アメリカの大統領予備選は、ヒラリー・クリントンが土俵際で踏みとどまり、おもしろくなったが、特に民主党の演説でうんざりするのは"change"という言葉がやたらに出てくることだ。﹁変革﹂と訳しているメディアもあるが、これは小規模な改良も含む幅広い概念なので、﹁変化﹂と訳したほうがいい。 内田樹氏は、これを変革と訳して﹁私は変革には反対﹂で、必要なのは社会システムの断片︵ピースミール︶をとりあえず﹁ちゃんと機能している﹂状態に保持する﹁ピースミール工学﹂だといっているが、これはポパーの︵誤った︶受け売りだろう(*)。ポパーは﹃歴史主義の貧困﹄や﹃開かれた社会とその敵﹄で、社会主義のようなユートピア社会工学を批判し、ピースミール社会工学を提唱したが、彼はchangeを否定したわけではない。また社会工学という概念については、ハイエクが﹁設計主義の一種だ﹂と批判し、自生的秩序を提唱した。 内田氏