ブックマーク / webronza.asahi.com (51)
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帰国直後、妻の深結(みゅう)さん(手前左)や両親(後列)と再会を喜び、おにぎりなどの食事をとる安田純平さん=2018年10月25日、深結さん提供 シリア北部でイスラム武装組織に拘束されていたフリージャーナリストの安田純平さん(44)が10月下旬、3年4カ月ぶりに解放された。日本政府はカタールとトルコが解放のために動いたことを明らかにし、安倍首相が両国に謝意を伝えた。国内では﹁政府と国民に迷惑をかけた﹂と安田さんを批判する声が﹁自己責任論﹂として再燃している。身代金の支払いについて政府は否定しているが、﹁カタールが支払った﹂という情報が出て、それがまた﹁自己責任論﹂を助長している。 身代金の情報も、﹁自己責任論﹂も、安田さんが拘束され、解放されたシリアの情勢とはかけはなれて独り歩きしている。だがこれらは、特に9月以降、大きく動いたシリア北部のイドリブ情勢の中で考える必要がある。 関係者から入
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創作される﹁本当の被害者ではない証拠﹂ ジャーナリストの伊藤詩織氏が、元TBSの記者でワシントン支局長であった山口敬之氏から性的暴行を受けたとして訴えていた裁判で、東京地裁は伊藤氏の主張を認め、山口氏側に対して330万円の支払いを命じた。 東京地裁は﹁酩酊状態にあって意識のない原告に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実を認めることができる﹂とし、山口氏による﹁合意があった﹂という主張を一蹴。その上で山口氏の供述に対しては﹁不合理に変遷しており、信用性には重大な疑念がある﹂と指摘した。 その後、山口氏はこの判決を受けた会見の中で﹁本当に性被害に受けた人から聞いた﹂という文脈で﹁本当に性被害に遭った方は﹃伊藤さんが本当のことを言ってない。こういう記者会見の場で笑ったり上を見たり、テレビに出演して、あのような表
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部屋の隅で、おかっぱ頭の〝少女〟は怯えていた。膝の上でぎゅっと握られたこぶしに、さらに警戒の力が加わった。少なくとも私にはそう見えた。 スーツ姿の男性が少女に近づいた。どこか投げやりな歩き方とニヤけた表情は、純粋に﹁鑑賞﹂を目的としていないことだけは明らかだった。スタッフや来場者の一部に緊張が走る。 男性は少女を一瞥し、﹁ふんっ﹂と鼻で笑う。続けて軽く舌打ちし、その場を離れた。相変わらずニヤけながら、しかし、そこには間違いなく侮蔑の色も同時に浮かんでいた。 結局、それだけのことだった。ただそれだけのために、男性は長い行列に加わり、抽選に参加したのだろう。 ﹁よかった﹂。安堵したスタッフの一人がそう漏らした。 またか、と少女は思っただろうか。あるいはこうした場面に慣れてしまったことを、さらに悲しく感じただろうか。 平和の少女像――元従軍慰安婦を題材としたこの作品は、侮蔑され、罵倒され、貶めら
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連載 百田尚樹﹃日本国紀﹄に登場した謎の記事を追う オリジネーターによるまとめ 1990年代後半からの日本における歴史修正主義の台頭とともに拡散された、ククリット・プラモート﹁日本というお母さん﹂記事。この記事を﹁発見﹂し世に送り出した名越二荒之助(なごし・ふたらのすけ)は、﹁大東亜戦争で日本がアジアを解放した﹂論を集大成的に正当化してゆく大部の書籍を刊行する。1999年から刊行された﹃世界に開かれた昭和の戦争記念館﹄シリーズ全5巻(展転社)は、写真と解説記事を中心に、 これまで昭和の戦争は、日本の立場を見失い、否定的側面ばかりが強調された。しかし調べてみれば、感動の秘話の宝庫である。史実や資料の羅列でなく、そこに至る国際的背景や脈絡を明らかにし、日本が歩んだ感動のドラマを重視する。 というコンセプトのもとに編まれたものであった。最初から﹁感動のドラマ﹂に仕立て上げる気マンマンだったのであ
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訂正‥2019年10月5日に配信した本記事について、一部誤りがありました。NMRパイプテクターについて記した都内団地住民のブログへの投稿と、雑誌﹁理科の探訪﹂のサイトで公開された記事が相次いで削除されたのは、いずれも東京地裁の仮処分決定によるものではないように記述しました。しかし、実際は都内団地住民のブログについては、投稿削除を求める東京地裁の仮処分決定が出ておりました。筆者と編集部の確認が不十分でした。これをふまえ、本文を修正しました︵2020年7月7日、﹁論座﹂編集部︶ ﹁配管寿命が40年延びる﹂に疑問の声 一部ネット界隈で話題の﹁#謎水装置﹂をご存じですか? ﹁テレビ東京︵中略︶で報道﹂﹁世界で唯⼀︵中略︶論⽂発表﹂そして﹁英国バッキンガム宮殿採⽤﹂と、高らかに広告でうたわれる装置がそれ。札幌から福岡まで全国6都市の地下鉄などで、鉄道広告が出されています。
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反﹁遺伝子組換え﹂団体が作りだす意図的誤解の罪 除草剤ラウンドアップはなぜ抹殺されようとしているのか? ︻前編︼ 唐木英明 東京大学名誉教授、公益財団法人﹁食の安全・安心財団﹂理事長 除草剤ラウンドアップに発がん性があるという誤解がヨーロッパを中心に広がっている。国民の不安にこたえてEU各国は規制強化に動き始めた。米国カリフォルニアではラウンドアップが原因でがんになったとする訴えが勝訴になり、約330億円という驚愕の賠償を命じられるというセンセーショナルな事態にもなっている。 だがこれは、遺伝子組換え︵GM︶に反対する団体が戦略的に作り出した意図的な誤解の産物である。ラウンドアップに発がん性があるような非科学的論文を作り、それを使って恐怖をあおる映画や書籍を作り、反GM運動を盛り上げることに成功した。決定的な出来事は、国際機関が行ったラウンドアップは﹁ヒトに対しておそらく発がん性がある﹂と
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首相演説、謎の黒服に阻まれたプラカード 首相、もう潮時です。40年越しに﹁真の女性活躍﹂を進めた首相になってください 井田奈穂 ﹁選択的夫婦別姓・全国陳情アクション﹂事務局長 プラカードでかき消された﹁困っている人の姿﹂ 2019年の七夕の日。降りしきる雨の中、私たちはJR中野駅前で選挙演説に訪れるという安倍晋三首相を待っていました。 昨年11月、私がTwitterで出会った仲間と立ち上げた﹁選択的夫婦別姓・全国陳情アクション﹂のメンバーも6人、一緒にいました。 首相から見える場所を探したものの、すでに人でいっぱい。ひしめき合う傘の間は、むんむんと暑いほどの熱気でした。テレビ局のカメラの前のわずかなスペースしかなく、私たちはそこで待つことにしました。 政治家の演説にプラカードを持って行ったのは初めてでした。 きっかけは7月3日の日本記者クラブの党首討論会。﹁選択的夫婦別姓を認めるか﹂につい
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山本太郎から自民党を支持してきた皆様へ 法人税を減税し、消費税を増税するのはおかしくないですか? 私は野党の一員です! 山本太郎 参議院議員 れいわ新選組代表 ﹁論座﹂選挙イベントのお知らせ 安倍首相は6年半前に倒れた民主党政権を今なお﹁悪夢﹂と批判し、今夏の参院選を乗り切る構えです。安倍首相の国政選挙5連勝の立役者は野党だったといえるかもしれません。日本の政治をまっとうにするには、低迷する野党の再建が不可欠です。﹁論座﹂は7月7日、﹃中島岳志×保坂展人 野党はどう闘うべきか﹄を開催します。﹁山本太郎現象﹂も主要な討論テーマです。申し込みはこちら→︻イベント申し込み︼ 安倍政権は経団連中心主義 私・山本太郎は、この度、﹁れいわ新選組﹂という政党を立ち上げました。6年間、参議院議員を務め、様々な政治課題に取り組んできました。その過程で、多くの国民の経済的苦境に直面し、経済政策の重要性に気づき
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[5]ハローワークで求職するハローワーク職員 笑えないブラックジョークに支配される現場 上林陽治 地方自治総合研究所研究員 ﹁ハローワークに、2年間勤め、生活を守るために必死に働いてきましたが、それまで働いていた場所で一転して仕事を探す求職者となりました。これまでハローワークで勉強して取得した資格を活かせる求人もなく、なかなか思うようにいかない求職活動の時期を過ごしました。雇い止めは精神的苦痛を与えるだけでなく、家族にも影響を及ぼします。日々の業務の中で築き上げた知識、経験を持った職員を公募によって雇い止めにしないでほしい。﹂︵ハローワーク勤務 職業相談員 女性︶ 期間業務職員制度と公募試験 ハローワークのカウンターの向こう側で、求職者の相談にのっていた非正規相談員の彼女は、翌日、カウンターのこちら側で失業者となって、向こう側の非正規相談員に求職相談をするという、こんな笑えないブラックジョ
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トランプ政権が成立すれば冷え込んでいた米ロ関係が大きく改善するのではないか、という見方は選挙戦の最中から繰り返し指摘されていたが、そこで焦点とされていたのはシリア情勢やウクライナ情勢、そして米国の内政への干渉であった。一方、トランプ政権の成立がアジア太平洋地域におけるロシアの戦略にどのような影響があるか、という観点からはほとんど議論がなされてこなかったように思われる。 そこで本稿ではまず、現在の世界におけるロシアの立ち位置や考え方を概観した後、これに照らしてアジア太平洋地域がロシアにとってどのような意義を持つのか、トランプ政権の成立がどのようなインパクトを持ちうるのかについて考察する。その上で、北方領土問題を軸とする日米中ロの関係性を取り上げ、ロシアがどのような戦略を展開しようとしているのかについて述べてみたい。 一極支配とNATO拡大 冷戦後の秩序に不満 本論に入る前に、現在の世界をロシ
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﹇2﹈渦巻く﹁知﹂へのヘイトに向き合う 話題の本を知らず、読んでいなくても恥じない彼らとの対話は可能なのか 香山リカ 精神科医、立教大学現代心理学部教授 新年になっても、相変わらずネット空間を中心に凄まじい﹁知﹂へのヘイトが渦巻いている。 前回、保守的かつ挑発的な発言を繰り返す――自身でも以下のようにその単語を使っているので、﹁ネトウヨの﹂と言ってしまってもよいのかもしれない――ツイッターの“有名人︵とはいえ本名、職業などはいっさい不明︶”から、﹁戦後生まれの人間がいつまでも戦争責任だの植民地支配だの言われ続けることは、日本人に対する不利益・差別に該当しないの?﹂という質問が投げかけられた、というエピソードを紹介した。 彼はその後、私に対して﹁﹃いつまでも敗戦国民として断罪され続けるマイノリティ・弱者・被害者としての日本人﹄についてコメントよろしく﹂と繰り返し迫ってきた。1冊の本を紹介す
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