ヒマワリ
中国の『
向日葵、一名ハ西番葵、高サ一二丈、葉ハ蜀葵ヨリモ大、尖狭ニシテ刻欠多シ、六月ニ花ヲ開ク、毎幹頂上ニ只一花、黄弁大心、其形盤ノ如シ、太陽ニ随テ回転ス、
とある。ヒマワリすなわち日回の名も向日葵の名も、こんな意味で名づけられたものである。が、しかしこの花はこの文にあるように日に向かって回ることはけっしてなく、東に向かって咲いている花はいつまでも東に向っており、西に向かって咲いている花はいつまでも西向きになっていて、敢て動くことがない。ウソだと思えば花の傍に一日立ちつくして、朝から晩まで花を見つめておれば、成るほどと初めて合点がゆき、古人が吾らを欺いていたことに気がつくであろう。しかし花がまだ咲かず、それがなお極く
西洋ではヒマワリのことを Sun-flower すなわち太陽花とも日輪花とも称えるが、それはその巨大な花を御日イサマになぞらえたものだ。明治五、六年頃に発行せられた『
ヒマワリすなわち向日葵の花が、不動の姿勢を保って、日について回らぬことを確信をもって提言し、世に発表したのは私であった。すなわちそれは昭和七年(1932)一月二十五日発行の『植物研究雑誌』第八巻第一号の誌上で、「ひまはり日ニ回ラズ」の題でこれを詳説しておいた。そしてこの文は『牧野植物学全集』第二巻(昭和十年(1935)三月二十五日、東京、誠文堂発行)の中に転載せられている。
ヒマワリは昔に丈菊といった。すなわちそれが寛文六年(1666)に発行せられた中村
宝永六年(1709)に出版になった
ヒマワリの実、すなわち痩果は一花頭に無数あって羅列し、かつ形が太いからその中の種子を食用にするに都合がよい。また油も搾られる。鍋に油を布いてこの痩果を炒り、その表面へ薄塩汁を引いて食すれば簡単に美味に食べられる。