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現在であれば、躊躇なく﹁性﹂や﹁性欲﹂という表現を用いるところだが、鴎外が外国語を用いているのは...
現在であれば、躊躇なく﹁性﹂や﹁性欲﹂という表現を用いるところだが、鴎外が外国語を用いているのは、肉体に特化された男女関係や、精神性を伴わない肉体的欲求を表現するために適当な表現が、それまでの日本語には存在しなかったということを示している。逆に言えば、男女関係を、”肉体と精神”という二分法でとらえる発想が、﹁好色﹂や﹁色事﹂という表現には希薄であったということである。 ・・・鴎外の﹃ヰタ・セクスアリス﹄は、明治に青春をすごした青年︵金井︶が﹁色事﹂と﹁性欲﹂のはざまに生き、﹁色事﹂の世界から決別して﹁性欲﹂の世界へ移ってゆく様を示す大変興味深いケース・スタディである。遊女と初めて関係をもった金井君は、﹁僕の抗低力を麻痺させたのは、慥に性欲であった﹂と、遊女との交際を肉体関係に限定して理解し、﹁あれが性欲の満足であったか。恋愛の成就はあんな事に到達するに過ぎないのであるか。馬鹿々々しいと思う
2012/01/08 リンク