蛙よ 蛙(かへる)よ、 青いすすきやよしの生えてる中で、 蛙(かへる)は白くふくらんでゐるやうだ、 雨のいつぱいにふる夕景に、 ぎよ、ぎよ、ぎよ、ぎよ、と鳴く蛙(かへる)。 まつくらの地面をたたきつける、 今夜は雨や風のはげしい晩だ、 つめたい草の葉つぱの上でも、 ほつと息をすひこむ蛙(かへる)、 ぎよ、ぎよ、ぎよ、ぎよ、と鳴く蛙(かへる)。 蛙(かへる)よ、 わたしの心はお前から遠くはなれて居ない、 わたしは手に燈灯(あかり)をもつて、 くらい庭の面(おもて)を眺めて居た、 雨にしほるる草木の葉を、つかれた心もちで眺めて居た。