﹁男女﹂ぬぐえぬ先入観 性同一性障害の中高生にとって、以前、﹁駆け込み寺﹂のような保健室があった。 その主︵あるじ︶、元東京都立高校養護教諭の高橋裕子さん︵62︶は、テレビドラマ﹁3年B組金八先生﹂で性同一性障害が扱われたとき、養護教諭のモデルになった。定年まで定時制高校に勤め、この障害を抱えた子ども七人の相談に乗った。男子で高校に通学した翔︵しょう︶子︵こ︶=仮名=など、他校生も高橋さんの保健室に姿を見せた。 制服やトイレなど、性別で明確に分かれる学校空間は、この障害の子どもたちが強い苦痛を感じる場所でもある。高橋さんは、﹁教員の評価を気にせず唯一入ってこられる﹂保健室で、そういった子どもたちを待ち続けた。 ◇ ◇ 高橋さんがこの障害に本格的にかかわり始めたのは、十五年前の九月。二年の義︵よし︶雄︵お︶=仮名=が、突然ミニスカートで登校してきた日だ。 まだ性同一性障害という言葉が広ま