冬とフキ
昔から我国の学者は山野に多い食用品のフキを千余年の前から永い間中国の冬だと思い違いしていた。ゆえに種々の書物にもフキを冬と書いてある。ところが明治になって初めて冬はフキではないことが分ったが、それでもまだなお今日フキを冬であるとしている人を見受けることがまれではない。殊に俳人などは旧株を墨守して移ることを知らない迂遠を演じて平気でいるのは世の中の進歩を悟らぬものだ。
フキは僧
フキはキク科に属していて Petasites japonicus Miq. なる学名を有し、我が日本の特産で中国にはないから、したがって中国の名はない。冬は同じくキク科で Tussilago Farfara L. の学名を有し、これは中国には見られども絶えて我国には産しない。そして一度もその生本が日本に来たことがない。これは盆栽として最も好適なもので、春早くから数
この冬は宿根生で、早くその株から出た花がおわると次いで葉が出る。葉は葉柄を
冬は早春に雪がまだ残っているうちに早くもその氷雪を凌いで花が出る。「ハ至ルナリ、冬ニ至テ花サクユエ冬ト云ウ」と中国の学者はいっている。冬にはなお凍、顆冬、鑚冬などの別名がある。
日本のフキを蕗と書くのもまた間違っている。フキには漢名はないから仮名でフキと書くよりほか途はない。フキでよろしい。これがすなわち日本の名なのである。