ロシア正教のトップであるキリル総主教は、ロシアがウクライナに侵攻した2月の数日後、﹁祖国防衛の日﹂として発表した。キリル総主教は、プーチン大統領の﹁ロシア国民への奉仕﹂を祝福し、兵役を賞賛している︵注1︶。ウクライナで続く戦争については、正義と悪の﹁黙示録的戦い﹂に他ならないとさえ語ってもいる。キリル総主教にとって、この戦争の結末は﹁神のご加護を受けられるか否かという人類の行方﹂を決めることになるようだ︵注2︶ ロシア正教会が国家の軍事に口をだすというのは、今にはじまったことではない。シリア内戦にロシアが介入した時はもっとはっきりと﹁キリスト教徒を解放する聖戦﹂とキリル総主教は発言している︵注3︶ このように教会人が軍事行動を祝福するのは、ビザンツ帝国︵東ローマ帝国︶の文化を色濃く受け継いだものと思われる︵注4︶。ビザンツ帝国時代は、皇帝と総主教を中心とする独特の信仰体系で権威が作り上げら