蓮實重彥さんの連載時評﹁些事にこだわり﹂第15回を﹁ちくま﹂9月号より転載します。延々とつづく渋谷駅周辺の再開発。東横線の地下化はじめ誰も便利になったとは思っていないはずの一連の大工事は都市再開発法によると﹁公共の福祉に寄与することを目的とする﹂そうなのだが、本当に? との疑問についてお話しさせていただきます。 避けようもない暑い日ざしを顔一面に受けとめながら、タワーレコードの渋谷店で購入した海外の雑誌を手にしてスクランブル交差点にさしかかると、すんでの所で信号が赤となってしまう。階段を降りて地下の通路に向かう方法もあるにはあったが、年齢故の足元のおぼつかなさから灼熱の地上に立ったまま青信号を待つことにしていると、いきなり、かたわらから、女性の声がフランス語で響いてくる。ふと視線を向けると、﹁そう、シブーヤは素晴らしい﹂と﹁ウ﹂の部分をアクセントで強調しながら、スマホを顎のあたりにあてた外
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