よ り 遥 か に 高 級 で あ っ た 古 来 の 絵 画 な ど で 、 鮮 烈 で 深 い 青 色 を 出 す 顔 料 に は 半 貴 石 ラ ピ ス ラ ズ リ を 原 料 と し た 顔 料 を 用 い た 。 こ の 顔 料 は ウ ル ト ラ マ リ ン と 呼 ば れ 珍 重 さ れ た 。 フ ラ ン ス ・ イ タ リ ア で は 海 の か な た か ら 運 ば れ て き た 青 色 だ っ た の で フ ラ ン ス で は ﹁ b l u e o l t r e m a r e ﹂ と 、 イ タ リ ア で は ﹁ b l u o l t r e m a r e ﹂ と 呼 ば れ て い た 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e は P i g m e n t B l u e 2 9 で あ る [ 1 0 ] 。
人工ウルトラマリン青 Ultramarine Blue artificial[ 編集 ]
フレンチウルトラマリンとも言われる。極めて高彩度で、いかなる顔料でもこの色は再現できない。
天然ウルトラマリン青 Ultramarine Blue natural[ 編集 ]
ラピスラズリの原石を精製しウルトラマリン(ブルー)の絵具を作る技術は12、13世紀に発達したとされる。
瑠璃(ラピスラズリ)は精製せずに用いられたこともあった。
藍銅鉱
ア ズ ラ イ ト ( A z u r i t e ) は 鉱 石 の 藍 銅 鉱 、 つ ま り 塩 基 性 炭 酸 銅 よ り 得 ら れ る 天 然 の 青 色 顔 料 で あ る 。 15 世 紀 か ら 17 世 紀 中 ご ろ に か け て ヨ ー ロ ッ パ 絵 画 で 、 最 も 重 要 な 顔 料 で あ っ た こ と は 疑 い が な い [ 1 1 ] 。 緑 色 の 塩 基 性 炭 酸 銅 で あ る マ ラ カ イ ト と 共 存 し て い る こ と が よ く あ る 。 他 の 鉱 物 性 顔 料 と 同 様 、 粉 砕 し た も の を よ く 選 別 し た 後 、 水 洗 、 挽 い て 粉 に し 、 水 簸 ︵ す い ひ ︶ し て 製 品 と す る 。 細 か く 挽 く と 淡 色 に な り 着 色 力 も 弱 い の で 、 か な り 荒 め に 引 く 。 粗 粒 の ア ズ ラ イ ト は 紫 青 色 を し て い る 。 絵 画 に お け る ア ズ ラ イ ト の 変 色 は 、 ニ ス に よ る 見 か け 上 の 場 合 が 多 い 。 変 色 は こ の 顔 料 は 吸 水 し て マ ラ カ イ ト が で き る こ と が あ る 。 熱 と 温 ア ル カ リ で 黒 変 、 酸 に 対 し て は 、 酢 酸 で あ っ て も 溶 解 す る 。 た だ し 、 普 通 は 安 定 し て い る 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e は P i g m e n t B l u e 3 0 で あ る [ 1 0 ] 。
紺 青 は 1 7 0 4 年 に ド イ ツ で 作 ら れ た 青 色 顔 料 で あ り 、 最 初 の 合 成 顔 料 と さ れ て い る が 、 現 在 で も 生 産 さ れ て い る 。 通 常 、 紺 青 と 言 え ば プ ル シ ア ン ブ ル ー の こ と で あ る 。 鉄 青 [ 1 2 ] 、 ア イ ロ ン ブ ル ー ( I r o n B l u e ) [ 1 2 ] 、 プ ロ シ ア 青 な ど と も 呼 ぶ 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e は P i g m e n t B l u e 2 7 で あ る [ 1 0 ] 。
アルミ-コバルト 酸化物、アルミ-亜鉛-コバルト 酸化物、硅素-コバルト 酸化物、硅素-亜鉛-コバルト 酸化物などは、顔料として使用される。これらは青色を呈する複合酸化物顔料である。複合酸化物顔料 (mixed metal oxide pigment) とは、複数の金属酸化物を混合し、1000℃以上の高温で焼成した顔料である。複合酸化物顔料は着色力が小さいものの、耐熱性、耐候性に優れる。セラミックや耐熱塗料に使用される。焼成顔料 (calcination pigment) とも呼ばれる[13] 。
スマルト、コバルト青 (アルミ酸コバルト)、錫酸コバルト、コバルトクロム青、コバルト-アルミ-珪素 酸化物、コバルト-亜鉛-珪素 酸化物などがある。
スマルトは最古のコバルト 系顔料である。ガラス質の人工顔料で酸化コバルトを用い濃く着色した珪酸ガラスを粉砕したものである。Colour Index Generic NameはPigment Blue 32である[10] 。
コバルト青はアルミ酸コバルトであり、絵画用としては1800年代の中ごろから好んでよく使用されるようになった。絵画用としては、含水酸化クロムの絵具などと混合し用いられ、コバルトクロム緑などより美しい緑を作る。一般的には酸化コバルト1に対し、酸化アルミニウム4-6というものが多く、コバルト含有率はそれ程高くない。Colour Index Generic NameはPigment Blue 28である[10] 。
錫酸コバルトを、ラウニー商会が油絵具等に用いたのは、1860年代になってのことである。そのときの名称が「セルリアン」であり、現在でもラウニーは「セルリアン」の名称で販売している。錫酸コバルトは透過光では緑青色になる特異な色合いの青色顔料である。英語のceruleanは「青空色」を意味する[14] 。Colour Index Generic NameはPigment Blue 35である[10] 。
コバルトクロム青 Cobalt Chromium Blue[ 編集 ]
コバルトとクロムを含む酸化物固熔体で、堅牢性は極めて高く、絵画技法をはじめ、耐熱性を要求される分野、例えば窯業に至る広い用途を持っている。コバルトクロム緑の変種でクロム含有量が少ないもの。Colour Index Generic NameはPigment Blue 36である[10] 。
ケイ酸コバルト亜鉛青 Cobalt Zinc Silicate Blue[ 編集 ]
ケイ酸コバルト亜鉛青 は、コバルト-亜鉛-珪素酸化物である。紫青色の顔料で隠蔽力は高くない。重要な用途は現在のところ存在しないが、絵具における濃色コバルト青を代替している傾向にあり、「コバルトブルー ディープ」の名で顔料や絵具として流通している。Colour Index Generic NameはPigment Blue 74である[10] 。
アルミ-珪素-コバルト 酸化物 を参照。紺青と呼ばれる。
マンガン青は極めて赤味の少ない青色顔料である。1930年代から工業的に製造されるようになった。特異な色相を持ち、現在でも他の顔料・染料で代替できない色合いをしている。環境配慮のために現在製造されていない。Colour Index Generic NameはPigment Blue 33である[10] 。
インディゴ
藍 は 植 物 で あ る 藍 か ら 取 れ る 青 藍 の 色 料 で あ る 。 現 在 で は 合 成 藍 が 存 在 し 組 成 は 同 じ で あ る 。 た だ し 、 植 物 で あ る 藍 は 微 量 な が ら 赤 紫 の 染 料 も 含 ん で い る 。 こ れ を 集 め て 赤 紫 に 染 色 す る こ と も 不 可 能 で は な い が 合 理 的 で な い 。 藍 は 染 料 と し て 認 知 さ れ 染 色 に 使 用 さ れ る が 、 顔 料 で あ り 、 体 質 顔 料 に 定 着 さ せ る 等 の 処 理 を せ ず に 顔 料 と し て 使 用 さ れ る 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e は P i g m e n t B l u e 6 6 、 V a t B l u e 1 及 び N a t u r a l B l u e 1 で あ る [ 1 0 ] 。
フタロシアニンの銅錯体
青 色 顔 料 と し て 現 在 最 も 多 用 さ れ る の は 、 葉 緑 素 に 似 た 化 学 構 造 を 持 つ フ タ ロ シ ア ニ ン で あ る 。 1 9 3 3 年 、 I C I ︵ イ ン ペ リ ア ル ケ ミ カ ル イ ン ダ ス ト リ ー ズ ︶ 社 の リ ン ス テ ッ ド た ち が フ タ ロ シ ア ニ ン と 命 名 、 1 9 3 5 年 に 工 業 化 さ れ 、 モ ナ ス ト ラ ル ブ ル ー の 名 で 商 品 顔 料 に な っ た 。 ア メ リ カ で は 、 1 9 3 6 年 に 別 の 名 で 取 引 が 始 ま る 。 鮮 明 で 着 色 力 が 非 常 に 強 く 、 プ ロ シ ア 青 の 倍 程 の 着 色 力 が あ る 。 濃 色 で は 赤 味 が 強 い が 淡 色 で は 赤 味 が 減 じ る 。 有 機 溶 剤 に は 溶 解 し な い 。 濃 硫 酸 塩 酸 以 外 の 酸 、 ア ル カ リ に は 溶 解 し な い 。 酸 化 剤 、 還 元 剤 に も 耐 性 が あ る 。 赤 と 黄 の 光 を 殆 ど 吸 収 し 緑 と 青 の 光 を 反 射 す る の で 、 三 色 印 刷 に 求 め ら れ る 、 理 想 的 な 純 粋 の 青 に 極 め て 近 い も の に な る 。 絵 具 と し て 商 品 化 さ れ た の は 1 9 3 6 年 に 商 品 化 さ れ た す ぐ 後 で あ る 。 フ タ ロ シ ア ニ ン 青 で あ る 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e P i g m e n t B l u e 1 5 : 3 な ど が 印 刷 以 外 で も 、 色 の 三 原 色 の ひ と つ と い う 認 識 の 下 使 わ れ る こ と が あ る 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e に は 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン の P i g m e n t B l u e 1 5 [ 1 0 ] 、 無 金 属 フ タ ロ シ ア ニ ン の P i g m e n t B l u e 1 6 [ 1 0 ] 、 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン の P i g m e n t B l u e 7 6 等 が 記 載 さ れ て い る [ 1 0 ] 。 他 に も ア ル ミ ニ ウ ム フ タ ロ シ ア ニ ン 等 様 々 あ る 。 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン も 無 金 属 フ タ ロ シ ア ニ ン も 良 く 用 い ら れ る 。
フ タ ロ シ ア ニ ン の ベ ン ゼ ン 環 に ス ル ホ ン 基 を 導 入 し て 可 溶 性 色 素 ︵ 染 料 ︶ と し 、 金 属 塩 を 用 い て レ ー キ 化 し た も の は 、 鮮 明 で 安 価 な の で 学 童 用 に 用 い ら れ る こ と が あ る 。 し か し 、 耐 光 性 に 劣 り 、 油 絵 具 化 す る と ブ リ ー ド ︵ 滲 出 ︶ す る 。
フ タ ロ シ ア ニ ン 緑 は フ タ ロ シ ア ニ ン 青 に 続 い て 開 発 さ れ 、 塩 素 化 銅 フ タ ロ シ ア ニ ン は 1 8 3 8 年 に 商 品 化 さ れ た 。 C o l o u r I n d e x G e n e r i c N a m e に は P i g m e n t G r e e n 7 [ 1 5 ] 、 臭 素 化 塩 素 化 フ タ ロ シ ア ニ ン の P i g m e n t G r e e n 3 6 [ 1 5 ] 、 臭 素 化 塩 素 化 亜 鉛 フ タ ロ シ ア ニ ン の P i g m e n t G r e e n 5 8 が 記 載 さ れ て い る 。 液 晶 テ レ ビ を 含 む 液 晶 デ ィ ス プ レ イ の カ ラ ー フ ィ ル タ の 緑 に は 、 構 成 要 素 と し て P i g m e n t G r e e n 3 6 が 使 わ れ て い る 。
パ イ エ ン ネ 湖 の 日 入 り の 空 と 水 面 。 青 が 散 乱 さ れ た 結 果 、 夕 焼 け は 赤 み を 帯 び る 。 斜 め か ら 見 た 水 面 は 空 の 色 を 映 し 出 し て そ の 色 合 い を 変 え る 。
ス ク ー バ ダ イ ビ ン グ 中 に 海 面 を 見 上 げ る と 見 え る デ ィ ー プ ブ ル ー ︵ タ イ の S i m i l a n に て ︶
オ ス の ク ジ ャ ク の 羽 。 イ リ デ ッ セ ン ス に よ り 角 度 に よ っ て 色 が 変 化 す る 。
人 々 が 自 然 の 中 で 最 も 身 近 に 接 す る 晴 れ た 空 の 青 色 は 、 光 の 波 長 よ り 小 さ な 空 気 分 子 が 短 い 波 長 を よ り 多 く 散 乱 す る レ イ リ ー 散 乱 に よ る も の で あ る 。 日 中 は 太 陽 の 光 の う ち 波 長 の 短 い 青 色 が 多 く 散 乱 さ れ て わ れ わ れ の 目 に 届 く た め 青 く 見 え る [ 1 6 ] 。 こ の 青 空 の 色 の 原 因 に つ い て は 、 そ れ が あ ま り に 日 常 的 で あ っ た た め 古 代 に は あ ま り 注 目 さ れ て こ な か っ た 。 そ れ が 説 明 さ れ る べ き も の と 考 え ら れ る よ う に な っ た の は ル ネ サ ン ス 以 降 で あ る [ 1 7 ] 。
晴 れ た 日 に 海 な ど 屋 外 の 水 面 を 斜 め か ら 見 た と き そ れ ら は 青 く 見 え 、 通 常 海 は 青 い も の と 思 わ れ て い る 。 こ う し て 目 に す る 青 さ の ほ と ん ど は 、 青 空 が 映 っ て い る か ら で あ り 、 他 の 状 況 で は 海 は さ ま ざ ま な 色 を 呈 す る 。 た だ し 、 水 は 長 波 長 の 可 視 光 を よ り 多 く 吸 収 す る の で 、 海 中 で 物 は 青 っ ぽ く 見 え 、 ま た 、 海 中 の 浮 遊 物 や 、 あ る 程 度 の 深 さ の あ る サ ン ゴ 礁 の よ う な 明 る い 海 底 に 当 た っ て 反 射 し て き た 光 も そ れ そ の も の が 青 く 見 え る [ 1 8 ] 。
花 の 色 素 と し て は 青 色 は 比 較 的 ま れ で あ る 。 と く に カ ー ネ ー シ ョ ン や バ ラ な ど に お い て は 交 配 に よ っ て 青 い 花 を 咲 か せ る 品 種 を 作 り 出 す こ と が 困 難 で あ り 、 近 年 で は 遺 伝 子 操 作 に よ っ て 作 り 出 そ う と す る 研 究 が 行 わ れ て い る 。 青 い バ ラ に つ い て は 、 不 可 能 ・ 幻 を 表 す 代 名 詞 と も な っ て い る [ 1 9 ] 。 ち な み に 、 花 色 と い う 色 名 は 青 色 の 一 種 で あ る が 、 こ れ は ツ ユ ク サ の 花 の 色 と さ れ る 。
鳥 の 羽 の 鮮 や か な 色 は 様 々 な 方 法 で 作 り 出 さ れ て い る が 、 青 色 の 場 合 は 青 空 と 同 じ よ う に 選 択 的 な 散 乱 を 用 い て い る こ と が 多 い 。 た だ し ク ジ ャ ク の 羽 は チ ョ ウ と 同 じ く 光 の 干 渉 を も ち い た イ リ デ ッ セ ン ス に よ る 色 で あ る [ 2 0 ] 。 色 名 の 孔 雀 青 は 緑 が か っ た 青 色 を 意 味 す る が 、 実 際 の ク ジ ャ ク の 羽 は 光 線 の 状 態 や 角 度 に よ り 様 々 に 輝 き を 変 え る 。
月 は 極 め て ま れ に 青 み が か っ て 見 え る こ と が あ る 。 過 去 に 大 規 模 な 森 林 火 災 や 火 山 噴 火 で 上 空 に チ リ が 巻 き 上 げ ら れ た と き に 観 測 さ れ て お り 、 1 μ m 程 度 の チ リ が 赤 や 黄 色 の 長 波 長 の 光 を 多 く 散 乱 す る た め に 起 こ る 。 火 星 の 夕 焼 け も 同 様 の 理 由 で 青 い 。 こ う し た こ と か ら 、 英 語 で ブ ル ー ム ー ン ( b l u e m o o n ) は 極 め て ま れ な こ と を 意 味 す る こ と に な っ た 。 な お 、 誤 解 か ら ひ と 月 に 2 度 目 の 満 月 も 実 際 の 色 に か か わ り な く ブ ル ー ム ー ン と よ ば れ る 。
青 色 が 寒 色 で あ る と い う イ メ ー ジ と は 裏 腹 に 、 オ リ オ ン 座 β 星 ・ リ ゲ ル な ど 青 み が か っ て 見 え る 星 は 、 通 常 、 他 の 星 よ り 温 度 が 高 く 質 量 が 大 き な 若 い 青 色 超 巨 星 や 青 色 巨 星 で あ る 。 寿 命 は 数 千 万 年 か そ れ 以 下 と 短 く 、 わ れ わ れ の 太 陽 の よ う な よ り 長 い 寿 命 の 星 か ら み れ ば 、 ひ と 時 だ け 激 し く 輝 い て 去 っ て い く 星 で あ る 。 最 後 に は 超 新 星 爆 発 を 起 こ し て 中 性 子 星 や ブ ラ ッ ク ホ ー ル に な る と 考 え ら れ て い る 。 リ ゲ ル 同 様 青 白 く 輝 く お お い ぬ 座 α 星 ・ シ リ ウ ス は 超 巨 星 や 巨 星 で は な く 主 系 列 星 だ が や は り 表 面 温 度 は 高 温 で 、 そ の 青 白 い 輝 き か ら ﹁ 青 星 ﹂ と い う 和 名 を 持 つ 。 ま た 炎 で も 、 比 較 的 温 度 の 高 い ︵ 酸 素 供 給 量 が 多 い ︶ ほ う が 青 く 見 え る 。
食 物 の 色 と し て の 青 に つ い て は 、 着 色 料 で チ ョ コ レ ー ト や こ ん ぺ い と う な ど の 菓 子 を 青 く 着 色 す る こ と は あ る が 、 自 然 界 に 存 在 す る も の と し て は 青 魚 ぐ ら い し か な く 、 青 野 菜 は 緑 色 で あ る 。
ペルガモン博物館 に復元されているバビロンのイシュタル門(前6世紀)
ジョット 『ラザロの復活』。14世紀ジョットにおいて初めて空が青く彩色された。それまでは主に金色が用いられていた。
洋 の 東 西 を 問 わ ず 古 代 に は 青 色 は 日 常 と 異 な っ た 別 世 界 の 色 と さ れ る 傾 向 が あ り 、 日 常 の 世 界 で は 重 要 な 役 割 を 果 た さ な い か 、 と き に 死 体 の 色 を 連 想 さ せ る こ と な ど か ら 忌 避 さ れ る 色 で も あ っ た [ 2 1 ] 。 石 器 時 代 を 通 じ 、 青 は 作 り 出 す こ と も 難 し く 、 青 く 染 色 さ れ る も の は ほ と ん ど な か っ た 。 黒 に 対 し 、 明 る さ を 担 う 白 、 鮮 や か さ を 担 う 赤 と い う 多 く の 古 代 社 会 で の 3 つ の 基 本 色 に 対 し 、 青 は 象 徴 的 意 味 の 弱 い そ の 他 の 色 に 甘 ん じ 、 色 の 分 類 的 機 能 に 加 わ る こ と も 少 な か っ た [ 2 2 ] 。 ヨ ー ロ ッ パ で は こ う し た 傾 向 は 12 世 紀 ご ろ ま で 続 い た 。
古 代 ギ リ シ ャ で は 色 相 を 積 極 的 に 表 す 語 彙 そ の も の が 少 な か っ た 。 青 色 を 表 す た め に は 2 つ の 言 葉 、 キ ュ ア ノ ス ( k y a n o s , κ υ α ν ό ς ) と グ ラ ウ コ ス ( g l a u k o s , γ λ α ύ κ ο ς ) が 用 い ら れ た が そ の 意 味 は 曖 昧 で あ る 。 前 者 の キ ュ ア ノ ス は シ ア ン ( c y a n ) の 語 源 で ラ ピ ス ラ ズ リ の 深 い 青 色 を さ し て 用 い ら れ た も の の 、 む し ろ 明 度 の 低 い 暗 さ を 意 味 し 、 黒 色 、 紫 色 、 茶 色 を も 表 し た [ 2 3 ] 。 ホ メ ロ ス は そ の 深 み を 神 秘 的 な も の や 、 恐 ろ し げ な も の 、 ま た は 珍 し い も の を 形 容 す る の に 好 ん で 使 用 し て い る [ 2 4 ] [ 2 5 ] 。 一 方 、 グ ラ ウ コ ス は 瞳 や 海 の 形 容 と し て 用 い ら れ た が 、 青 色 、 緑 色 、 灰 色 、 と き に 黄 色 や 茶 色 を も 表 し 、 む し ろ 彩 度 の 低 さ を 意 味 し て い た [ 2 6 ] 。 緑 内 障 を 表 す 英 語 グ ロ ー コ ー マ ( g l a u c o m a ) の 語 源 は こ の グ ラ ウ コ ス で あ り 、 多 く の 場 合 、 失 明 の 危 機 を も た ら す 緑 内 障 な ど の 疾 患 を わ ず ら っ た く す ん だ 瞳 の 色 を 表 す の に 用 い ら れ て い る [ 2 7 ] 。
古 代 ロ ー マ で も 青 は あ ま り 注 目 さ れ ず 、 青 と さ れ る ラ テ ン 語 の カ エ ル レ ウ ス ( c a e r u l e u s ) は む し ろ 蝋 の 色 、 あ る い は 緑 色 、 黒 色 を 表 し て い た [ 2 8 ] 。 ロ ー マ で は 青 は 喪 服 の 色 で あ り 、 何 よ り ケ ル ト 人 や ゲ ル マ ン 人 な ど の 野 蛮 さ を 象 徴 す る 憎 む べ き 、 も し く は 回 避 す べ き 色 で あ っ た 。 例 え ば 、 青 い 瞳 を 持 つ こ と は 醜 さ の ひ と つ の よ う に み な さ れ 、 タ キ ト ゥ ス は 青 く 体 を 染 め た ブ リ ト ン 人 の 軍 隊 を ﹁ 幽 霊 の 軍 隊 ﹂ と 呼 び [ 2 9 ] 、 大 プ リ ニ ウ ス は ブ リ ト ン 人 の 女 性 が 体 を 青 く 染 め 忌 ま わ し い 儀 式 を 行 う と 主 張 し た [ 3 0 ] 。 古 代 ギ リ シ ャ 、 古 代 ロ ー マ と も 虹 の 色 を さ ま ざ ま に 分 類 し た が そ こ に 青 が 加 え ら れ る こ と は な か っ た [ 3 1 ] 。
中 国 で も 青 は 人 の も の で は な い と い う 意 味 合 い が あ っ た 。 道 教 で あ の 世 と こ の 世 を 結 ぶ 門 で あ る と さ れ る 中 国 豊 都 鬼 城 の 門 は 青 色 に 塗 ら れ て お り 、 手 を 触 れ る と 死 期 が 近 づ く さ れ る [ 3 2 ] 。
他 の 民 族 で は 、 藍 で 青 く 染 め る こ と が 行 わ れ 、 青 な い し 緑 は 神 秘 さ や 異 世 界 の 色 を 表 し も し た 。 中 東 や エ ジ プ ト で は 魔 除 け の 色 で あ り 、 ま た 死 者 を 守 る 葬 儀 や 死 と 結 び つ い た 色 で も あ っ た [ 3 3 ] 。 バ ビ ロ ン の イ シ ュ タ ル 門 は 青 い 彩 釉 煉 瓦 で 彩 ら れ 、 イ ン ド の カ ー リ ダ ー サ は シ ヴ ァ 神 の 肌 の 色 を 青 と 表 し た [ 3 4 ] 。 ﹃ 旧 約 聖 書 ﹄ で は 翻 訳 に よ る 色 彩 用 語 の 変 遷 が 大 き い も の の [ 3 5 ] 、 神 の 足 元 も し く は 玉 座 に は 青 い サ フ ァ イ ア が あ っ た [ 3 6 ] [ 3 7 ] 。
そ の 後 、 ヨ ー ロ ッ パ で は 12 世 紀 に 青 は そ れ ま で の 控 え め な 地 位 を 捨 て 、 数 十 年 の う ち に 最 も 美 し い 色 だ と さ れ る ま で に な る 大 変 化 を 遂 げ た 。 こ の 時 期 、 絵 画 の 中 の 聖 母 マ リ ア の 服 装 は 喪 に 服 す 暗 い 青 や 黒 か ら 明 る い 青 へ と 変 化 し 、 マ リ ア 崇 敬 と と も に 青 の 地 位 も 向 上 し て い く こ と に な っ た [ 3 8 ] 。
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(21) ^ P e s i c , p . 3 f .
(22) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p p . 1 0 . 1 2 f f .
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(26) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p . 2 3 .
(27) ^ “ T h e M e a n i n g o f G l a u k o s ” . D i e n e k e s ' A n t h r o p o l o g y B l o g ( 2 0 0 3 年 5 月 8 日 ) . 2 0 0 9 年 12 月 28 日 閲 覧 。 特 に そ こ で 引 用 さ れ て い る M a x w e l l - S t u a r t , P . G . ( 1 9 8 1 ) . S t u d i e s i n G r e e k C o l o u r T e r m i n o l o g y . 1 . L e i d e n : B r i l l
(28) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p . 2 4 f .
(29) ^ P e s i c , p . 4 .
(30) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p . 2 6 .
(31) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p . 2 8 f f .
(32) ^ P e s i c p . 3 f .
(33) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p . 1 4 f . p . 2 2 .
(34) ^ T h e O r i g i n o f t h e Y o u n g G o d : K a l i d a s a ' s K u m a r a s a m b h a v a . B e r k e l e y : U n i v e r s i t y o f C a l i f o r n i a P r e s s . ( 1 9 8 5 )
(35) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p p . 1 6 f f , 1 9 f f .
(36) ^ P e s i c . p . 2 5 .
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(38) ^ パ ス ト ゥ ロ ー 、 p p . 5 0 , 5 2 f f .