そのわかき羊は誰に似たるぞの
あえかなる白きうすものまなじりの火かげの
山房の雨
六甲苦楽園の雲華庵に宿りて
津の国の武庫の山辺の
細々と、つつましやかに、
歩みくる村雨のおと。
高原の
猶しばし枕しながら、
そを聴けば静かに楽し、
おそらくは、青き
水晶の靴を穿きつつ、
打むれて山に遊べる
谷の精、それか、あらぬか。
戸を開けて打見下ろせば、
しら雲の
をちかたに遠ざかりゆく
あかつきの山の村雨。