棄轎
田中貢太郎
「ほう」
それは見る眼にも
「
それにしても、
「これは、どうも」
農夫はあわてて垂れをおろそうとしたところで、女がちらとこっちを見た。同時に農夫はのけぞった。
「わ」
それは眼も鼻も口もないのっぺらぽうの顔であった。農夫は転げるように逃げ帰ったが、それから病気になって死んでしまった。
その農夫が怪しい轎を見た日のこと、それから数分と
底本:「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」学研M文庫、学習研究社
2003(平成15)年10月22日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」改造社
1934(昭和9)年
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2010年10月20日作成
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