﹁弊社﹂で始まる文書を私は好まない。それは﹁弊社﹂を口にする機会のない私の職業からくる違和感なのか、それを口にするビジネスマンたちにどこか無理を感じるからか。 だいたい、﹁弊社は…﹂と語らねばならない時は限られている。ビジネスや営業で相手の人物と出会って間もない頃だ。 ―― どんな会社なのですか? ﹁弊社はもともと…﹂ ―― 今は何に力を入れているのですか? ﹁弊社の得意とするところは…﹂ あくまで会社を代弁する名詞としてそれがある。 だが名刺を交わした翌日からはその主語は﹁弊社﹂から﹁私﹂、呼ぶ時は﹁○○さん﹂に移行する。もう会社から個人へと関係性が深まり、突っ込んだ話になる時期のことだ。 それ以降は仕事が終わるまで個人の名前を呼び合うことになる。出会ってから終わりまで﹁弊社﹂という主語で語り続けることはむしろ難しい。 だが、仕事の流れの途中で突然、相手から﹁弊社は﹂という文書が舞い込む
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