おもはずや夢ねがはずや
君さらば
西部利亜所見
汽車は吼ゆ。
されどシベリヤの
雪と氷の原を行く汽車は
胴体こそ巨大の象のやうなれ、
この怪獣は石炭の
薪のみを食らへば、
吼ゆる声の力無く、
のろのろと
今停まれるは何と云ふ駅か知らず。
人の
落葉したる白楊の木
其処此処に聳えて、
灰色の低き空の
五月の風猶雪を散らせり。
汽笛の叫びに引かれて、
男、女、子供、
すべて靴を穿かぬ
シベリヤの農民等は
手に手に、
鶏を、牛乳を捧げて、
汽車の窓に馳せ寄り、
かしましく買へと云ひぬ。
〔無題〕
わたしの庭の高い木に
秋が琴をば掛けにきた。
翡翠を
風は勝れた弾手にて、
人の心の奥にある
弧独の夢をゆり起し、