山の上、巌穴の間に、神聖なる隠遁者等分かれゐる。
合唱の声と
絡み附く木の根。
幹と幹とはひたと並べり。
谷川は波立ちて
いと深き
獅子は
我等の
尊き境を、
感奮せる師父
(虚空を昇降しつゝ。)
とはなる
燃ゆる愛の契。
沸きかへる胸の
泡立つ神の
槍よ。我を刺せ。
杖よ。我を砕け。
雷火よ。我を焼け。
とはなる愛の
とはなる星を照らしめよ。
沈思せる師父(低き所にて。)
深き谷底の上に、
わが
千筋の
恐ろしき滝のしぶきと、流れ落つる如く、
おのが強き力もて、
木の幹の
大威力の愛現前せり。
森も
激する水音は身の
怒号しつゝも心優しく、
谷間の土を肥やさんため、
その豊かなる滝の水は滝壺にぞ流れ落つる。
毒ある霧を懐ける
下界の空気を浄めんため、
雷火は
こは皆愛の使なり。
この身の
あはれ、その力よ。鈍き官能の埒に限られ、
冷かに、糾紛せる霊の
わが胸のうちをも照せよかし。
あはれ、神よ。わが思量を
わが
天使めく師父(高低の中間の所にて。)
や。あの髪の毛のゆらめくような樅の木立の
靡いて来る暁の雲はなんだろう。
あの雲の
あれは穉い
合唱する
お父うさん。わたくし共はどこを飛んでいますか。
わたくし共は
誰にも、誰にもこの世が、ほんに
天使めく師父
子供達。夜なかに生れて、
精神や官能の半分醒めた子供達。
両親がすぐ亡くした
天使の群が儲物をした子供達。
愛する人が
お前達も感じているだろう。
兎に角、為合せもの共、
世間の艱難は少しも知らないのだな。
己の目と云う、
この世で用に立つ道具の中へ降りて来い。
そして己の目を我物にして使って、
この土地の様子を見ろ。
(師父童子等を目の中に受け容る。)
あれが木だ。あれが岩だ。
あれが落ちて行って、
恐ろしい瀬になって、
嶮しい道を縮める水の流だ。
神々しき童子等(目の中より。)
でもここは余り陰気です。
恐ろしくて体が震えます。
天使めく師父
そんなら段々高い世界へ昇って行け。
そして神様が
力を添えて下さるのだから、いつも浄い
いつとなく次第に大きくなるが
それが広大な
霊共の
それが広がって神々しさになる、
永遠な愛の啓示だ。
合唱する神々しき童子の群
(山の絶頂をめぐりつゝ。)
うれしく
手を輪に
繋ぎて動き、
尊き心を歌へ。
さて汝達が敬ふ神を
拝むことを得ん。
天使等
(ファウストの不死の霊を載せてやゝ高き空中に漂ふ。)
悪の手から、
霊の世界の尊い一人が救われました。1
「誰でも、断えず努力しているものは、
われ等が救うことが出来る。」
それにこの人には
上の
神々しい群が
やや未熟なる天使等
愛して下さる、
わたくし共を助けて勝たせてくれました。
この霊の宝を手に入れる
大きい
わたくし共がそれを
わたくし共がそれを中てると、魔が逃げました。
慣れた地獄の刑罰の
悪霊共が愛慾を起しました。
あの年の寄った悪魔の先生でさえ
鋭い苦痛を身に覚えました。
さあ、凱歌を挙げましょう。
やや成熟せる天使等
どうもわたくし共には
下界の屑を
よしやその屑が石綿で出来ていても、
清浄ではございません。
強い霊の力が
元素を
掻き寄せて、持っていると、
霊と物との二つが密接して
一つになった両面体を割くことは、
どの天使にも出来ません。
それを分けることの出来るのは、
ただ永遠な愛ばかりでございます。
やや未熟なる天使
岩山の
それから
霊共の振舞が
今わたくしに感ぜられます。
雲が澄んで来て、
神々しい子供達の賑やかな群が、
わたくしに見えます。
下界の
輪になって集って、
天上の
新しい春と
子供達でございます。
この人も、追々すっかり
最初はちょっと
この子供達と一しょになるが宜しゅうございましょう。
神々しい童子等
わたくし共は喜んでお
そういたすと、わたくし共は
天使の
この
取って上げて下さい。
もうこれで
美しく、大きくおなりなさいました。
マリアを敬う学士
(最高き、最浄き
ここは展望が自由に利いて、
心が高尚になる。
あそこを、漂って昇って行きながら、
女達が通り過ぎる。
あの真ん中に、星の飾をして、
立派な
あれが
あの光明で己には分かる。
(歓喜して。)
ああ。世界の最高の
あの青く張った
天の幔幕の中で、
あなたの秘密を拝ませて下さい。
男の胸を
聖なる愛の
あなたに向わせる物を、受け容れて下さい。
あなたが荘重にお命じなさると、
我々の勇気は侵されないようになります。
あなたが満足をお
熱した心が
最も美しい意味での
尊むに堪えたる
我等がためには選ばれたる天妃よ。
神々と同じ
あなたの
軽い雲があります。
あれは贖罪の女達です。
お膝元で
お
優しい群です。
お
誘惑に陥り易い人達が
たよりに思ってお近づき申すことは、
禁じてないのです。
あの人達は自分の弱みの
救って遣るのがむずかしいのです。
意欲の鎖を自分の力で引きちぎることが
誰に出来ましょう。
斜に、
どんなにか早く滑るでしょう。
誰が騙されずにいましょう。
(赫く神母
合唱する贖罪の女の群
とはの国々の
おん身は翔り来給ふ。
恵深きおん身よ。
われ等の訴ふるを聞き給へ。
大いなる女罪人
ファリセイの人々に嘲られつつも、
神々しく浄められたる
バルサムなす涙を流しし
愛に頼りて願ひまつる。
奇しき
尊き
髪に頼りて願ひまつる。
サマリアの女
昔はやくアブラムが家畜の群に水飼ひし
泉に頼りて願ひまつる。
救世主の
かなたより
とはに清く、さはに溢れ、
あらゆる世界を繞り流るる、
清き、豊かなる泉に頼りて願ひまつる。
エジプトのマリア
主を据ゑまつりし
いと畏き所に頼りて願ひまつる。
沙漠にて我が怠らずなしし
わが
喜ばしき
三人諸共に
大いなる罪ある
贖罪の
ただ一たび自ら忘れしのみにて、
この善き
ふさはしく
贖罪の女等の一人
(かつてグレエトヘンと呼ばれしもの。神母に
較べる物のないあなた様。
光明の沢山さしているあなた様。
どうぞお恵深くお顔をこちらへお
わたくしの
昔お慕われなされたお
今はもう
帰っておいでなさいました。
神々しき童子等
(輪なりに動きて近づきつつ。)
もうこの
わたくし共より大きくおなりになりました。
おお
沢山なすって下さるでしょう。
わたくし共は人の世の群から
早く引き放されましたが、
この方はお
おお方わたくし共にお
一人の贖罪の女
(かつてグレエトヘンと呼ばれしもの。)
新参のあの方は自分で自分がお分かりにならない位です。
まだ新しい生活にお気が附かない位です。
それでももう難有い
御覧なさい。下界の
古い身の皮からそっくり抜け出しておしまいなすって、
新しい若々しいお力が、
霞の
あの方にお
まだ新しい日の光を
赫く神母
さあ、おいで。お前もっと高い
お前がいると思うと、その
マリアを敬う学士。
(俯伏して崇拝しつつ。)
悔を知る、優しきもの等よ。
あらゆる向上の心は
皆
童貞女よ。神母よ。天妃よ。女神よ。
永く
合唱する深秘の群
一切の無常なるものは
ただ影像たるに過ぎず。
かつて及ばざりし所のもの、
こゝには既に行はれたり。
名状すべからざる所のもの、
こゝには既に遂げられたり。
永遠に女性なるもの、
我等を引きて往かしむ。