愛を成就せんがための﹁護符﹂と周囲に添えられた漢字片仮名交じりの文言。室町末期の﹃呪詛秘伝書﹄から︵﹃組版原論﹄57頁︶ これは、府川充男氏が、片仮名の持つ呪力を解説する場面で例に挙げた室町末期の写本﹃呪詛秘伝書﹄からの資料の一部である。府川氏は他にも具体例を挙げ、民俗学者の網野善彦の﹁片仮名呪力﹂説も援用しながら、片仮名が本来﹁言葉の呪力﹂、﹁音声の呪力﹂、﹁口頭の言語﹂、﹁音声の言語﹂と深く結びついているのではないかと推理している︵﹃組版原論﹄56頁︶。 その面白さもさることながら、私は上の護符そのものに目が釘付けになってしまった。﹁我君と交わるを念ず﹂と読むとしたら読むのだろう。護符周囲に添えられた漢字片仮名交じりの文言もさることながら、その護符そのものの漢字の結合が強烈な禍々しさを生み出している。この資料は、片仮名の呪力なるものよりも、漢字の呪力のほうを私に強烈に印象づけた。 こう