山に登る 旅よりある女に贈る 山の山頂にきれいな草むらがある、 その上でわたしたちは寝ころんでゐた。 眼をあげてとほい麓の方を眺めると、 いちめんにひろびろとした海の景色のやうにおもはれた。 空には風がながれてゐる、 おれは小石をひろつて口(くち)にあてながら、 どこといふあてもなしに、 ぼうぼうとした山の頂上をあるいてゐた。 おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。