球場で飛んできたボールを手に入れたことがある。確か20代前半の頃だ。 野球の面白さを知ったのは大人になってから。 父は子とキャッチボールをするような親でも、子と並んでTVを見て談笑するような親でもなかった。 自分で野球を知り、1人で野球にハマった私は、年に1度か2度、自分で稼いだお金で1人分の新幹線と球場のチケットを買い、ワクワクと球場へ観戦に行っていた。 そんな私の前の通路にボールが飛んでくる。初めての経験だ。私は宝物のようにそれを拾い上げ、しかし顔を上げた瞬間目に飛び込んできたのが﹁父親に肩を抱かれ、こちらを期待した目で見る野球帽の少年﹂だった。 私は彼ら父子の期待をひと目で理解する。その瞬間込み上げてきたのが理不尽なまでの﹁少年への憎しみ﹂だった。 (君はこれから先、何度でもチャンスに恵まれるんだろう。愛される子供だ。ここで恵んでもらわなくても。幼い頃の私と違って。大人になってしまっ
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