日本の食飼料生産において,多量要素である窒素とカリウムの見かけの利用率はそれぞれ 66%,69% と高いが,戦略資源になっているリンは 17% しか利用されない.農地に投入されたものの作物に吸収されないで農地で余剰となるリンは OECD 加盟国内で最も多い.日本は肥料用のリンを全面的に輸入に頼っているが,元素Pとしてみると食飼料の形でも輸入しており,また鉄鉱石の夾雑物としても輸入している.既に営業運転に入っている下水からのリン回収事業や家畜ふん炭化物からのリン回収,実験段階であるが製鉄で出るスラグからのリン回収技術を組み合わせていくと,消費・精錬により排出されたリンの回収量は化学肥料に仕向けられるリンを賄うことができる.ただし,必要となる設備投資・メンテナンス・設備更新といった経済的事由や下水由来と言う時のネガティブな印象など普及に向けた課題もある.他方で SDGs の目標12,15