第1 序章 法律関係では,﹁手続を﹃追行﹄する﹂という表現を用いることがある。要するに,訴訟手続のために必要な訴訟活動すること全般をいう*1。しかし,そうであるとすると,﹁行﹂の字はともかく,﹁追﹂の字の部分が,いかなる意味を担っているかとの疑問が生じる。 国語辞典で﹁追行﹂という語を引くと,﹁つづいてあとから行うこと﹂,﹁追いかけて行くこと﹂などとして,﹁追﹂と﹁行﹂の両方の字義を踏まえた定義がなされている*2。しかし,法律用語としての﹁追行﹂に,そのような含意はないように思われる。 そこで,その由来を紐解いてみることにする。結論からいえば,この言葉は,元来,﹁つづいてあとから﹂というニュアンスを込めて翻訳,造語されたものであるが,その後の転用を経て,現在のような意味合いのものとして定着してしまったものということになるようである。 第2 淵源 〜Verfolgung〜1 明治民事訴訟法