【全文学賞非受賞記念第一弾作品】「真夜中の弁証法(2)」 - まる猫の今夜も眠れない
真夜中の弁証法 (2) 男は雪隠の陶器を抱いていた。 陶器の中の水面が涙で濡れた情けない男の顔を映して...
真夜中の弁証法 (2) 男は雪隠の陶器を抱いていた。 陶器の中の水面が涙で濡れた情けない男の顔を映している。 血管をどす黒い液体が巡り、細胞のすべてが抗体反応をしているような感じを受けた。 逆流する苦しみを受け止めることが出来ず、男は嗚咽をこぼしながら汚れた咆哮を繰り返した。 もはや一滴の水分もなくなるとやっと男は自分の吐息が聞こえるくらいに落ち着くことが出来た。 支点をなくしてしまったかのようによろけながらベッドの方へと歩みを進める。 ほんの僅かの距離ではあるが、呼吸が乱れる。 やっとのことでベッドまでたどり着くと、身体を内旋させながらマットレスに倒れこむ。 暫くして男には自分の鼾が聞こえた。 しかし肉体と意識の動きが乖離していることに気づくか気付かないかの段になり、男は心ともなく自分の持つ全ての感覚器官を停止させた。 それからは黒い海に果てなく沈んでいくだけであった。 男の肉体の横を大
ブックマークしたユーザー
-
ma-bou07192024/05/09
ブックマークしたすべてのユーザー