またも地元に板橋的な店が!
板橋区にまたしても ﹁THE板橋﹂ なお店がオープンした。
その店はこじんまりした個人経営の飲み屋なんだが、ホールと厨房に商売慣れしてなさそうな50代くらいのおっちゃんが1人ずつという全く色気のない人員構成。
その内、厨房のおっちゃんの方は黙々と料理を作るだけなので害はないとして、問題なのがホールのおっちゃんである。
外見は尾藤イサオと間寛平を足したようないわゆる小動物系で、その尾藤寛平(仮名) がニッコニッコしながら超アグレッシブに話しかけて来るのだ。(ちなみに厨房に入ってるおっちゃんはドク博士
似)
しかも ﹁それおいしいでしょ!﹂ とか ﹁これオススメなんだよね!﹂ といった具合に、基本的にタメ口というおまけ付き。さらに料理を運んで来た際に、よほど話がしたいのか席から離れない。座っている椅子のすぐ後ろで待機され、こっちの会話のタイミングを見計らってグイグイと割って入ってくるのである。
この時点で ﹁うぜええーー!﹂ と嫌悪感を抱く方も多いだろうが、なぜかこのおっちゃんにはそれを許せてしまう愛嬌がある。なんというかカワイイのだ。
例えば、燻製が美味しそうだったので頼んでみたのだが、注文を通すより先にいかに当店の燻製が美味しいかについて延々と喋られ、一通り話が終わった所でやっと厨房にオーダー。燻製が出て来たら出て来たで、我々が味について感想を伝えるまで離れない。
なんだこの生地獄。
ドリフの ﹁もしもコント﹂ でこんな設定あったぞ?
で、仕方ないので ﹁おいしいね!﹂ と一声かけたらさあ大変。屈託の無い子供のような笑顔で ﹁でしょ!でしょ!﹂ と、尾藤寛平(仮名) によるショータイムが始まってしまう。
やべ、ここまで突き抜けてると萌える……。
そして極めつけが ﹁キムチ鍋事件﹂ だ。
尾藤寛平(仮名) があまりにもしつこく ﹁ウチの激辛鍋おいしいよ!辛いのだいじょうぶなら食べてみてよ!﹂ と薦めてくるので頼んでみたのだが、出て来た鍋は至って普通のキムチ鍋。20年くらい前なら激辛でも通用したかもしれないが、今となっては別に辛くもなんともない。
しかし尾藤寛平(仮名) いわく ﹁こういうの中々ないよ!ウチの料理人さんが頑張って考えた鍋だから!﹂ との事なので、もしかしたら思わぬ隠し味でも入っているのかと意識を集中して食べてみたものの、やっぱりごく普通のマイルド仕立てのキムチ鍋。
あまりの出来事にフリーズし、必死に再起動をかけているさだおに、尾藤寛平(仮名) は追い打ちをかけてくる。
﹁ね?ね?こういうの中々食べたことないでしょ!?﹂
い、いや、ちょっと待ってくれおっちゃん!
お前この日本に住んでて今の今までキムチ鍋を食べたことないってどういうことだ!?
あんた今までどこに住んでたん???
しかも驚くべきことに、この店の料理はウマイのである。今回食べたのは問題のキムチ鍋の他に2品くらいだったのだが、そのどれもが ﹁ああ、これこれ﹂ という味であり、非常にさだお好みの大衆酒場味。
これで味がダメなら ﹁二度と行くか!﹂ で話は早いのだが、どう考えても正統派の下町味でウマイと評価するしかないから困る。
そして ﹁うわぁ~﹂ と悩みながらお会計を済ませて店を出ようとすると、尾藤寛平(仮名) が小さい子供のような笑顔で ﹁またねー!﹂ とお見送り。
……ダ、ダメだ、ヤラれた。
申し訳ないがオレはこのおっちゃんの可愛げにヤラれた!
なんか色々と心配だし、近い内にまた飲みに行くよ!
でまあそれはそれとして、我々カップルの間にひとつ疑問が残った。
﹁あのおっちゃんは今までどこに住んでたんだろう?﹂
まず、飲食業をやろうとする人間がキムチ鍋を ﹁斬新な食べ物﹂ だと思っている点に驚愕する。そんなもん10年以上前からチェーンの居酒屋でも出してたような定番メニューだし、むしろ鍋メニューに﹃キムチ系﹄を入れてない店の方が珍しい。
しかしこの店のおっちゃん、いわゆる尾藤寛平(仮名) は、キムチ鍋を自分の店の料理人が考え出したオリジナルだと思い込んでいるフシがある。
しかも特別辛いわけでもないのに、堂々と ﹁ウチのは激辛だよ!﹂ と言ってのけてしまうという浦島太郎っぷり。
いったいこれはどういうことなんだろうか?
そこで喧々諤々の汁カップル会議が繰り広げられた末に出た結論は……
﹁あのおっちゃん、20年くらいムショ入ってたんちゃう?﹂
なんで20年なのかというと、キムチを初めとする辛い食べ物が本格的にブームになったのが80年代の半ばから90年に入るかどうかくらいの時期で、カラムーチョ
のヒットがその契機になったと言われている。
もし仮にその時期にシャバにいなかったとすれば、2010年の今になって ﹁こんな辛いの中々ないでしょ!﹂ という発言が飛び出したとしてもおかしくはない。
しかし懲役20年というと、例えば日本赤軍の重信房子や、福岡で飲酒運転の末に子供をひき殺して逃げた男なんかが喰らった刑罰であり、人を殺めない限り中々受けようと思っても受けられる重さじゃない。
だが尾藤寛平(仮名) はそこまでやるような人間には見えない。むしろ全く悪意が感じられず、善人寄りとすら見受けられる。
となると考えうるのはひとつ。
生活苦から仕方なく寸借詐欺だの無銭飲食だので出て入ってを繰り返し、気付いたら20年経ってたというパターンだ。
それに尾藤寛平(仮名) の相方である、厨房のドク博士(仮名) にも疑惑がかかる。
もしドク博士(仮名) がシャバにいた料理人だとすれば、キムチ鍋をメニューに加える際に ﹁ウチでもキムチ鍋やってみようか?﹂ の一声があって当たり前だからだ。それがあれば、尾藤寛平(仮名) も ﹁ああ、巷じゃ今そういうのが流行ってるんだ﹂ と理解したはず。
しかしそうではなく、ドク博士(仮名) も ﹁キムチ鍋が今となってはどこに行っても食べられるベタメニュー﹂ だという事を知らなかったからこそ、尾藤寛平(仮名) の驚くべき発言に繋がったのではなかろうか?
おそらくこのドク博士(仮名) も、尾藤寛平(仮名) と共に20年前後ムショに入っていたのだろう。そして塀の中で2人が出会い、﹁塀の外に出たら真っ当な人間として生きていこう!﹂ と改心し、この店のオープンに漕ぎ着けたのだ。
そこに到るまで様々な苦難があったはずである。
折しも世は平成大不況の真っ只中であり、大卒のエリートコースを歩んでいる若者すら就職先がないという有様だ。そんな時代にムショ上がりの2人がスムーズに自分の店を持てるわけがない。
下げたくない頭を下げ、会いたくないバツの悪い人間にも会い、数々の壁を乗り越えてやっとの思いで金を工面して開店したはずなのだ。
2人は後がない。よって何としてでもこの店を成功させなければならない。普通に飲み屋を開いただけじゃダメだ、何か目新しい斬新なメニューがなければダメだ、そうして頭を悩ませた末にドク博士(仮名) はピンと閃いた!
﹁そういえばこの板橋って土地には朝鮮食材の店がやたらとあるな。特にこのキムチっていう辛い漬物は珍しい。日本にはない味だ。……ハ!これで鍋を作ったらウマイもんができるんじゃないか!?﹂
そして試作品を作り上げ、尾藤寛平(仮名) に食わせるドク博士(仮名)
﹁おお!こりゃムショじゃ食べたことない味だ!凄いじゃないかドク(仮名) !﹂
﹁そうだろ?この鍋……、そうだな、名付けて﹃特製 激辛鍋﹄を食べたら、きっと客は新しい味に腰を抜かすぞ!﹂
﹁すごい!すごいよドク(仮名)!これならオレ達の店は大繁盛間違いなしだ!﹂
20年もの歳月をシャバから隔離されて生きてきた2人の無知を、いったい誰が責められようか?
尾藤寛平(仮名) の ﹁ね?ね?食べたことない味でしょ?﹂ という発言は、きっとこのような社会復帰ストーリーを経てのものだったのだ。
オレは浅はかだった。あの時あの場でこのドラマに気付いていれば、きっと2人のおっちゃんにそっとご祝儀袋を手渡していたはずなのに!
■総評
味‥☆☆(正統派下町酒場味)
値段‥☆☆(かなりお値打ち)
品揃え‥☆☆(密かにメニューの幅が広い)
店の雰囲気‥☆☆
接客‥?
遠征‥☆
デート‥☆
DQN率‥?
備考‥メニューの幅が広く、どれも低価格なので、﹁地元にあったら嬉しいな﹂ という使い勝手のいい店である。独特の接客スタイルに好き嫌いが出そうだが、もしカオスな空気でも平気ならばぜひ試して欲しい。基本的にぐったり飲むのに向いている店で、オシャレな要素は何一つないため、30代以上のオヤジにこそ相応しい。
とても無難な店なので、どこで飲もうか悩んだ時や、お目当てのお店が満員だった時などに覚えておくと便利だと思われる。
■
住所‥
TEL‥
営業時間‥
定休日‥
↑書けるかボケ!!!
間違いなく訴えられるわ!!!
尾藤寛平だのドク博士だのならまだしも、﹁ムショ上がりの2人のおっさんが経営する飲み屋death♪﹂ とか書いちゃったらアウトだろ!
というわけで、せっかく面白いお店を発見したのに持病の電波のせいで台無しっていう泣くに泣けない結末と相成りました。
ほとぼりが冷めた頃にこっそりしれ~~っと通常の板橋グルメ記事をアップしときます……。
■板橋区リンク
板橋グルメマップGoogle版
板橋区のばら
シャバゾウblog
おいしい店・うまい店・安い店
板橋的マダムな生活
ときわ台ぐらし
板橋ぶろぐ
Loveita
板橋のいっぴんを巡るブログ
にんにき日記。
■番外編 ﹁正しい板橋区の歩き方﹂ シリーズ
正しい板橋区の歩き方 大山編その1
正しい板橋区の歩き方 大山編その2
正しい板橋区の歩き方 大山編その3
正しい板橋区の歩き方 区役所前編 その1
正しい板橋区の歩き方 志村坂上編
正しい板橋区の歩き方 小竹向原編その1
正しい板橋区の歩き方 小竹向原編その2
正しい板橋区の歩き方 突発徒歩デート編その1
正しい板橋区の歩き方 突発徒歩デート編その2
正しい板橋区の歩き方 突発徒歩デート編その3
正しい板橋区の歩き方 ぶらり東武東上線の旅 その1
正しい板橋区の歩き方JR板橋駅編その1
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fblog-gourmet.com%2Fimages%2Fmypage%2Fbnr_middle.jpg)
オートモッドのジュネ兄さんを力いっぱい応援中
↑上のバナーをクリックすると私の、下のテキストリンクの方をクリックしていただけますとジュネ@オートモッドのランキングポイントが上がります。(たぶん)
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fblog-gourmet.com%2Fimages%2Fmypage%2Fbnr_middle.jpg)
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fblog-gourmet.com%2Fimages%2Fmypage%2Fbnr_middle.jpg)