VoLTE
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VoLTE︵英語: Voice over LTE, Voice over Long Term Evolution、ヴォイス・オーバー・LTE︵ロング・ターム・エボリューション︶、ヴォルテ、ボルテ︶とは、携帯電話に利用されるデータ通信技術、及び通信技術規格の名称である。
LTE網は高速なパケット交換が可能であるが、音声通話のための回線交換を想定していない。そこで、IP電話のように音声およびビデオ通信をデータ︵パケット︶として取り扱い、LTE網で音声通話およびビデオ通信を実現するための技術としてGSMAで標準化が進められている[1]のがVoLTEである。インターネットを経由する一般的なVoIPではQoS保証がなく遅延が発生しやすいが、VoLTEではQoS保証による優先制御で遅延を抑えている。また、広帯域な音声コーデックの採用によって従来の第3世代移動通信システムを上回る通話品質を得られる[2]。
概要[編集]
VoLTEは、IPマルチメディアサブシステムでLTEが音声を取り扱えるようにするためGSMAが規格文書PRD IR.92で定義した手法である[3]。 VoLTEの特徴は以下の通りである。 ●LTEデータベアラ内で音声サービス︵コントロールプレーン、メディアプレーン︶をデータフローとして転送できる。これにより、従来の回線交換網に依存する必要がなくなる。 ●3G UMTSの3倍以上、2G GSMの6倍以上のデータ容量を有する。またVoLTEパケットのヘッダは通常のVoIP/LTEのヘッダより小さいため、帯域幅を有効活用できる[4]。 ●新しいコーデック︵AMR-WB、EVS︶の採用により音声品質が向上する。 ●通話中の高速LTEデータ通信が可能。 携帯電話事業者を跨いだ高音質通話には事業者間のIP回線上での相互接続が必要となる。なお、発信あるいは着信の片側のみがVoLTE対応していた場合やIP回線上での相互接続がない他事業者間であっても、電話機から基地局や契約事業者までの音声通信はVoLTEで接続され、高音質通話以外の部分︵発着信の高速化や通話中のLTEデータ通信など︶においてVoLTEのメリットを享受できる[5]。また、PHS、固定電話相手など、それまで携帯電話側のコーデック︵EVRC-B、AMR-NBなど︶が音質のボトルネックになっていた場合は、その分の音質改善が期待できる。 国際ローミング中のVoLTE利用についても携帯電話事業者間の接続協定が必要となり、徐々に進められている。日本でのサービス[編集]
日本では、NTTドコモが2014年6月24日から[6]、KDDI・沖縄セルラー電話連合︵各au︶が同年12月12日から[7]、ソフトバンクモバイルが同年12月19日から[8]、それぞれVoLTEサービスを開始している。いずれもVoLTEの読みとしては﹁ボルテ﹂を使用している[9][10][11]。 各社とも音声コーデックとしてAMR-WBのみ対応していたが、ドコモやソフトバンクはさらに高音質なEVSコーデックにも対応したVoLTE︵HD+︶を提供開始している[9][12]。 auはこれを機に端末やSIMカードからPLMNに至るまでVoLTE専用のネットワークを構築し、CDMA2000からVoLTEに巻き取る方向へ大きく舵をきった。 ソフトバンクでは当初LTEエリア内からの発信であっても、110番通報などの緊急通報用電話番号に関しては3Gにフォールバックされて発信される仕様[13]だったが、2017年2月1日までにVoLTEのまま発信されるように改善されている[14]。 事業者を跨ぐ高音質通話については長らく実現していなかったが、IP回線やSIPを処理できる交換機の開発などを経て、2018年10月のNTTドコモ - ソフトバンク間を皮切りに順次相互接続が進められている[15][16]。 また、NTT東西地域会社の公衆交換電話網も2024年1月からIP方式による相互接続を開始している。脚注[編集]
(一)^ Voice and Video calls over LTE
(二)^ “ASCII.jp‥ドコモで始まるVoLTEってなに?それってメリットあるの?︵2/2︶”. ASCII.jp (2014年5月16日). 2014年12月26日閲覧。
(三)^ Nick Russell (2013年3月3日). “Official Document IR.92 - IMS Profile for Voice and SMS” (PDF). GSMA. 2014年9月14日閲覧。
(四)^ Elkin, Ed (2014年4月10日). “The Secret Value of VoLTE”. TMCnet 2014年9月14日閲覧。
(五)^ 音質向上、通話しながらサクサク通信﹁VoLTE﹂、ドコモが6月末に
(六)^ “国内初、VoLTEの提供を開始”. NTTドコモ (2014年6月18日). 2015年2月15日閲覧。
(七)^ “次世代音声通話サービス﹁au VoLTE﹂の提供開始について”. KDDI (2014年10月27日). 2015年2月15日閲覧。
(八)^ “﹁VoLTE﹂による音声通話サービスの開始について”. ソフトバンクモバイル (2014年12月12日). 2015年2月15日閲覧。
(九)^ ab“VoLTE/VoLTE︵HD+︶”. NTTドコモ. 2022年7月4日閲覧。
(十)^ “au VoLTE︵ボルテ︶”. au. KDDI. 2022年7月4日閲覧。
(11)^ “﹇用語集﹈VoLTEとは何ですか?”. ソフトバンク. 2022年7月4日閲覧。
(12)^ “VoLTE/VoLTE︵HD+︶”. ソフトバンク. 2022年7月4日閲覧。
(13)^ “﹁VoLTE﹂オプション提供条件書”. SBパートナーズ (2016年12月2日). 2017年3月31日閲覧。
(14)^ “﹁VoLTE﹂オプション提供条件書”. ソフトバンク (2017年2月1日). 2017年3月31日閲覧。
(15)^ “他キャリアとのVoLTE通話、ドコモ、ソフトバンクは10月から順次開始 - ケータイ Watch”. インプレス (2018年12月10日). 2019年4月25日閲覧。
(16)^ “テクニカル・ジャーナル Vol.26 No.3” (PDF). NTTドコモ (2018年11月). 2019年4月25日閲覧。
参考文献[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- VoLTE - IT用語辞典 e-Words
- KDDI田中社長インタビュー:VoLTEはオールLTEですでに「Ready」、社員に6500台の試験機、ドブ板VoLTEテスト - Engadget 日本版
- 『ドコモで始まるVoLTEってなに? それってメリットあるの?』 - ASCII.jp
- VoLTE/VoLTE(HD+) - NTTドコモ
- au VoLTE(ボルテ) - au
- VoLTE/VoLTE(HD+) - ソフトバンク
- Enhanced Voice Services Codec for LTE - 3GPP