ここのところ﹁倫理﹂をどう扱うかに興味を持っているので、﹁脳の中の倫理﹂︵マイケル.S.ガザニガ著、梶山あゆみ訳、紀伊國屋書店︶という本を読んでみた。 倫理に関する考え方の収穫としては、﹁責任﹂という概念は複数の人間がいてはじめて生じるものであり、個人単独では存在せず、したがって、行為が脳の器質に起因するものであるか否かとは無関係なのではないか、という著者の考え方が参考になった。確かに、誰に対してということもなく、個人が世界に対して︵?︶﹁責任を取る﹂というような﹁責任﹂という言葉の使い方には違和感があったのだが、他人と関係のない状況で﹁責任﹂という言葉を使うことは、ギルバート・ライル流に言うと、カテゴリー・ミステイクなのだろう。 倫理以外に面白いと思ったのは、脳という臓器が、①辻褄を合わせようとする︵左脳の﹁解釈装置﹂で辻褄の合う物語を作る︶臓器であり、②記憶も書き替えられるし、③不都合